80 / 128
第79話 狙撃手VS暗殺者
しおりを挟む
ドルゴの目が捉えた僅かな光は、左斜め下に見えるビルの屋上にあった。
(一体、何が?)
ドルゴはスコープをその光の見えた方向へと向け照準を合わせる。
(っ!?)
ドルゴの目に映ったものは、自分と同じように銃を構えスコープ越しにこちらを見ている女性の姿だった。
(スナイパーっ?)
私服である事から日本の警察機構の者ではない事は一目瞭然である。
(距離は凡そ400m、やや追い風・・・。高低差、15mって所か・・・)
ドルゴがニヤリと笑った。
「馬鹿な女・・・。先に殺してあげる・・・」
同じ距離で撃ち合った場合、圧倒的に有利なのは高い位置にいる方である。
見下ろす場合と見上げる場合では、地球の重力に影響され弾道の正確さが大きく変わって来る。
まして、ドルゴから見ての追い風である、圧倒的な有意差を感じるのは当然である。
だが・・・
スコープ越しに見える相手のスナイパーは微動だにしない。
その不気味さがドルゴを苛立たせていた。
「SRー25か・・・。狙撃銃としては優秀だけれど・・・、腕が伴っているかは別・・・」
相手の銃を見て、その力量を測ろうとするドルゴ。
同じように・・・
「AI L96A1・・・。同じ7.62NATO弾仕様・・・」
スコープ越しにドルゴを見る万莉亜が呟く。
スコープ越しに互いを狙う時間が過ぎて行く・・・
(先に撃って、決着を付ける・・・)
ドルゴの指がトリガーへと掛かった。
手はじっとりと汗ばみ、呼吸が段々と荒くなる。
「Kill you!」
ドルゴの指がトリガーを引き、銃声と共に発射された7.62NATO弾が万莉亜へと向かう。
「甘いっ!」
ドルゴの放った弾丸は一直線に万莉亜へと向かったが、ほんの数センチの差で万莉亜の顔面をずれ風に舞った髪だけを掠める。
「ば・・・、馬鹿なっ!?」
その一瞬差で万莉亜も引き金を引く。
二発目の銃声が聞こえ・・・
ピシッ!
ドルゴの目元直ぐで乾いた音が聞こえ、覗いていたスコープが弾け飛んだ。
「そ・・・、そんな・・・」
ドルゴは反射的に身を隠し、砕かれたスコープを見る。
ワナワナと震えだす身体を抑える事が出来なくなっていた。
「わ・・・、私が・・・。負けた・・・」
もし、ドルゴがそのままスコープを覗いていなかったら、万莉亜の放った銃弾は確実にドルゴの顔面を捉えていただろう。
「瞬時に身を隠したところは、それなりのようね」
万莉亜は覗いていたスコープから目を離さない。
「でも、貴方は銃を向けられた事で冷静さを失った。これが、狙撃手と暗殺者の違いよ」
万莉亜の狙撃が精密であったが故に弾はスコープに当たり跳弾したのである。
「もし、これが7.62NATO弾じゃなったら・・・」
ドルゴの顔が青ざめていた。
338ラプアマグナム弾等であったらスコープそのものを貫通していたであろう。
ドルゴはスコープを破壊された事で狙撃継続は不可能と判断し逃走していた。
震えの止まらない身体に忸怩たる思いに打ちひしがれながら・・・
「逃げた・・・か」
万莉亜が呟く。
「もう一歩だったけど・・・。ミッシェル、約束は果たしたわよ・・・」
第二弾があるものと考えていた洸児だったが、その追撃は無かった。
そして、赤いパトライトが近づき多数の警察官と救急隊員が走り寄って来る。
(兄貴・・・、ありがとうございま・・・す・・・)
駆を守れた事に安堵した洸児は薄れ行く意識の中で、穂波の微笑を見た気がした。
(穂波・・・、さん・・・)
そう唇が動いたが声は出ず、洸児はその場に音を立てて崩れ落ちた。
「こっ・・・っ、洸児さあぁぁぁぁんっ!」
駆は走り寄り、まだ血の流れ出ている洸児の腹部に自分の着ていた上着を脱いで止血しようとする。
