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第三章
第5話『記憶の影と遠ざかる手』
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冷たい風が遺跡の石壁を撫でていた。春の陽気とは裏腹に、地下深くに広がる空間には冷たい気配が漂っていた。アリシアたちは、ついに“秘密の扉”を開くための鍵を発見し、封印された空間の奥へと足を踏み入れていた。
その空間には、誰も見たことのない巨大な魔法陣と、石でできた棺のようなものがあった。封印を守るために作られた祭壇のようなその場所は、時を止めたように静かだった。
「この魔法陣…人の記憶を封じる術式だわ」
シルヴィアが目を細めてつぶやく。
フェリクス卿が巻物を広げ、照らし合わせながら続ける。
「ここには、“記憶を代償に力を得る”古の術式が眠っていたようだ。だが、この術は…禁術に近い。」
アリシアは、棺の前に立ち、無意識のうちに手を伸ばした。触れた瞬間、頭の中に眩い光が走り、そして――彼女は“何か”を見た。
それは、かつて王国を守るために戦った、ある女性魔導士の記憶だった。彼女は、自らの記憶を代償にして、王国の災厄を封じたのだ。その名は…「リアナ」。
記憶の中で、リアナはアリシアと同じ顔をしていた。
「私と…同じ…?」アリシアは混乱しながらも目を開いた。
「大丈夫か!?」駆け寄ったレオンが、アリシアの肩を抱きしめる。彼女はかすかに頷いたが、心の中では別の疑問が芽生え始めていた。
リアナは誰なのか。自分と何の関係があるのか。
この封印は、本当に守られるべきものなのか――。
王宮に戻った後も、アリシアの心は落ち着かなかった。レオンやシルヴィアにその記憶のことを話すべきか悩んだが、確信がないままでは口にすることができなかった。
「彼らを巻き込みたくない…」
そう思ったとき、彼女は再び夢を見る。
夢の中のリアナは、かすかな微笑みを浮かべながら語りかけてきた。
「あなたが選ぶ未来が、すべての記憶を癒す光になる…。」
翌朝、アリシアは一人で遺跡へ向かった。仲間たちに告げることもなく、彼女は自分の正体と過去の記憶を確かめるため、再び封印の祭壇のもとへと戻ったのだ。
だが、その背後には、彼女の動向を密かに探る影があった。
王国の中枢に巣食う黒幕、仮面の男・ヴァルグ。その正体は未だ知れず、彼はアリシアの血筋に何らかの価値を見出していた。ヴァルグはアリシアの記憶の奥に隠された“リアナの魔力”を狙い、動き始めていたのだ。
そして、レオンはそのことに気づき、アリシアの後を追う。
遺跡に到着したアリシアは、再び棺の前に立つ。今度は、扉の奥にある封印を自らの力で解こうとしていた。
そのとき、空気が急に張りつめ、黒い瘴気が現れる。
「来たか…!」アリシアは後ずさりする。
姿を現したのは、仮面の男・ヴァルグだった。
「ようやく会えたな、リアナの器よ」
その不気味な声に、アリシアは全身を震わせた。
次の瞬間、ヴァルグは魔法を発動し、アリシアの意識を奪おうとする。だがその刹那、剣の閃光が黒い魔法を裂いた。
「アリシアを渡すものかッ!」
レオンが現れ、彼女の前に立ちはだかった。
「遅い…でも、来てくれて…ありがとう」
アリシアの頬に涙が一筋こぼれた。
ふたりは背中を合わせ、迫るヴァルグに立ち向かう。
封印された記憶と、未来を守るために――
戦いの火蓋が、今、切って落とされた。
その空間には、誰も見たことのない巨大な魔法陣と、石でできた棺のようなものがあった。封印を守るために作られた祭壇のようなその場所は、時を止めたように静かだった。
「この魔法陣…人の記憶を封じる術式だわ」
シルヴィアが目を細めてつぶやく。
フェリクス卿が巻物を広げ、照らし合わせながら続ける。
「ここには、“記憶を代償に力を得る”古の術式が眠っていたようだ。だが、この術は…禁術に近い。」
アリシアは、棺の前に立ち、無意識のうちに手を伸ばした。触れた瞬間、頭の中に眩い光が走り、そして――彼女は“何か”を見た。
それは、かつて王国を守るために戦った、ある女性魔導士の記憶だった。彼女は、自らの記憶を代償にして、王国の災厄を封じたのだ。その名は…「リアナ」。
記憶の中で、リアナはアリシアと同じ顔をしていた。
「私と…同じ…?」アリシアは混乱しながらも目を開いた。
「大丈夫か!?」駆け寄ったレオンが、アリシアの肩を抱きしめる。彼女はかすかに頷いたが、心の中では別の疑問が芽生え始めていた。
リアナは誰なのか。自分と何の関係があるのか。
この封印は、本当に守られるべきものなのか――。
王宮に戻った後も、アリシアの心は落ち着かなかった。レオンやシルヴィアにその記憶のことを話すべきか悩んだが、確信がないままでは口にすることができなかった。
「彼らを巻き込みたくない…」
そう思ったとき、彼女は再び夢を見る。
夢の中のリアナは、かすかな微笑みを浮かべながら語りかけてきた。
「あなたが選ぶ未来が、すべての記憶を癒す光になる…。」
翌朝、アリシアは一人で遺跡へ向かった。仲間たちに告げることもなく、彼女は自分の正体と過去の記憶を確かめるため、再び封印の祭壇のもとへと戻ったのだ。
だが、その背後には、彼女の動向を密かに探る影があった。
王国の中枢に巣食う黒幕、仮面の男・ヴァルグ。その正体は未だ知れず、彼はアリシアの血筋に何らかの価値を見出していた。ヴァルグはアリシアの記憶の奥に隠された“リアナの魔力”を狙い、動き始めていたのだ。
そして、レオンはそのことに気づき、アリシアの後を追う。
遺跡に到着したアリシアは、再び棺の前に立つ。今度は、扉の奥にある封印を自らの力で解こうとしていた。
そのとき、空気が急に張りつめ、黒い瘴気が現れる。
「来たか…!」アリシアは後ずさりする。
姿を現したのは、仮面の男・ヴァルグだった。
「ようやく会えたな、リアナの器よ」
その不気味な声に、アリシアは全身を震わせた。
次の瞬間、ヴァルグは魔法を発動し、アリシアの意識を奪おうとする。だがその刹那、剣の閃光が黒い魔法を裂いた。
「アリシアを渡すものかッ!」
レオンが現れ、彼女の前に立ちはだかった。
「遅い…でも、来てくれて…ありがとう」
アリシアの頬に涙が一筋こぼれた。
ふたりは背中を合わせ、迫るヴァルグに立ち向かう。
封印された記憶と、未来を守るために――
戦いの火蓋が、今、切って落とされた。
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