好きなんて、ウソつき。

春茶

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関村ver2

後悔

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何か言いたそうに唇を噛み締めて、泣きそうな顔をしたあいつが立っていた。

大きな音を立ててドアが閉まり、未菜の足音が遠ざかる。

「未菜っ!」

急いで布団から出て服も乱れたまま無我夢中であいつを追いかけた。

あいつ帰ってなかったのかよっ。
なんでいっつも…タイミング悪いんだ。

教室のドアを開けた瞬間
何かが飛んできて俺の体にぶつかり床に落ちた。

「未菜っ…」

「来ないでっ!」

ほら
またあいつを泣かせてる。

「なんで?意味わかんないよ!あたしを探しに来ないでナナさんとヤッてたんだ?なんでそんなことできるのよ!」

「未菜、1回俺の話をっ…」

「何も聞きたくない!…やっぱりナナさんの言ってたとおりだったの?信じてたのに…関村のこと信じてたのに最低!」

「おいっ待てよ!」

未菜の腕を掴むと思いっきり振り払われた。

「触んないでっ!」

「…っ」

「あんたのこと…信じてたあたしがバカだったっ。関村なんて大っ嫌い!」

「話聞けって!」

「聞きたくない!」

耳を塞ぐ未菜の手を再び掴んだ。

「…好きでしたわけじゃないんだ。俺とお前のためにしたことなんだよ。ナナが抱いてくれたら諦めるて言ったから俺はっ」

「は…?まさかナナさんのせいだって言いたの?あたしとあんたのためって何?そんなの言い訳になると思ってんの!?」

「みな…」

「そんな簡単に諦められるわけないじゃんっ…体に刻み込んで忘れられるわけないじゃん!ただ関村とシたかった口実に決まってんじゃん!」

泣き出す未菜を抱きしめたいのに、また振り払われることが怖くて手が動かない。
未菜の言葉は正しい。
今思えばそのとおりだ。

なにやってんだろう、俺は。
本当は心のどこかでヤルぐらいなら、バレないならって思ってた自分がいた。
昔から愛がないセックスなんて日常茶飯事だったから。
正直、未菜以外の女を抱くことなんて俺には容易かった。
だからすぐ終わらせようって思ってたんだ。
これ以上、未菜と俺の間を邪魔されたくなかった。
未菜のこと傷つけて欲しくなかった。
諦めるって言葉に惑わされてその誘いに乗ってしまった。
俺の考えは甘かったんだ。

「もういい。あたし…もう関村と付き合っていく自信ない」

そう言って教室から出ようとする未菜を繋ぎとめようとする俺の意思が体を動かして、ドアを塞いだ。

「…どいて」

「謝ったって許されることじゃないことはわかってる。でも俺ほんとにお前のこと好きなんだ」

「はやくどいて」

「俺はホントにお前とずっと一緒にいたいと思ってんだよ!だから未菜が納得いくまで説明するからちゃんと聞いてほしい。頼むからっ」

未菜のためと思って必死にもがいて、ナナまで巻き込んで。
それなのになんでこんなに空回りするんだ。

このままだと本当に未奈が離れて行きそうで冷静になれず自分の声がでかくなる。

「わかってほしい…?あたしにあんたの気持ちがわかるわけないじゃん!わかりたくもないよっ!」

「っ…」

「気持ち悪いよ…。人の体なんだと思ってるの?しかもあの状況でよくやれたね!…本当にあたしのこと好きなら、そんなことしてないであたしのこと追いかけてきて欲しかったよっ!」

「…っ」

泣き叫ぶ未菜を見るのが辛くて胸が痛くなる。

「確かにあんたの噂は色々聞いてた。でもっ、あたしと付き合ってから関村は変わってくれたって信じてたのに。それなのに…全部勘違いだったんだね。今まで信じてたこと全部!」

瞼が熱くなるのを感じて、唇を噛み締める。

「ごめん関村…あたしもう無理だよ」

『もう無理』

その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けるように頭が真っ白になった。

ドンッと俺の体を押して未菜は走って行ってしまう。

もう、追いかける気力は残ってなかった。

「…はは。」

俺、なにしてんだ?
どんな手を使ってでもあいつを繋ぎ止めたくて、ほかのヤツのものになって欲しくなくて泣き顔なんて見たくなくて。

それなのに…あいつのこと一番傷つけてんのは俺じゃねぇか。
今更、俺がした事の重大さに気づき自分に腹が立って仕方がなかった。

もし俺が未菜の立場だったらどうしてた?
きっと相手の男を殴り飛ばすだけじゃすまなかっただろ。
それなのに俺は後先考えないで勝手に自分の考えが正しいと思ってた。
ヤるだけならって、もう俺だけの問題じゃないのに。
俺にはあいつがいるのに。

あんな顔させて…ほんとに最低だな。

重たい足を動かしてさっき投げられたモノを拾う。
小汚いこれは、はじめてあいつにあげたキーホルダーだった。
これを拾うのは二回目。
…こんなに汚くなった豚、よく持ち歩くよな。
さっさと捨てればいいのに。

あいつの優しさと俺への想いが痛いほど伝わってきて拳を握りしめる。

たかがゲーセンで取ったキーホルダーにあいつはありがとうって、嬉しそうに笑ってた。
いつだって俺のこと一途に想ってくれてた。
どんなことがあっても信じて待っててくれてた。
誰よりも純粋で真っ直ぐだった。

「…っ」

目尻が熱い。
やべぇ、泣きそう。
そう気付いたら涙が溢れ出して、片手で顔を覆った。

どれだけ必死にあいつを繋ぎとめようとしても、どれだけ苦労して結ばれたとしてもほどけるのは一瞬で。
そのほどけたものをまた修復するのには時間がかかる。

なんでこんなに俺たちはすれ違いばっかりなんだろう。

振り払われた手が赤くなっている。

…いってぇよ、バカ未菜。

腕で目元をゴシゴシこすって外を眺める。
でも、やっぱり俺お前のこと諦めたくない。
離さないって決めた日から
あいつはもう俺のものなんだよ。

他の奴になんか渡したくない。
俺が幸せにしたい。

だけど…もうムリなのかな。

オレンジに染まる教室は
いつもと違って悲しく見えた。



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