「血が・・・、血が止まらないっ! 早くっ、病院にっ!洸児さんを助けてくれえぇぇぇっ!」
駆の声がビルの谷間に響いていた。
「なにっ! 洸児が撃たれただとっ!?」
早瀬リージェンシーホテル襲撃の報は二月会にももたらされていた。
「でっ!? 容体はっ!?」
「分かりません、ただ西京大学病院に運ばれたって事です」
「行くぞっ! 車を回せっ!」
「何っ!? 駆が襲撃された?」
同じ頃、将一郎の下へも報がもたらされていた。
「駆はっ!?」
「ご無事のようですが、警護についていた何人かが重傷とか・・・」
「ふう・・・。これでミネルヴァに借りが出来てしまったか・・・」
「総帥、堀塚様よりお電話ですが?」
「繋げ・・・。梨央音か、駆は無事だが二月会の組員が負傷している。・・・、渡が? そうか、分かった。お前も気を付けておくんだぞ」
(萬度か・・・。まさかここまでやるとは・・・)
「洸児っ!」
如月の乗った車と洸児を乗せた救急車が西京大学病院に着いたのはほぼ同時であった。
けたたましくサイレンの音を響かせて到着した救急車から洸児を乗せたストレッチャーが搬出され、ガラガラッと音を響かせて走る。
ストレッチャーと並走して走る如月が叫び続けていた。
「洸児っ、しっかりしろっ! 死ぬんじゃねぇぞっ!!」
その叫び声を聞きつけた二人が居た。
萌の見舞いに来ていた、アキと穂波である。
(あの声っ!? お父さんっ!?)
(えっ、洸児って!?)
アキと穂波は同時にハッと息を飲み、顔を見合わせるや否や病室を飛び出した。
その視線の先にはーー
ストレッチャーに乗っている人影に声を枯らして叫び続ける如月の姿があった。
「お父さんっ! どうしたのっ!?」
「如月さんっ! 洸児って・・・っ!?」
二人の目に映ったのは、酸素マスク装着、腕には点滴のチューブ留置、そしてガーゼで圧迫止血しながらも流血を続ける腹部。
あまりにも変わり果てた洸児の姿だった。
(一体、何が?)
ドルゴはスコープをその光の見えた方向へと向け照準を合わせる。
(っ!?)
ドルゴの目に映ったものは、自分と同じように銃を構えスコープ越しにこちらを見ている女性の姿だった。
(スナイパーっ?)
私服である事から日本の警察機構の者ではない事は一目瞭然である。
(距離は凡そ400m、やや追い風・・・。高低差、15mって所か・・・)
ドルゴがニヤリと笑った。
「馬鹿な女・・・。先に殺してあげる・・・」
同じ距離で撃ち合った場合、圧倒的に有利なのは高い位置にいる方である。
見下ろす場合と見上げる場合では、地球の重力に影響され弾道の正確さが大きく変わって来る。
まして、ドルゴから見ての追い風である、圧倒的な有意差を感じるのは当然である。
だが・・・
スコープ越しに見える相手のスナイパーは微動だにしない。
その不気味さがドルゴを苛立たせていた。
「SRー25か・・・。狙撃銃としては優秀だけれど・・・、腕が伴っているかは別・・・」
相手の銃を見て、その力量を測ろうとするドルゴ。
同じように・・・
「AI L96A1・・・。同じ7.62NATO弾仕様・・・」
スコープ越しにドルゴを見る万莉亜が呟く。
スコープ越しに互いを狙う時間が過ぎて行く・・・
(先に撃って、決着を付ける・・・)
ドルゴの指がトリガーへと掛かった。
手はじっとりと汗ばみ、呼吸が段々と荒くなる。
「Kill you!」
ドルゴの指がトリガーを引き、銃声と共に発射された7.62NATO弾が万莉亜へと向かう。
「甘いっ!」
ドルゴの放った弾丸は一直線に万莉亜へと向かったが、ほんの数センチの差で万莉亜の顔面をずれ風に舞った髪だけを掠める。
「ば・・・、馬鹿なっ!?」
その一瞬差で万莉亜も引き金を引く。
二発目の銃声が聞こえ・・・
ピシッ!
