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第五章
うそ
しおりを挟む「…っ」
チャイムの音で目が覚めた。
「…っあれ?」
さっきまで隣にいたはずの関村がいない。
どこに行っちゃったんだろう。
もしかして、先に教室戻っちゃった?
「起こしてくれたっていいじゃん…」.
あ、でもお弁当とか置いたままってことは…トイレかな?
息を吸って立ち上がり、体を伸ばす。
フェンスに寄りかかり風にあたりながら関村を待っていると、ドアが開いた。
「ちょっと関村おそ…」
「あー!いたいた!」
あたしの言葉を遮って近づいてくるのは関村ではなくあのキノコちゃんだった。
いたって…あたしを探してたの?
この子を見ると少し胸が苦しくなる。
あたしと目が合ったかと思うと周りを見渡して残念そうに顔を歪ませた。
「あの…どうかしたの?」
「慎也いないの?」
また、関村か。
「うん、いないよ。多分トイレじゃないかな」
「そっかぁ…あ!ちゃんと食べてくれたんだァ」
嬉しそうにお弁当箱を持ち上げるキノコちゃん。
……え?
「そのお弁当、あなたが作ったの?」
「そうだよー?」
うそ。
なんで?
関村、お母さんが作ってくれたって言ってたのに。
「…なんで関村にお弁当なんて作ったの?」
「なんでって、いっつも売店で買ってるでしょー?それじゃ栄養とれないじゃん?あたし料理得意だし。作ってあげたいなぁって」
「…なにそれ」
そんなの、あんたが心配する必要ないじゃん。
それに関村の話だと、この人彼氏いるんでしょ?
それなのにどうして隣の席ってだけでそこまでするの?
しかもあたしが関村の彼女ってわかってるはずなのに。
あたしにはなにも思わないの?
「未菜ちゃんもさ、ちゃんとそういうの考えてあげなよ!彼女なんでしょ?自分の分だけ作ってきてるじゃん。ありえないんだけど」
「…たしかに。そんなこと気にしたことなかったけど、他人のあなたが気になるくらいだからあたしが悪いね」
「他人ってなに!?あんたは知らないと思うけどあたし慎也と超仲良いんだぁ。あたしといる時一番慎也楽しそうだから」
…何こいつ。
やっぱりおかしいじゃん。
いくら仲が良くたってこんなことするなんて嫌味としか思えないよ。
「私の方が関村のことわかってると思うよ?」
もう、やだ。
「未菜ちゃんさぁ関村のこと困らせすぎじゃない?悩みまくってかわいそうだよ」
「え…?」
「もうさー、別れたら?ていうか明らかに私のほうが一緒にいてお似合いだし。慎也のこと未菜ちゃんより好きな自信あるよ?慎也さ、私に愚痴ばっかり言ってくるからきっと疲れてるんだよ」
「愚痴って…」
そう言いかけた時、ドアが開いて呑気な顔をした関村が帰ってきた。
「あ!慎也~」
すぐさま関村に駆け寄るナナさん。
関村は状況が読めないからかフリーズしている。
あたしの顔色を伺うかのような関村の視線。
腕を掴むナナさんに何も言わない関村に無性に腹が立った。
あんたも何考えてんの?
わざわざあたしに隠したのはやましい気持ちが少しでもあったから?
あたしに嘘つくぐらいなら貰わなきゃよかったんじゃないの。
結局、可愛い子だったら断れないの?
男なんてそんなもん?
あたしだけって、その場だけ?
…嘘つき。
「お弁当どーだった?美味しかったー?」
作られた甘い声。
見たくもない光景。
関村があたしのことで愚痴を言ってる?
たしかにあたしみたいなのと付き合ってたら愚痴も出るかもしれない。
でも、どうしてそれを関村を好きなこの人に相談するの。
この子に慰めて欲しかったの?
感情がぐちゃぐちゃになって喉の奥がキリキリする。
だめだ…ここにいたら泣きそう。
歯を食いしばり、二人の横を通り過ぎる。
「おいっ未菜っ…ー」
パタンっとドアが閉まって声は途絶えた。
そのまま女子トイレに走って息を殺して泣いた。
なんでこんな悲しい思いばっかりさせるの。
悩みまくってるなら、あたしに一言言ってくれればいいじゃん。
どうしてあの人に話せて、あたしには話せないの。
お弁当作ってもらうくらいの関係ならもうあの子と付き合えばいいじゃん。
あの子の言う通りだよ。
あたしより断然可愛いよ。
あたしなんかよりよっぽどお似合い…っ。
悔しくて涙が止まらなかった。
せめて、あの場では
駆け寄ってきた彼女を無視してでもあたしのところに来て欲しかったよ。
ねぇ関村…あたし、自信ないよ。
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