好きなんて、ウソつき。

春茶

文字の大きさ
17 / 57
第三章

『好きなんて言った?』

しおりを挟む



次の日、あたしはいつも通り学校に登校した。
寝て起きると意外にも昨日の出来事なんてどうでも良くなっていた。
何にもなかったようにミユと他愛もない話で笑えた。
まだ今日関村の姿を見ていない。
こんなとき、違うクラスでよかったとつくづく思う。

…正直今どんな顔をしてあいつに会ったらいいかわかんない。

ブーーッ。

…ん?
授業中にポッケの中で携帯が揺れた。
先生がこっちを見ていないのを確認してメールを開く。

あ…関村だ。

『おはよ』

それだけの短い言葉。
…何事もなかったような彼の態度。
やっぱりあの光景はあたしの見間違いだったのかもしれない。

てかおはよって…今何時だと思ってるんだこいつは。
もうすぐ昼だよ?

『どしたの?いきなり』

関村の返事はいつも早い。

『今日昼飯わすれた』

昼飯?
忘れたって…いっつも売店で買ってるって言ってたくせになんのアピールだ?

『売店にいけば?』

携帯をしまおうとするとすぐ

ブーーッ。

あーもう!
先生に見つかったらどうすんのよ…。

『お前のがいい』

……。

なんだと!?
あたしはちゃんと忘れずにお弁当持ってきたのにそれをよこせと!?

『絶対に無理!』

『じゃあお前を食わせろ』

…………。
答えになってないし。
何を言ってんのこいつ。
まだ続きがあることに気づきスクロールして読んでみると…

『今から空き室にこい』

…え、今から?てことは、関村はきっと空き室でサボってるのね。
って、あたしに授業抜け出せと!?

『むり!どうやって?』

『仮病つかえ』

…やってみるしかない。

「せ、先生!」

「ん?どーした吉田」

「あのっ…頭いたいです」

「ふーん、そうか。なら寝てろ。えー、ここの計算はー…」

……え、え?
そんなに塩対応なの?
この薄らハゲめ!
人が頭痛がってるっていうのにスルーですか!?
保健室というワードを期待していたのに…
寝てろって言われるとは思ってなかった。
甘かった…。

再び携帯を握りしめる。

『休み時間じゃだめ?』

『だめ。なに、失敗したの?』

『うん』

『アホ。迎えに行く』

む、迎えに行く?

ガラッ

「未菜」

「は!?」

驚きを隠せずに立ち上がった。
どういう神経してるのこいつ!?

「お前隣のクラスの関村だな?授業中だぞ!なにしてるんだ!」

プンスカ怒る先生を無視してあたしの席まで歩いてきた。

「行くぞ」

「え…あ…」

関村の登場に周りの女子が騒ぎだし、先生は顔を真っ赤にしてあたし達に怒鳴り散らす。
それなのに関村は表情一つ変えない。

「ほら立て」

「うんっ」

ぐいっとあたしの手を掴みそのまま走り出す。

「こらー!お前らー!」

「やべっ早く行くぞっ!」

「きゃー!」

笑ながら廊下を走る。
こんなに堂々と授業をサボるなんて初めての体験。
こんなにワクワクするなんて。
それにみんなの前で堂々と連れ出してくれたことが少し嬉しかった。

「あーねみぃっ」

空き室にあるベットにゴロンと横になる関村。

ここは関村とリクさんが使ってる秘密のところなんだっけ。
どうして先生達にバレないのか不思議だ。
窓から吹き込む風が気持ちいい。

「昨日の夜寝てないの?」

「まぁな」

「…ふーん」

「立ってないでこっちこいよ」

「いや…あたしソファーに座る」

こんな密室でエロ男の隣にいたら
なにされるかわかんないんだから。

「いーから、こっちこい」

「…はいはい」

ベットの端に座ると関村はあたしを後ろから抱きしめる形で座ってきた。

「ー…っ」

くだぁーっとあたしの肩に関村の頭がのしかかる。

く、くすぐったい…。

…ーちゅっ。

「ひゃっ…」

あたしの反応を楽しんでるかのように、ふっと鼻で笑う声が聞こえた。
関村の唇はあたしの首に触れ、そっとキスをする。

あ、甘い…っ!
そしてこの人の色気が凄い!

「せ、関村!」

関村の体を押した。

「…ん?」

「こ、ここでこんなことしてたらまたあの人に怒られるよ…?」

「いーんだよ。ここは俺の場所でもあるんだからな」

そして彼の手があたしの肩をゆっくりベッドへ押し倒す。
やばいっ…押し倒される!

「あはは!お、お相撲なら負けないぞ?てーーい!」

「…」

あ、あれ?
結構本気で押したのに全然動かない。

「それ本気?やっぱお前も女の子だな」

「あんたが強すぎるんだよ!」

「じゃあ俺には反抗できねーな」

「なっ…できますとも!」

「じゃあしてみれば?」

肩におかれた手に力がかかる。

や、やばいっ!
話をそらさなきゃ!

「あ、ねぇねぇ最近できたハンバーガーショップ知ってる?」

「ハンバーガー?」

「そう。気になるから今日一緒に行かない?」

「…それはめんどい」

関村はため息交じりに呟いた後、あたしから離れてひとりベットに倒れこんだ。
めんどいって、なにさ。

「最近付き合い悪いね。いーじゃん、デートとか全然出来てないしさ」

「疲れてんだよ。昨日だって振り回されて大変だったんだからな」

昨日…。
ふとあの時の光景が頭をよぎる。
…答えを知らないでこの先引きずるのは嫌だ。
きっと本当の事を聞かないとこの先ずっとモヤモヤする。

「…ねぇ、昨日誰と遊んだの?」

「ああー。3年の女」

「女って…え?どうゆうこと?」

あまりにも彼の言葉がストレートで理解できない。

「晩飯の買い出し付き合えって言われたんだよ。それで行っただけ」

「行っただけって…」

買い物なんて…1人でも行けるじゃん。
なんでわざわざ関村が付いていかなきゃいけないの?
それに…あたしとのデートは面倒なのにその人との買い物についていくのはなんで?
その女の人と関村はどういう関係なの?

言葉にできない感情で頭がいっぱいになる。

「あたしとのデートはめんどうなのに、その人との買い物は楽しそうについていくんだね…」
 
それに…本当は買い物だけじゃなかったんじゃないの?
泊まりとか言ってたもん。
この変態男がなにしたかなんて…わかりきったこと。

「だから疲れたんだよ俺は。いちいちうるせーな」

明らかに無感情の関村は風に揺れるカーテンを眺めるばかりであたしのことは一切見ない。
そんな彼の態度にどんどん腹が立ってきて。

「ねぇなんで?あたしは関村の彼女なのになんであたしが我慢しないといけないの?」

「べつに彼女だからってお前だけが特別なわけじゃねーだろ。つーか、他にもいるし」

…は?

「他にもって…どういうこと?」

「あー、お前めんどくさ」

冷たい口調になった関村からは、なんの感情も読み取れなくて。
やばいあたしそろそろ限界。
…何ため息ついてんだよ。
ため息をつきたいのはこっちだ。
…意味わかんない。
やだ…泣きそう。
目尻がじわじわと熱くなる。

「めんどくさいってなんなのっ!あたしは真剣に話してんのにっ」

「あー、もうそーゆーのがうざいんだって」

「そんな言い方ないじゃん!」

悲しくて悔しくて涙が溢れて止まらない。
そんなあたしをただ見つめるだけで関村は何も言わない。

「…関村、ほんとにあたしのこと好きなの?」

拳を握りしめて彼を見つめる。
溢れだす涙を必死にこらえながら。

少しの沈黙。
鋭い彼の目があたしを捉えて淡々と言った。


「俺、好きなんて言った?」


頭が真っ白になった。
心臓の音がうるさい。

「な、にそれ…」

絞り出した言葉は呆気なく、彼の明るい声でかき消される。

「お前だって、その程度だろ?」

その程度?

「いーじゃん。お前は俺を好きで、こうして付き合えてるんだから」

「待ってよ…。じゃあ関村は、最初からあたしのことなんとも想ってなかったってこと?」

「想ってねーよ。俺女に本気になんないし」

嘘だ。
どうしてそんな酷いことサラッと言えるの?
あたしがあんたと付き合えたことがどれだけ嬉しくて、関村がしてくれる行動とか言動にいちいち喜んで馬鹿みたいにはしゃいでたあたしの気持ちがあんたに伝わらなかったの?

「じゃあ…どうしてあたしと付き合ったの」

「別に嫌いでもなかったから」

「…ふざけんな」

告白するのにあたしがどれだけの決意をしたか。
一緒に出かけた時にとってくれたあんなブサイクなブタさんのキーホルダーが、どれだけ嬉しかったか。
少しでも冷たくされるたびにどれだけ本気で悩んだか。

「その程度?本気にならない?…笑わせんな」

知らなかった。
あんたがこんな最低野郎だったなんて。
今までの行動とか言動全部、あたしの思い違いだったんだ。

「何被害者ズラしてんの?お前もそこらへんの女と同じだろーが。ろくに俺のこと知らないくせに告白なんかしてきて。結局顔とか立場だろ?」

「はぁ…?ほかの女と一緒にすんなよ!顔だけならもっと他もイケメンなんていっぱいいるわ!あたしはっ、あんただから好きになったのにっ」

我慢してるのに涙がポロポロと零れる。
ならあの時のキスも、優しくあたしに触れてきたのもこいつにとってはタダの遊びで都合のいい暇つぶしで、意味なんかなくて。
あたし以外にもこんなふうにたぶらかして遊んでたんだ。

…関村は愛がなくてもあんなことできる人だったんだね。
あたしのこと振り回して楽しんでたんだね。
自分に好意をもってくれた人を都合よく受け入れて遊んで、そのくせ誰にも本気にならない。

…最低。

「あたしは前から…ずっと前から好きだったのっ。あんたが思ってる以上にホンキで…」

震える声で必死に伝えようと頑張るけど息が詰まる。
初めての感情で自分の気持ちを抑えることができなかった。
そんなあたしを見て驚いたかのように関村が目を見開いた。

「なんなのよっ…あんたほんっと最低!地獄に落ちろ!バカ!」

涙を拭って部屋を出ようと足早に歩き出す。

「っ…まてよ」

いつもと違う、強い力で腕をつかまれてそのまま壁に押さえつけられた。
手首の痛みとは裏腹に関村が悲しい目をしてあたしを見るから余計に胸が痛くなった。
どうしてあんたがそんな目してるの。
本当に…意味わかんないよ関村。

「痛いよっ…離して!」

「…なんで泣いてんの」

「はぁ?そんなこともわかんないの?あんた自分が何言ったか分かってんの!?どれだけあたしのこと傷つけたと思ってんのよっ。あたしは本気でっ…!」

「だったらこのまま俺と付き合ってればいいだろ?今まで通りふつうに」

「付き合うってのは…お互いが想い合っててその人だけの特別になりたいって思うからなの!…あんたにとってあたしが特別な存在じゃないならっ、あたしはあんたなんかいらない」

「でも…俺に寄ってくる女はみんなそれでもいいって…」

「だからっ、他の子と一緒にすんな!ばか!」

この男は今までどんな女と出会ってきたんだよ。
それともあたしが変なの?
そうだとしてもこいつの外見とか立場で寄ってくるようなそんな人たちとあたしの想いは絶対違う。
こんなありえないことを真顔で言ってくるこいつは絶対に頭いかれてる。
いや、もしかしたら無神経なあんたの言葉で泣いてる子だってたくさんいるかもしれない。
みんながみんな、遊びとは限らないのに。
それなのにこいつは…ー。

「あたしだけが好きじゃだめなのっ。一方的な恋愛じゃ付き合ってるは意味ないの!」

「未菜っ…」

「そんな中途半端な気持ちで付き合ってるなら相手が可哀想だっ!たまには女の子の気持ちになって考えてみろ!クソヤリチンが!」

関村の手を思いっきり振りほどいて部屋を出た。
走って、走って。

『好きなんていった?』

…っ。

最初から、振ってくれてればこんな淡い思い出なんかなかったのに。
今さらそんなこと言われてたって…もう遅いよ。
あんたのこと知っていくうちに、あたしの中でどんどんあんたの存在がおっきくなっていって、今この状況でもあんたのこと嫌いになれない自分がいるのに。

だけど、いままでしてきてくれてたことは
全部…愛がなかったんでしょ?

あたしのことなんて、ただの暇つぶしで最初からどうでもよかったんだ。
ミユの言ったとおりだった。
あたし…あいつのことなんにもわかってなかった。

流れる涙は止まる気配もなくて、必死に走るあたしの視界を滲ませる。

カランッ…ー

「…っ?」

床に落ちた、キーホルダー。
関村がはじめてとってくれた、あたしに似てるといったあのブタさんのキーホルダー。

……ほんとに嬉しかったのに。

ぎゅっと拳を握りしめて拾うことなくまた走り出す。

「…ーおいっ」

「ー…っ!?」

するとふいに腕を掴まれた。

「未菜じゃん!どしたの?」

「太陽…」

「え?泣いてんの?」

「っ…ふぇ。」

おさまったはずの涙がまた溢れ出した。
そんなあたしを優しく包む彼の腕。

「大丈夫か?」

泣き崩れるあたしを
そっと抱きしめる暖かい温もりをくれたのは太陽だった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敏腕SEの優しすぎる無償の愛

春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した祭りは、雨の夜に終わりを願う。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

恋が温まるまで

yuzu
恋愛
 失恋を引きずる32歳OLの美亜。 営業課のイケメン田上の別れ話をうっかり立ち聞きしてしまう。 自分とは人種が違うからと、避けようとする美亜に田上は好意を寄せて……。

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

処理中です...