ドルゴの目元直ぐで乾いた音が聞こえ、覗いていたスコープが弾け飛んだ。
「そ・・・、そんな・・・」
ドルゴは反射的に身を隠し、砕かれたスコープを見る。
ワナワナと震えだす身体を抑える事が出来なくなっていた。
「わ・・・、私が・・・。負けた・・・」
もし、ドルゴがそのままスコープを覗いていなかったら、万莉亜の放った銃弾は確実にドルゴの顔面を捉えていただろう。
「瞬時に身を隠したところは、それなりのようね」
万莉亜は覗いていたスコープから目を離さない。
「でも、貴方は銃を向けられた事で冷静さを失った。これが、狙撃手と暗殺者の違いよ」
万莉亜の狙撃が精密であったが故に弾はスコープに当たり跳弾したのである。
「もし、これが7.62NATO弾じゃなったら・・・」
ドルゴの顔が青ざめていた。
338ラプアマグナム弾等であったらスコープそのものを貫通していたであろう。
ドルゴはスコープを破壊された事で狙撃継続は不可能と判断し逃走していた。
震えの止まらない身体に忸怩たる思いに打ちひしがれながら・・・
「逃げた・・・か」
万莉亜が呟く。
「もう一歩だったけど・・・。ミッシェル、約束は果たしたわよ・・・」
第二弾があるものと考えていた洸児だったが、その追撃は無かった。
そして、赤いパトライトが近づき多数の警察官と救急隊員が走り寄って来る。
(兄貴・・・、ありがとうございま・・・す・・・)
駆を守れた事に安堵した洸児は薄れ行く意識の中で、穂波の微笑を見た気がした。
(穂波・・・、さん・・・)
そう唇が動いたが声は出ず、洸児はその場に音を立てて崩れ落ちた。
「こっ・・・っ、洸児さあぁぁぁぁんっ!」
駆は走り寄り、まだ血の流れ出ている洸児の腹部に自分の着ていた上着を脱いで止血しようとする。
「血が・・・、血が止まらないっ! 早くっ、病院にっ!洸児さんを助けてくれえぇぇぇっ!」
駆の声がビルの谷間に響いていた。
「なにっ! 洸児が撃たれただとっ!?」
早瀬リージェンシーホテル襲撃の報は二月会にももたらされていた。
「でっ!? 容体はっ!?」
「分かりません、ただ西京大学病院に運ばれたって事です」
「行くぞっ! 車を回せっ!」
「何っ!? 駆が襲撃された?」
同じ頃、将一郎の下へも報がもたらされていた。
「駆はっ!?」
「ご無事のようですが、警護についていた何人かが重傷とか・・・」
「ふう・・・。これでミネルヴァに借りが出来てしまったか・・・」
「総帥、堀塚様よりお電話ですが?」
「繋げ・・・。梨央音か、駆は無事だが二月会の組員が負傷している。・・・、渡が? そうか、分かった。お前も気を付けておくんだぞ」
(萬度か・・・。まさかここまでやるとは・・・)
「洸児っ!」
如月の乗った車と洸児を乗せた救急車が西京大学病院に着いたのはほぼ同時であった。
けたたましくサイレンの音を響かせて到着した救急車から洸児を乗せたストレッチャーが搬出され、ガラガラッと音を響かせて走る。
ストレッチャーと並走して走る如月が叫び続けていた。
「洸児っ、しっかりしろっ! 死ぬんじゃねぇぞっ!!」
その叫び声を聞きつけた二人が居た。
萌の見舞いに来ていた、アキと穂波である。
(あの声っ!? お父さんっ!?)
(えっ、洸児って!?)
アキと穂波は同時にハッと息を飲み、顔を見合わせるや否や病室を飛び出した。
その視線の先にはーー
ストレッチャーに乗っている人影に声を枯らして叫び続ける如月の姿があった。
「お父さんっ! どうしたのっ!?」
「如月さんっ! 洸児って・・・っ!?」
二人の目に映ったのは、酸素マスク装着、腕には点滴のチューブ留置、そしてガーゼで圧迫止血しながらも流血を続ける腹部。
あまりにも変わり果てた洸児の姿だった。
0
あなたにおすすめの小説
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!
↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる