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幻獣種 麒麟 オウカ
ドラーク領都にある俺の屋敷の一室に、先日ハヌックから買った奴隷の女性がベッドで眠りについていた。いや、身体の治癒が終えてから一度も目を覚ましていない。
「良く成人するまで生きてこられたな」
「本当ですね。彼女は戦闘に向いた種族ではないので奇跡に近いです」
俺は彼女の状態を確認がてら、看病をするコレットと雑談していた。
一日に何度かヒールをかけ状態を確認する。意識が何時戻るかはわからない。
「じゃあコレット、何か変化があれば教えてくれ」
「はい、彼女の事は私とユーファンで看病しますから、意識が戻ればお知らせしますね」
俺はこの場をコレットに任せて執務室に戻った。
「どうだった?」
執務室に戻るとエルが聞いてきた。当然麒麟族の女性のことだろう。
「あゝ、意識はまだ戻っていないけど、二~三日中には意識も回復すると思うんだけどな。こればっかりは彼女次第かな」
「彼女は是非とも私達で保護しないといけませんね」
執務室で俺の仕事を手伝ってくれているルシエルが、幻獣種という希少種族の彼女に対して思うところがあるんだろう。ルシエルの娘ルーファリスも希少種であるハイエルフとして生まれた。同じ困難が予想される彼女に感情移入しているのかもしれない。
「ルシエル、心配しなくても彼女は俺達が護るよ」
「そうね、ルーファリスもそうだけど、彼女のような希少種族もドラーク領なら護る事が出来るわ。ドンと来いよ!」
エルもルシエルを安心させようと胸を叩く。
「ふふっ、ありがとうエルレイン」
私は死んだの?
それともまだ生きているの?
ふわふわとした意識の中で、私は今までの人生を振り返っていた。
私は幻獣種である麒麟族のオウカ。
私の暮らしていた集落は小さな小さな集落だった。
そこで私は突然変異の様に、周りのみんなとは違う種族として生を受けた。
幻獣種の麒麟族。それは獣人族にとっては特別な存在。でも人族にとっては格好の獲物。
そんな私に親は勿論、集落の仲間は優しかった。
麒麟族は獣人族には珍しく、近接戦闘向きではないが、それでも幻獣種というアドバンテージは大きく、集落の防衛の為に努力し続けた。
厳しい環境での貧しい暮らしだったけど、それでも私は幸せだった。でも、そんな幸せが崩れる日が突然やって来る。
風の噂では、ここの所負け続きの帝国が、また積極的に奴隷狩りを始めたと言う。
そしてその魔の手は私達の集落へも及んだの。
私は集落の戦士達と一緒に必死になって戦ったわ。飛びかう魔法にさらされながら、苦痛に耐え抵抗を続けた。
希少種族と分からぬ様、全身をローブで覆いながや、一人でも多くの仲間を逃す為…………。
私は愛用の棍を振るい、腕を失い、足を失い、魔法で焼かれ、身体を斬り刻まれながら、意識を失った。
あゝ……、私はここで死ぬんだ…………。
お母さん……、お父さん……、ごめんなさい。
意識が浮上してくる。
閉じたまぶた越しに明るい光を感じる。
あれ?私は死んだんじゃないの?
重いまぶたを開けると、白い天井がぼやけて見えた。やがて視界がハッキリとしてくると、ここが私の暮らしていた集落とは違う事が分かった。集落の建物は木と草で出来た粗末な物だったから。こんなに綺麗な部屋は生まれて初めてだった。
動かし難い身体を少し動かして、私は明らかな違和感を感じた。両手がある?……足も両方がある?
え?……混乱で頭が上手く回らない。
確かに私の片腕と片脚は千切れ飛んだはず。他にも全身に大きな怪我も火傷も見当たらない。
「あら、意識が戻ったのね」
優しい声がするほうを見ると、そこには狐人族の綺麗な女性が笑顔で微笑んでいた。
「もう大丈夫ですよ」
「……あ、あの、……私は」
喋ろうとしても上手く言葉が出てこない。
「無理しなくて良いのよ。直ぐに元の様に身体を動かせるようになるから」
そのあと狐人族の女性、コレットさんが経緯を説明してくれた。
私は半死半生の状態で奴隷商に売られていたらしい。死にかけている私を買うなんて物好きな奴隷商人も居たものね。
その時、私の首に隷属の首輪がない事に気がついた。コレットさんはにっこりとして「カイト様が外したのですよ」と教えてくれた。
コレットさんが言うカイト様とは、この領地を治める貴族様だという。
「私を奴隷商で買ったのですよね。何故私は解放されているのですか?」
そう、身体に欠損があり半死半生の私は捨て値だっただろうけど、それでも欠損を回復するような高位の治癒魔法を使ってまで解放する意味がわからなかった。
「カイト様は特別なのです」
驚いた事にコレットさんも以前、全身を酷い火傷で動けない状態で私と同じ奴隷商に居たそうだ。その時やはりカイト様に助けられ、直ぐに奴隷からは解放されたと言う。
「カイト様は、理不尽な奴隷狩りにあった違法奴隷を買っては解放して自領で住居と仕事を与えているんです。カイト様に言わせれば、新しく立ち上げたこの領地に、領民を勧誘しているだけらしいのですけどね」
驚きしかなかった。サーメイヤ王国は種族間差別の無い国だと噂には聞いていたけれど、ここまでとは……。
「カイト様には種族間差別なんて微塵もないですから。その証拠に、四人の妻は正妻のエルレイン様がエルフのクォーター、あとエルフのルシエル様、兎人族のイリアさん、あとは狐人族の私ですから」
「えっ!」
妻の全員が人族以外?!
