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戦乱編
収まらない胸さわぎ
ユキトは嫌な胸さわぎが収まらなかった。
ケディミナス教国を魔物で蹂躙し国を奪い、村や町の住民を生け贄に、アークデーモンを召喚するような奴らだ。だけどこのところ、パルミナ王国とブランデン帝国の同盟や宣戦布告があっても、静かすぎると感じていた。
元々、宣戦布告自体にあまり意味はない。パルミナ王国もブランデン帝国も、それぞれ大陸統一を掲げて小競り合いしていた国なのだから。
自国の兵士を魔人に人体改造する国が、パルミナ王国やブランデン帝国の挑発を静観している事に違和感を覚える。
「何かあった時の為に、出来ることは全部やろう。やらないで後悔するよりは良いよね」
先ずは、トルースタイン共和国の防衛については、今の所問題はないだろう。ノブツナ、ヴォルフ、バーバラがそれぞれ複数の精鋭部隊を育てている。アイザックも神官達を率いている。
問題は旧ケディミナス教国の国民をどう救うのかという事だ。
「飛行船は、僕の船と輸送船を含めて四隻か。これは増やすのは難しいから仕方ないよな。
そうするとせめて精鋭部隊の装備を、充実させる方向で考えてみるか」
「あの、少しよろしいですか?」
常にユキトの側に寄り添うサティスが、何か意見があるようだ。
「うん?何かなサティス」
「あの、勘違いかもされませんが、ユキト様と共に、ケディミナス教国へは何度かご一緒しています。
それで気づいたのですが、最近特にそうなんですが、とても嫌な感じがするのです。
抽象的な表現で申し訳ないのですが……」
サティスの感じる嫌な感じというのは、無視していい感覚じゃないとユキトは思った。
「フィリッポス先生に相談してみよう」
ユキトは、これは重要な事だという直感のもと、直ぐにフィリッポスへ相談することにした。
「……嫌な感じですか……。感覚の鋭いサティスさんが感じたのですから、意味はあるのでしょう」
「あの、フィリッポス様、その嫌な感じは旧聖都に近いほど強く感じる気がするのです」
それを聞いたフィリッポスが考え込む。
「もしや……、サティスさんが感じたのは、瘴気かもしれません」
「瘴気ですか?」
聞きなれない言葉に、ユキトが聞き返す。
「ええ、ユキト君には聞きなれない言葉でしょうが、多分間違いないでしょう。
瘴気とは、サティスさんが感じたような嫌な空気、よどんだ気、そのような物です。魔界の空気は瘴気だと言われています。
ただ、あの国で瘴気の濃度が、濃くなっているというのが問題です。何か大規模な儀式の可能性が高いでしょう」
「フィリッポス先生、その瘴気への対応は出来るのですか?儀式を阻害出来ないでしょうか?」
「儀式自体を辞めさせる事は難しいでしょう。どんな儀式か、我々では想像も出来ませんから」
「儀式を邪魔する事は出来るのですね」
フィリッポスの言い方から、儀式を止める事は出来なくても、嫌がらせ程度は出来るかもしれないと思い聞いてみる。
「ええ、要するに瘴気のある場所を浄化すればいいのです。サンクチュアリィ(聖域)を広範囲で発動すれば、儀式を止める事は出来ずとも、かなりの効果は期待出来るでしょう」
「サンクチュアリィを広範囲で発動する為の補助具を作ればいいんですね。考えてみます」
自分の工房に戻ったユキトは、早速、サンクチュアリィを広範囲で発動する為の補助具となる魔導具の開発をはじめた。
フィリッポスの助言を貰いながら、実験を繰り返し、何とかカタチにはなったが、一つ問題があった。
「これ、どう考えても六人必要だよな」
ユキトが作成した、サンクチュアリィ補助魔導具は、聖域で囲みたい場所の周辺を五芒星の形で魔導具を設置、ほぼ同時に発動しないといけない。
「五芒星の各頂点に一人づつと、真ん中付近に僕の六人か……、まぁ仕方ないか」
ただし、何もない所に他国でサンクチュアリィを勝手に発動することは出来ないので、旧ケディミナス教国が、何かアクションを起こすまで何も出来ない事が歯がゆかった。
「爺ちゃんの所と、ヴォルフさんの所にゴーレム馬を追加で造っておくか」
「そうですね、魔物に怯えない様に、馬を訓練するには時間がかかりますから、ゴーレム馬は有効だと思います」
ユキトの呟きに、サティスが賛成する。
「他に何か意見はないかな」
「そうですね……、例えば、逃げ遅れた人達の為に、聖域結界を張る魔導具は作れるでしょうか?」
サティスの意見をユキトが考え込む。
「聖域結界か……、出来なくはないか……」
ユキトは、ノブツナやヴォルフの部隊に配備出来るよう、数を揃える事を決める。
広範囲聖域発動魔導具、ゴーレム馬、携帯型聖域結界魔導具、精鋭部隊の為に装備の強化を進める。
そんな中、パルミナ王国とブランデン帝国の軍が、旧ケディミナス教国へ向け進軍を開始した。
ケディミナス教国を魔物で蹂躙し国を奪い、村や町の住民を生け贄に、アークデーモンを召喚するような奴らだ。だけどこのところ、パルミナ王国とブランデン帝国の同盟や宣戦布告があっても、静かすぎると感じていた。
元々、宣戦布告自体にあまり意味はない。パルミナ王国もブランデン帝国も、それぞれ大陸統一を掲げて小競り合いしていた国なのだから。
自国の兵士を魔人に人体改造する国が、パルミナ王国やブランデン帝国の挑発を静観している事に違和感を覚える。
「何かあった時の為に、出来ることは全部やろう。やらないで後悔するよりは良いよね」
先ずは、トルースタイン共和国の防衛については、今の所問題はないだろう。ノブツナ、ヴォルフ、バーバラがそれぞれ複数の精鋭部隊を育てている。アイザックも神官達を率いている。
問題は旧ケディミナス教国の国民をどう救うのかという事だ。
「飛行船は、僕の船と輸送船を含めて四隻か。これは増やすのは難しいから仕方ないよな。
そうするとせめて精鋭部隊の装備を、充実させる方向で考えてみるか」
「あの、少しよろしいですか?」
常にユキトの側に寄り添うサティスが、何か意見があるようだ。
「うん?何かなサティス」
「あの、勘違いかもされませんが、ユキト様と共に、ケディミナス教国へは何度かご一緒しています。
それで気づいたのですが、最近特にそうなんですが、とても嫌な感じがするのです。
抽象的な表現で申し訳ないのですが……」
サティスの感じる嫌な感じというのは、無視していい感覚じゃないとユキトは思った。
「フィリッポス先生に相談してみよう」
ユキトは、これは重要な事だという直感のもと、直ぐにフィリッポスへ相談することにした。
「……嫌な感じですか……。感覚の鋭いサティスさんが感じたのですから、意味はあるのでしょう」
「あの、フィリッポス様、その嫌な感じは旧聖都に近いほど強く感じる気がするのです」
それを聞いたフィリッポスが考え込む。
「もしや……、サティスさんが感じたのは、瘴気かもしれません」
「瘴気ですか?」
聞きなれない言葉に、ユキトが聞き返す。
「ええ、ユキト君には聞きなれない言葉でしょうが、多分間違いないでしょう。
瘴気とは、サティスさんが感じたような嫌な空気、よどんだ気、そのような物です。魔界の空気は瘴気だと言われています。
ただ、あの国で瘴気の濃度が、濃くなっているというのが問題です。何か大規模な儀式の可能性が高いでしょう」
「フィリッポス先生、その瘴気への対応は出来るのですか?儀式を阻害出来ないでしょうか?」
「儀式自体を辞めさせる事は難しいでしょう。どんな儀式か、我々では想像も出来ませんから」
「儀式を邪魔する事は出来るのですね」
フィリッポスの言い方から、儀式を止める事は出来なくても、嫌がらせ程度は出来るかもしれないと思い聞いてみる。
「ええ、要するに瘴気のある場所を浄化すればいいのです。サンクチュアリィ(聖域)を広範囲で発動すれば、儀式を止める事は出来ずとも、かなりの効果は期待出来るでしょう」
「サンクチュアリィを広範囲で発動する為の補助具を作ればいいんですね。考えてみます」
自分の工房に戻ったユキトは、早速、サンクチュアリィを広範囲で発動する為の補助具となる魔導具の開発をはじめた。
フィリッポスの助言を貰いながら、実験を繰り返し、何とかカタチにはなったが、一つ問題があった。
「これ、どう考えても六人必要だよな」
ユキトが作成した、サンクチュアリィ補助魔導具は、聖域で囲みたい場所の周辺を五芒星の形で魔導具を設置、ほぼ同時に発動しないといけない。
「五芒星の各頂点に一人づつと、真ん中付近に僕の六人か……、まぁ仕方ないか」
ただし、何もない所に他国でサンクチュアリィを勝手に発動することは出来ないので、旧ケディミナス教国が、何かアクションを起こすまで何も出来ない事が歯がゆかった。
「爺ちゃんの所と、ヴォルフさんの所にゴーレム馬を追加で造っておくか」
「そうですね、魔物に怯えない様に、馬を訓練するには時間がかかりますから、ゴーレム馬は有効だと思います」
ユキトの呟きに、サティスが賛成する。
「他に何か意見はないかな」
「そうですね……、例えば、逃げ遅れた人達の為に、聖域結界を張る魔導具は作れるでしょうか?」
サティスの意見をユキトが考え込む。
「聖域結界か……、出来なくはないか……」
ユキトは、ノブツナやヴォルフの部隊に配備出来るよう、数を揃える事を決める。
広範囲聖域発動魔導具、ゴーレム馬、携帯型聖域結界魔導具、精鋭部隊の為に装備の強化を進める。
そんな中、パルミナ王国とブランデン帝国の軍が、旧ケディミナス教国へ向け進軍を開始した。
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