円環の蛇 破壊と再生の神印(ギフト)

小狐丸

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二十九話 シグ採掘を手伝う

 ベルグとポーラが魔改造した馬車は、驚きの乗り心地だった。
 ただ、僕は時々ファニールに乗らないと、拗ねるから、ずっと馬車には乗れなかった。
 ルカは、僕とファニールの背に乗るのを楽しんでいたけど、馬車の中で寛ぐ方が良いに決まってる。

「道のない場所を走っているのに、乗り心地が悪くないね」
「シグ殿にそう言って貰えると頑張った甲斐があるわい」
「……ん、頑張った」

 馭者席からベルグが嬉しそうに言い、ポーラも何気に誇らしげだ。

「シグ殿、もうそろそろ鉱床に着く筈じゃ。それでセレネの嬢ちゃんの防具の他に、シグ殿用の長柄武器は何にするのか考えておいてくれ」
『馬上槍だから、槍か槍斧じゃないのか?』
「ファニール様、長柄武器と一口に言っても、槍、グレイブ、バルディッシュ、ハルバード、スコーピオン、大斧、戟など色々種類はあるのです」
『へぇー、色々あるんだな』

 ベルグとポーラには、ファニールが龍だと教えたのだけど、それからファニールに対しての態度がガラリと変わってしまった。


「長柄武器か……インドラと槍の稽古はしていたけど、どんなのがいいかな……」
「まぁ、じっくりと考えてくれ。鉱石を採掘してもいないからな」

 ベルグに言われてそれもそうかと、じっくりと考えることにする。ベルグと話し合って、僕の長柄武器はベースをベルグが造り、そこに僕が龍の牙か爪をウロボロスの創造魔法で合成する事が決まっている。




 空白地帯に入ってから五日目、ベルグが発見していた露天掘り鉱床へ辿り着いた。
 そこは草木の生えない岩だらけの小さな渓谷だった。
 そこでふと疑問に思う。ベルグの話では、この鉱床からは銅、銀、鉄、黒魔鉄、ミスリル、アダマンタイトが産出される優良な鉱床だと聞いた。なら、この空白地帯に暮らす部族や蛮族が縄張りにしているのではないかと。

「なあベルグ、ここは何処かの部族が縄張りにしていたりしないの?」
「シグ殿、この空白地帯に暮らす部族や蛮族達は、基本的に拠点を持たんのじゃ。そうなると鍛治をする炉の用意も出来ん。蛮族共は武器や防具は略奪して手に入れる。鉱石を採掘して農機具や武具を自作する部族は少ないのう」
「……鍛治の炉には大量の炭が必要。でも私達ドワーフは、魔力炉を使うから炭はほとんど必要ない」
「そ、そうなんだ……」

 どうやら普通の人が鍛治をするには、魔力炉でもない限り、炭が大量に必要なのだとか。そして、魔力炉はドワーフか、ドワーフに学んだ者しか造れないらしい。




 鉱床の側に馬車を停めると、ヴィルナに頼まれ馬用の水桶を土魔法で作る。そこにヴィルナが水魔法で並々と満たすと、馬が喜んで水を飲み始める。

「シグ殿、岩塩もお願いします」
「了解。ここに出しておくね」

 塩分補給用の岩塩を取り出し馬車を引いている馬にあげる。

 ガツッ! ガツッ!

 音が聞こえると思ったら、早速ベルグとポーラがツルハシを振るって採掘を始めていた。

「シグお兄ちゃん、おじちゃんとお姉ちゃんは何してるの?」
「うん? 嗚呼、あれは鉄の元になる石を掘ってるんだよ」
「石が鉄になるのー? へんなのー!」

 最近、やっとベッタリと引っ付いていなくても大丈夫になってきたけど、それでも相変わらずルカは僕の側に居る時間が長い。

「アグニ、インドラは周囲の警戒をお願い」
「承知」
「ああ、任せとけ」

 アグニとインドラに周辺の警戒を頼んだ。

「ヴィルナはルカの護衛を頼むね」
「シグ様とルカ嬢の護衛はお任せ下さい」
「ルカ、ルカ嬢なの? キャハハハハッ! へんなのぉー!」

 ヴィルナにはベルグとポーラを含めた僕達の護衛を頼む。

『ルカの護衛は俺だけで大丈夫だぜ』
「ああ、ファニールももしもの時は頼むよ」
『おう! 俺が龍に戻れば怖いものなしだぜ!』

 いや、龍に戻っちゃダメだろう。あれ? 空白地帯なら目立ってもオッケーなのか?



 ルカと遊んであげながら、ベルグとポーラが採掘するのを待っていた。どうやらここの鉱床は大当たりの部類に入るらしく、嬉々として掘り続ける二人。

 僕は、山となった鉱石の所に近づくと土蜘蛛の聖印の力、土属性魔法を発動して不純物を除去してみる。
 これは僕が生まれた時からある、もう一人の男の記憶と知識を使っている。

「おお! シグ殿の錬金したインゴットは高品質ですな!」
「……うん、ドワーフに負けてない」
「シグお兄ちゃん、すごぉーーい!」

 僕が戯れに練金したインゴットを、ベルグとポーラが興味深げに調べて褒めてくれた。でも生まれた時から、朧げながら僕の中にある知識あっての物なので、大袈裟に褒められるとズルしたみたいな気分になる。

「じゃあベルグとポーラが採掘した物をインゴットにしていくよ」
「おお! では儂らも張り切ろうかのう」
「……うん、頑張る」

 僕はインゴットにした物を片っ端から闇属性魔法の収納空間に入れていく。ベルグのマジックバッグの容量は、それ程大きくないらしく、僕と一緒に行動すると決めてから、魔力炉の材料や工具類を買い込んだそうで、インゴットを収納する余裕がないと言われた。そこで僕が代わりに収納する事になった。

 この旅に同行するに際して、ベルグとポーラは僕の配下になると言って聞かなかった。賊から助けられた恩もあるけど、それ以上に龍の素材と、ファニールの存在が大きかったみたい。




 ベルグとポーラは、ツルハシを手に思い思いの場所を採掘してはニヤニヤしている。おそらく希少な鉱石が掘れているんだろう。
 僕は掘り出された鉱石をインゴットに精錬しながら、自分を中心に蜘蛛の巣状の魔力糸を伸ばしていく。土蜘蛛の神印の力を使った探査手段だ。

「よいしょ、よいしょ。ルカもお手伝いするの!」

 ルカが重そうに掘り出された鉱石を僕の所に運んで来る。

「ありがとうルカ。無理しちゃダメだよ」
「うん! ルカね、力持ちなんだよ!」

 クシャクシャと頭を撫でてあげると、嬉しそうに笑顔を見せる。

(魔物もポツポツ居るみたいだな)

 蜘蛛の巣状に広範囲に張り巡らされた魔力の糸を通し、アグニとインドラが僕達に近付いて来そうな魔物を狩っているのが分かる。

 その魔力の糸が、僕達に近付いて来る小さな集団を察知した。

(うん? 蛮族にしては人数が少ないな。斥候かな?)

 僕はヴァルナに視線を送ると、ヴァルナが頷き近付いて来る集団の方へと一歩移動して警戒する。

 僕はルカを抱き上げ、もしもの時に備えると、セレネさんも気がついたのか、僕の側で弓を持ち警戒する。ファニールも近付いて来て近付く集団に備える。



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