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第三章
第7話『裏切りの報せ』
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夜の王都は静寂に包まれていた。だがその静けさの奥には、何かが蠢いている気配があった。アリシアは魔眼の覚醒以降、強くなった直感でそれを感じ取っていた。
「誰かが、王宮の中から私たちの動きを監視してる……」
レオンとシルヴィアもその違和感に気づいていた。遺跡での一件以降、アリシアに対する視線が変わった。それは、期待や尊敬ではなく――恐れと不信だった。
「アリシア様、今日の訓練はこれで……」
「ありがとう、フィリス」
王宮の庭で簡単な魔法制御訓練を終えたアリシアは、ふと背後の木陰に視線をやった。誰かがいる。そう確信し、魔力を練る。
しかし――そこには、彼女の親衛隊のひとり、カイが立っていた。
「カイ……様子を見に来ただけ、ですよね?」
だが、カイは答えなかった。ただ、アリシアの胸元に視線を落とし、そして静かに言った。
「……本当に、あなたは“アリシア”なのですか?」
アリシアは思わず言葉を失った。
「どういう、意味……?」
「私は、王宮内の書庫である文献を読んだのです。“魔眼の継承者”と呼ばれる存在は、過去に二人といません。あなたはその一人、リアナの転生体。だとすれば――」
カイの手が剣に触れる。
「あなたの存在は、王家にとって脅威にもなり得る」
「やめて!」間に割って入ったのはレオンだった。
「剣を抜くなら、俺が相手になる。アリシアは、脅威なんかじゃない!」
「……ならば、貴様も共犯ということになりますね」
カイの目が鋭く光る。
「カイ、私の力が怖いの?」アリシアの声が震える。
「違う。ただ、歴史を繰り返すのが怖いんです。かつてリアナが封印しきれなかった災厄を、再び解き放つのではないかと……!」
その言葉に、アリシアは返す言葉を失った。
その夜、アリシアの部屋に一通の密書が届けられる。差出人不明。だが中身は、明確な告発だった。
《王宮内にヴァルグと通じている者がいる。裏切り者は、貴女のすぐ傍にいる》
紙には、黒い印章とともに、見覚えのある紋章――王家の分家、ノアール家の家紋が刻まれていた。
「ノアール家……まさか、あのフェリクス卿が?」
アリシアは驚愕するも、すぐに思い直す。
(でも、フェリクス卿がそんなことを……でも、あの時の遺跡の情報や、ヴァルグの出現のタイミング……)
翌日、アリシアはシルヴィアに相談する。
「もし、王宮内に裏切り者がいるとしたら……どうすべき?」
「証拠がないうちは、動くべきではないわ。でも、あなたの力はもう“ただの少女”のものじゃない。私たちが支えるから、真実を見極めて」
シルヴィアの言葉に背を押され、アリシアは決意する。
「私が見極める。誰が味方で、誰が敵なのか。そして、この魔眼の力が、呪いなのか、それとも希望なのか……!」
その頃、別の場所――黒い礼拝堂のような建物の中、ヴァルグは不敵に笑っていた。
「彼女は確実に覚醒しつつある。だが、それでは困るのだよ。魔眼が完全に覚醒すれば、我が“鍵”の計画は頓挫する。ならば、先に揺さぶっておく必要がある」
その傍らには、一人の人物が跪いていた。
「王都の“内側”から、混乱を引き起こしましょう。姫の信頼する者を通して」
その者の顔はフードに隠れていたが、指先には王宮の従者が持つ金の指輪が光っていた――。
王宮に迫る裏切りと混乱。
アリシアの覚醒は、新たな闇の幕開けに過ぎなかった。
「誰かが、王宮の中から私たちの動きを監視してる……」
レオンとシルヴィアもその違和感に気づいていた。遺跡での一件以降、アリシアに対する視線が変わった。それは、期待や尊敬ではなく――恐れと不信だった。
「アリシア様、今日の訓練はこれで……」
「ありがとう、フィリス」
王宮の庭で簡単な魔法制御訓練を終えたアリシアは、ふと背後の木陰に視線をやった。誰かがいる。そう確信し、魔力を練る。
しかし――そこには、彼女の親衛隊のひとり、カイが立っていた。
「カイ……様子を見に来ただけ、ですよね?」
だが、カイは答えなかった。ただ、アリシアの胸元に視線を落とし、そして静かに言った。
「……本当に、あなたは“アリシア”なのですか?」
アリシアは思わず言葉を失った。
「どういう、意味……?」
「私は、王宮内の書庫である文献を読んだのです。“魔眼の継承者”と呼ばれる存在は、過去に二人といません。あなたはその一人、リアナの転生体。だとすれば――」
カイの手が剣に触れる。
「あなたの存在は、王家にとって脅威にもなり得る」
「やめて!」間に割って入ったのはレオンだった。
「剣を抜くなら、俺が相手になる。アリシアは、脅威なんかじゃない!」
「……ならば、貴様も共犯ということになりますね」
カイの目が鋭く光る。
「カイ、私の力が怖いの?」アリシアの声が震える。
「違う。ただ、歴史を繰り返すのが怖いんです。かつてリアナが封印しきれなかった災厄を、再び解き放つのではないかと……!」
その言葉に、アリシアは返す言葉を失った。
その夜、アリシアの部屋に一通の密書が届けられる。差出人不明。だが中身は、明確な告発だった。
《王宮内にヴァルグと通じている者がいる。裏切り者は、貴女のすぐ傍にいる》
紙には、黒い印章とともに、見覚えのある紋章――王家の分家、ノアール家の家紋が刻まれていた。
「ノアール家……まさか、あのフェリクス卿が?」
アリシアは驚愕するも、すぐに思い直す。
(でも、フェリクス卿がそんなことを……でも、あの時の遺跡の情報や、ヴァルグの出現のタイミング……)
翌日、アリシアはシルヴィアに相談する。
「もし、王宮内に裏切り者がいるとしたら……どうすべき?」
「証拠がないうちは、動くべきではないわ。でも、あなたの力はもう“ただの少女”のものじゃない。私たちが支えるから、真実を見極めて」
シルヴィアの言葉に背を押され、アリシアは決意する。
「私が見極める。誰が味方で、誰が敵なのか。そして、この魔眼の力が、呪いなのか、それとも希望なのか……!」
その頃、別の場所――黒い礼拝堂のような建物の中、ヴァルグは不敵に笑っていた。
「彼女は確実に覚醒しつつある。だが、それでは困るのだよ。魔眼が完全に覚醒すれば、我が“鍵”の計画は頓挫する。ならば、先に揺さぶっておく必要がある」
その傍らには、一人の人物が跪いていた。
「王都の“内側”から、混乱を引き起こしましょう。姫の信頼する者を通して」
その者の顔はフードに隠れていたが、指先には王宮の従者が持つ金の指輪が光っていた――。
王宮に迫る裏切りと混乱。
アリシアの覚醒は、新たな闇の幕開けに過ぎなかった。
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