異世界立志伝

小狐丸

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オウカのリハビリの開始

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 部屋の中に荒い息が聴こえる。

 身体の欠損と極度の衰弱から回復した麒麟族のオウカが、一日も早く元の体力へと戻すためのリハビリが行われていた。

(一日も早くカイト様のお役に立てる様にならなきゃ。そうすれば私もいずれ…………)

 オウカはカイトの妻達の中に純粋な人族が居ない事に驚いていた。これは他の国ではあり得ないことだった。
 特にカイトは貴族だ。性奴隷として獣人族やエルフを囲う貴族や豪商はいたが、妻とする者は他の国には居なかった。

(イリアさんやコレットさんが居るんだから、一人くらい増えても大丈夫よね)



 コン、コン。「はい!」

 オウカが返事をすると、扉がノックされて一人の美しい女性が入って来た。

「頑張っていますね。
 私はエピルといいます。オウカさんの服を作ったので持って来たの」

「あ、ありがとうございます」

 初めて見る女性に少し警戒しながらもお礼を言うオウカ。

「あ、あの……、エピルさんもカイト様の奥様なのですか?」

「アハハハッ、違うわよ。私とラヴィンとフィーネはカイト様の種が欲しいの」

「えっ?!」

 ラヴィンとフィーネという新しい名前と、種が欲しいというストレートな欲求に固まるオウカ。

「あゝ、私を含めてラヴィンとフィーネは、最近カイト様に助けて頂いたの。
 私はアラクネ、ラヴィンはラミア、フィーネはハーピーという種族なのね。私達の種族は基本的に女しか居ないの。だから繁殖の為には他種族の雄が必要なのよ」

 そこまで説明されて少し納得するオウカ。

「でも、それならカイト様でなくても良いのでわ?」

 オウカが疑問に思った事を聞いてみる。

「あなた達獣人族もそうだと思うけど、私達も強い雄を求めるのよ。それに見た目が美しいカイト様なら、何がなんでも種が欲しい私達の気持ちもわかるでしょう」

 それを聞いてオウカも納得する。自分もただ身体を治癒してもらった恩だけを感じている訳ではない。獣人族の本能か、圧倒的な強者の気配を感じるカイトに対して好意を寄せるのは自然な流れだった。

「それに私達は魔物の領域で隠れ棲んでいたから、それなりに戦えたんだけど、カイト様や騎士団長のランカスさん達に鍛えられて随分強くなったの。それで私達はこの屋敷の警護兼メイドなのよ」

「メイドですか?」

 オウカが不思議に思ったのは、エピルの服装がチャイナドレスのような服だったからだ。
 オウカの視線でそれに気付いたエピルがその秘密を話した。

「あゝ、これね。私とラヴィンは普段は人化の魔法を使ってるけど、本気で戦闘する時は元に戻るのね。その時に下半身に服を着ていると邪魔になるのよ」

 それを聞いてオウカは一応納得する。ただアラクネやラミアという種族を知らないので、下半身が変化するのだろうという事だけは理解した。

「警護もエピルさん達がするのですか?」

 この屋敷には騎士団から警護する騎士が常駐しているのをオウカは知っている。さらにカイト自身やその妻達の実力も知っている。そこにエピル達が警護に付くというのは過剰なように感じたからだ。

「この屋敷には、エルレイン様達の産まれたばかりのお子様が三人いらっしゃるの。その中でもルシエル様の御子はハイエルフとして産まれてきたのね。あなたも希少種族だから分かると思うけど、希少種族の危険性は身に染みてるでしょう。私達も今でこそカイト様とスーラさんの魔導具のお陰で、常に人化していられるから街でも暮らせるけど」

 それを聞いて、自身も辺境の集落で隠れ棲んでいたオウカも、この屋敷の厳重な警護体制に納得する。

「成る程、では私も早く闘えるようになって、カイト様のお役に立つ様に成らなければ」

「フフッ、頑張ってね。
 そうそう、この服は私の糸から造ったモノだから高い防御力と着心地を両立していると思うわ。また新しい服が出来たら持ってくるわね」

 そう言うとエピルは服を置いて部屋を出て行った。

(私も頑張ればカイト様のお妾さん位には成れるかな。その為にはリハビリ頑張って、自分の身は自分で護れるように成らないと)

 人族なら絶望から救ってくれたカイトへのつり橋効果と片付けるだろうが、これが獣人族になると事情が違う。獣人族は強い者に本能的に惹かれるのだから。

 オウカはイリアの様に、カイトの側で仕える事を夢見てリハビリに精を出すのだった。



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