好きなんて、ウソつき。

春茶

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第六章

あたしの好きな人

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「…慎也くん」

ボソッとそんな声が聞こえた。

慎也……そうか、関村が来たんだ。
顔を上げる気力もなくて、俯いたまま目を閉じた。

「…なにしてんだよ。お前ら」

「え…っと、なんのこと?」

「あいつの声が聞こえたんだよ。ここに未菜いるんだろ」

「…っ。だって慎也あの子と付き合ってから全然遊んでくれないじゃん!」

「んなことどうでもいいんだよ!優しく聞いてるうちに早く言え」

関村の迫力に圧倒されたのか、なにやらぶつぶつ言って関村に話し出す女の子2人。

すると突然、バキンッ!と何かが割れるすごい音がして顔を上げると床には粉々になった携帯カバー。

「早く写真消せ。じゃなきゃ次は携帯壊すぞ?」

少しだけ顔を上げてみると携帯を関村に見せる二人の姿。

「今度また同じようなことしたら次は手出るから覚悟しとけよ」

そんな関村に怯えたのか悔しそうに走り去っていった。

再びうつむくと関村の足音があたしへと近づいてくる。

「…未菜」

関村があたしの前に座り込んだのがわかった。
…最悪。
はだけた胸元を手で握りしめる。

「お前…嫌がらせ受けてたのか?」

「…そうだよっ。あんたのせいであたしはこんなに目に遭わされてたの。関村のせいであたしは…っ」

止まってた涙がまた溢れ出してうまく話せない。
こいつの顔を見たら何故か涙が止まらなくて。
制服を握りしめる手が自然と震える。
すると関村の手があたしの頬に伸びてくる。

「…っ触んないでよ!」

乾いた音が静かな教室に響き渡った。
霞む視界に映る、悲しそうな顔。

彼の手を振り払うのは…これで何度目だろう。

ねぇ関村
どうしてあなたはいつもそんなに真っ直ぐにあたしを追いかけるの。
何回も無視して、何回もあんたから逃げて来た。
もう…黙ってあの子のところに行けばいいじゃんっ。
どうして…いつもあたしのこと振り回すの。

「…っ遊びなんでしょ?あたしなんて…。だったらもうほっといてよ!!」

こんなこと、自分で口にする虚しさがあんたにわかる?
あたしのこと好きじゃないってわかってるのに心のどこかで期待してしまうあたしの気持ちがあんたに分かるかな。

「ほんとにごめん。気付いてやれなくて」

「…もう、やだぁ…」

遠慮がちに伸びてきた関村の手があたしをそっと抱きしめる。

優しく、そして強く。

「俺、最低だよな。まあ好きな女も守れない」

「っ、離して」

「でも、俺なりに必死なんだ。お前が俺を嫌いになっても俺はお前しか見れない。それだけは変わらない。今もこれからも」

いつぶりだろう。
こんなふうに、抱きしめられたのは。
暖かくて、優しくて、懐かしくて余計涙が出てくる。

「…あたしは信じてたんだよ。あたしだってあんたのこと嫌いになりたくなんてないよ。でも…あんなの見せられたらわかんなくなるじゃん!」

関村の体温が、あたしを素直にさせてくれる。

「あの時のこと全部話すから、このまま聞いて」

少し間が空いたあと、あたしは静かに頷いた。

「俺、実は少し前からナナの気持ちには気付いてた。でも俺には未菜がいるし、誤解させたくなかったからもし俺に好意があるならもう関わらないって言ったんだ」

あたしの背中を撫でる優しい手と関村のなだめるような優しい声。

「そしたら彼氏いるって言われてさ。それならいいやって思った。だけどウソだったんだ。本当の気持ちを俺にぶつけることができなくてお前に当たったんだと思う」

関村は、あたしに誤解されるのがいやでナナさんとの線引きをした。
だけど関村との関係を保ちたいばかりにナナさんは自分の気持ちにウソをついて彼氏がいるといった。
告白もしてないのに線引きをされたナナさんは本人に気持ちを伝えたくても言えなかったんだね。
言ったら、友達でもいられなくなってしまうから。

