幻獣使いの英雄譚

小狐丸

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戦乱編

戦乱の嵐

 これまで、国境が接していない為、大きな衝突はなかったが、潜在敵国だったパルミナ王国とブランデン帝国が同盟を結んだ。
 
 イオニア王国 国王アクリシオスは、共に野心家の元首が治める国の、突然の同盟に動揺する。

「しかし、パルミナ王国とブランデン帝国は、大きな諍いはないが、小競り合いは頻繁に起こしておったはずだがな。どういう事だ?」

 アクリシオスが宰相に聞く。

「その小競り合いは、旧商業都市同盟内で、お互いの縄張り争いの様なものでしたから」

「縄張り争いとな?」

「はい。奴隷狩りです」

 宰相の説明に、アクリシオスの顔が歪む。

「小規模な村や町を襲って、奴隷を確保するか。国家としてすることか!まるで盗賊ではないか!」

 イオニア王国にも奴隷制度は存在する。しかし、それは犯罪奴隷か、借金奴隷の二種類で、借金奴隷は、数年働くことで借金を返済し解放される。待遇も衣食住を保証される。
 

「現在は消滅しましたが、かつて死兵軍団として恐れられた、ブランデン帝国の獣人奴隷部隊も、奴隷狩りで集められた獣人達を、隷属の首輪で無理矢理縛ったものです」

「確か獣人奴隷部隊は潰滅したと聞いた」

「いえ、正確に言うならば、彼等は現在、トルースタイン共和国の精鋭部隊として活躍しています。もちろん奴隷ではなく」

「どういうことじゃ」

「なに、簡単な事です。かの国には、獣人を拐っては、捨て駒にする様な扱いを赦さぬ英雄が居ます。そして隷属の首輪を、簡単に解呪する事の出来る魔導士も、少なくとも三人は居るのです」

「なるほど、縄張り争いどころか、旧商業都市同盟内に、入る事すら出来んようになったか」

「はい。そこで旧ケディミナス教国ですな」

「難民が流入しそうだな」

 アクリシオスが溜息を吐く。

「難民の受け入れ体制を整えておきます。ケディミナス教国からトルースタイン共和国へは、山越えをせねばなりませんからな。難民が流入するのは、我が国が多くなるでしょう」

「ふむ、トルースタイン共和国と連携を取った方が良いだろう。使者をだして共同で事にあたるよう提案してくれ」







 トルースタイン共和国 副首都ロンバルド

「パルミナ王国とブランデン帝国の同盟が成りましたね」

 フィリッポスが書類に目を通しながら、前のソファーに座り、お茶を飲んでいるユキトに話しかける。

「カンパネラで会談していたみたいですね」

「えゝ、カンパネラはパルミナ王国とブランデン帝国との、中間地点に在りますからね。迷惑な話です」

 やれやれといったかんじで、フィリッポスが言う。

「それとペトラ、ヘリオス、カンパネラで、警備用ゴーレムが強奪されそうになった事件が、何件かありましたけど、実際に盗まれたのが一件、未遂が六件ですね」

 パルミナ王国とブランデン帝国が会談する際に、同行したそれぞれの国の工作部隊が、警備用ゴーレムに目をつけ、強奪に動いた。

「盗まれたのですか?報告は上がって来ていませんが?」

「直ぐに取り戻せましたから。盗まれかけたと言うのが正しいですかね」

 それを聞いてフィリッポスはホッとする。

「そうですよね。確かゴーレムには、識別魔力波で位置特定出来た筈ですから」

「はい、お陰で工作部隊を複数捕縛しました。だいたいゴーレムを盗んでも無駄ですけどね。正確な手順を踏んで分解しないと、全ての術式が消去されますから」

 ゴーレムの盗難対策は万全にしてある。特に戦闘用ゴーレムは、ユキトとノブツナやフィリッポス達の魔力パターンを登録。彼等以外の命令を受け付けない。


「ケディミナスとの国境が険しい山ですから、難民の流入も限定的でしょうが、山越えしてでもトルースタインに来る者もいるでしょう」

「ココでも山越え出来ましたからね」

「ヘリオスとカンパネラ、あとロンバルドからも部隊を出して、ケディミナスとの国境付近の魔物の掃討と、山越えをする難民の受け入れ体制をとるよう、各都市へ指示を出しておきます」

「そうですね。パルミナ王国とブランデン帝国がケディミナスに進軍すると、一気に難民が増える可能性が高いですから」

 ただこの時ユキトは、言葉に表せない気持ち悪さを感じていた。
 ケディミナス教国を我が物にした邪神教団。奴等が自分達の国を欲しただけとは考え難かった。
 自国の民を犠牲に、アークデーモンを呼び出す非道を平気でするような奴等が、国を奪っただけで満足して終わるとは思えなかった。

 この時のユキトの予感は的中するのだが・・。

 それも最悪の方向で・・・・。





 パルミナ王国とブランデン帝国が、同盟を結んだ事が分かって二ヶ月。
 パルミナ王国とブランデン帝国が、相次いで旧ケディミナス教国への戦線布告を行う。

 両国はケディミナスへ軍を進める。

 大陸に戦乱の火が燃えあがろうとしていた。

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