コレットさんも領主夫人?!
お父さん、お母さん、私はやっと心穏やかに暮らせる場所が見つかったかもしれません。
「良く成人するまで生きてこられたな」
「本当ですね。彼女は戦闘に向いた種族ではないので奇跡に近いです」
俺は彼女の状態を確認がてら、看病をするコレットと雑談していた。
一日に何度かヒールをかけ状態を確認する。意識が何時戻るかはわからない。
「じゃあコレット、何か変化があれば教えてくれ」
「はい、彼女の事は私とユーファンで看病しますから、意識が戻ればお知らせしますね」
俺はこの場をコレットに任せて執務室に戻った。
「どうだった?」
執務室に戻るとエルが聞いてきた。当然麒麟族の女性のことだろう。
「あゝ、意識はまだ戻っていないけど、二~三日中には意識も回復すると思うんだけどな。こればっかりは彼女次第かな」
「彼女は是非とも私達で保護しないといけませんね」
執務室で俺の仕事を手伝ってくれているルシエルが、幻獣種という希少種族の彼女に対して思うところがあるんだろう。ルシエルの娘ルーファリスも希少種であるハイエルフとして生まれた。同じ困難が予想される彼女に感情移入しているのかもしれない。
「ルシエル、心配しなくても彼女は俺達が護るよ」
「そうね、ルーファリスもそうだけど、彼女のような希少種族もドラーク領なら護る事が出来るわ。ドンと来いよ!」
エルもルシエルを安心させようと胸を叩く。
「ふふっ、ありがとうエルレイン」
私は死んだの?
それともまだ生きているの?
ふわふわとした意識の中で、私は今までの人生を振り返っていた。
私は幻獣種である麒麟族のオウカ。
私の暮らしていた集落は小さな小さな集落だった。
そこで私は突然変異の様に、周りのみんなとは違う種族として生を受けた。
幻獣種の麒麟族。それは獣人族にとっては特別な存在。でも人族にとっては格好の獲物。
そんな私に親は勿論、集落の仲間は優しかった。
麒麟族は獣人族には珍しく、近接戦闘向きではないが、それでも幻獣種というアドバンテージは大きく、集落の防衛の為に努力し続けた。
厳しい環境での貧しい暮らしだったけど、それでも私は幸せだった。でも、そんな幸せが崩れる日が突然やって来る。
風の噂では、ここの所負け続きの帝国が、また積極的に奴隷狩りを始めたと言う。
そしてその魔の手は私達の集落へも及んだの。
私は集落の戦士達と一緒に必死になって戦ったわ。飛びかう魔法にさらされながら、苦痛に耐え抵抗を続けた。
希少種族と分からぬ様、全身をローブで覆いながや、一人でも多くの仲間を逃す為…………。
私は愛用の棍を振るい、腕を失い、足を失い、魔法で焼かれ、身体を斬り刻まれながら、意識を失った。
あゝ……、私はここで死ぬんだ…………。
お母さん……、お父さん……、ごめんなさい。
意識が浮上してくる。
閉じたまぶた越しに明るい光を感じる。
あれ?私は死んだんじゃないの?
重いまぶたを開けると、白い天井がぼやけて見えた。やがて視界がハッキリとしてくると、ここが私の暮らしていた集落とは違う事が分かった。集落の建物は木と草で出来た粗末な物だったから。こんなに綺麗な部屋は生まれて初めてだった。
動かし難い身体を少し動かして、私は明らかな違和感を感じた。両手がある?……足も両方がある?
え?……混乱で頭が上手く回らない。
確かに私の片腕と片脚は千切れ飛んだはず。他にも全身に大きな怪我も火傷も見当たらない。
「あら、意識が戻ったのね」
優しい声がするほうを見ると、そこには狐人族の綺麗な女性が笑顔で微笑んでいた。
「もう大丈夫ですよ」
「……あ、あの、……私は」
喋ろうとしても上手く言葉が出てこない。
「無理しなくて良いのよ。直ぐに元の様に身体を動かせるようになるから」
そのあと狐人族の女性、コレットさんが経緯を説明してくれた。
私は半死半生の状態で奴隷商に売られていたらしい。死にかけている私を買うなんて物好きな奴隷商人も居たものね。
その時、私の首に隷属の首輪がない事に気がついた。コレットさんはにっこりとして「カイト様が外したのですよ」と教えてくれた。
コレットさんが言うカイト様とは、この領地を治める貴族様だという。
「私を奴隷商で買ったのですよね。何故私は解放されているのですか?」
そう、身体に欠損があり半死半生の私は捨て値だっただろうけど、それでも欠損を回復するような高位の治癒魔法を使ってまで解放する意味がわからなかった。
「カイト様は特別なのです」
驚いた事にコレットさんも以前、全身を酷い火傷で動けない状態で私と同じ奴隷商に居たそうだ。その時やはりカイト様に助けられ、直ぐに奴隷からは解放されたと言う。
「カイト様は、理不尽な奴隷狩りにあった違法奴隷を買っては解放して自領で住居と仕事を与えているんです。カイト様に言わせれば、新しく立ち上げたこの領地に、領民を勧誘しているだけらしいのですけどね」
驚きしかなかった。サーメイヤ王国は種族間差別の無い国だと噂には聞いていたけれど、ここまでとは……。
「カイト様には種族間差別なんて微塵もないですから。その証拠に、四人の妻は正妻のエルレイン様がエルフのクォーター、あとエルフのルシエル様、兎人族のイリアさん、あとは狐人族の私ですから」
「えっ!」
妻の全員が人族以外?!
コレットさんも領主夫人?!
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