「俺さぁそのとき一番自分を責めたんだ。ナナが泣いたのも未菜の事傷つけたのも俺のせいだって。告白される前に振られたあいつの気持ちはどんなだったんだろうって」

抱きしめる力が強くなって、その力があたしの心をしめつける。

「…それで一つだけ頼みを聞くって言ったら、抱いてって言われたんだ。そしたら俺のこと嫌いになるから、忘れるからって」

関村とナナさん、ふたりにしかわからない気持ち。

「俺もバカだよなぁ…もう誰にも未菜と俺の邪魔をされたくなかった。未菜が俺と付き合うことに疲れて離れていくことが怖かった。…結局集中できなくてずっと目瞑ってたらナナも泣いちゃってさ。正直今まで色んな女抱いてきたから軽い気持ちでした。だけど凄い後悔した。今も、ずっと後悔してる」

関村も、いろいろ考えたんだね。
ナナさんの気持ちは、きっとナナさんにしかわからない。
でもね、あたしも少しナナさんの気持ちわかる気もする。
好きな人には彼女がいて、彼女になることはできないからせめて友達のままでもいいからそばにいたいという気持ち。
それだけ、関村のことを想ってた。

関村も、たくさん1人で悩んで傷ついてたんだね。

「せきむらぁ…」

泣きながら、あたしも彼の背中に手を回した。

話せばわかることだってあるって、ミユはそう言ってた。
でもあたしはずっと逃げてたんだ。
あたしだけが可哀想だって、あたしだけが惨めだってそう思ってたから。

でも、違ったんだね。

「ほんとごめんな。あんなの見たら誰だって嫌だよな。俺だって自分保つ自身ねーもん」

「…あたし、関村のこと信じてあげられなかった。ほんとにあたしのこと好きなのかなって、ナナさんを選んだんじゃないかって…」

「待て待て、どんだけ俺がお前を見てきたと思ってんだよ。でも俺が悪い。未菜は何も悪くない。ほんとにごめんな」

「うん…」

「こんなことして言える立場じゃないけど、俺は今でもお前が好きだよ。だからこれからも彼女でいて欲しい」

「…うん」

「でも、無理にとは言わない。今回の件はそれだけ信用無くすことだから」

あたしから離れた関村が自分の手であたしの手を包み込んだ。

…彼と付き合ってから散々嫌な思いして、泣いて目を腫らして学校にいったことなんて数え切れないほどある。

今回のことだって、理由を聞いたって許したくないしずっと消えない傷になった。

…でも、こんなにも真っ直ぐな人は初めて出会った。
辛いことが起きるたびに彼に助けられてたのも事実。
きっと、恋愛本気になったのが初めてで、彼自身過去の自分と戦ってるのかもしれない。

…関村を信じたい。
信じてもいいって、そう思わせてくれる人だから。

「あたし…もうこんな思いはしたくない。でも、関村のこと、信じたい」

あたしが素直になれば
こんなにもお互いの気持ちがはっきりする。

「うん、信じろ。後悔させないから」

モヤモヤしてた気持ちも、不安だった想いも
こんなにもキレイさっぱりと消える。

「…あたし、ナナさんみたいに可愛くないしきっとみんな不釣り合いだって思ってるよ。関村はそんなあたしでもいいの?」

ずっと不安に思ってた関村とあたしの関係。こんなにかっこいい人気者が、あたしなんかと付き合ってたら周りから評判だって下がるだろうし。
…不釣り合いって思われても仕方ない。

俯くあたしに拍子抜けした顔の関村。
するとクスッと笑ってあたしの頬を包んだ。

「お前は可愛いよ」

「…っ」

「俺だけが知ってる可愛いとこいっぱいある。周りがお前のこと何知ってんだよ。俺だけが可愛いって思ってたらそれでいいだろ」

サラッと、そんなこと言ってくれちゃう。
こんなに真っ直ぐに。

「だからこれもう捨てんなよ。かわいそうだろーがこんなに汚れて」

そういって渡されたのは、あの豚さんのキーホルダー。

これ…持っててくれてたんだ。

どれだけあたしが避けても
どれだけあたしが拒んでも
それでも彼はあたしを追いかけてきてくれた。
変わらず想ってくれていた。
毎日向き合おうとしてくれた。

「うん…わかったっ」

あたしが笑うと関村も微笑んでそっとふたりキスをした。



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