銀腕の武闘派聖女

小狐丸

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十一話 親衛隊

 私の工房兼図書室兼倉庫兼薬草園の建設が始まった。私も土魔法を使って手伝っている。

 とはいえ、私は色々と忙しい。

 今、私の前には、アレクお父さまに連れて来られ、緊張に身を固くしている子供達がいた。

 右から、赤髪の活発そうな女の子が、マーテル・ロー。私と同じ歳の七歳。ロー男爵家の三女。

 その隣が、ララ・ユーロン。青髪に蒼瞳。七歳ながら落ち着いたクールな印象のある女の子。ユーロン子爵家の次女で、私とは親戚関係にある。

 そして明るい茶髪がパティ。一人だけ平民だからか凄く緊張しているわね。大人しくて真面目な感じかな。

 そしてこの中で唯一の男の子。ノックス・ヴァイス。
 騎士団長のガーランドの息子で八歳。彼だけは、ガーランドから私に鍛えて欲しいと頼まれた。

「ユーリ。彼女達と彼が、従者候補だよ。どうかな?」
「ええ、お父さま。私に否はありません。皆さま、領都の学園も含めると、長い付き合いになります。よろしくお願いしますね」
「「「「よろしくお願いします!」」」」

 その後、自己紹介を兼ねて、皆んなと色々と話した。

 マーテルは、見た目通り明るく活発な元気っ子。五歳から剣を振っているらしい。その辺は、武闘派貴族あるあるだね。

 ララは、印象通り冷静で頼りになる感じ。まあ、彼女は親戚だから昔から幼馴染ってのもある。

 唯一平民のパティも、話しているうちにだいぶ緊張がほぐれてきたかな。彼女は、平民だけど魔力が多い。偶然、街に出掛けたフローラお母さまが見付けてスカウトしたと聞いている。

 もともとルミエール伯爵家は、一部の貴族家のように選民思想は薄いからね。領民との距離が近いの。それは、お隣りでフローラお母さまの実家のシルフィード辺境伯家も同じらしい。

 で、ノックスもガーランド経由で知らない仲じゃない。一つ歳上だし、あのガーランドの子供なので、八歳にしては体格が良い。

「これから学園の入学まで五年弱。皆んなをルミエールの名に恥じない実力に仕上げてみせるわ。よろしくね」
「……ユーリ、少し変わった?」
「うーん。変わったと言われると変わったと言えるでしょうけど、私はララの幼馴染のユーリには違いないわよ」

 私がこれからの方針を言うと、ララが少し首を傾げて疑問を口にした。流石に親戚で物心ついた頃から顔を合わせているララには、前世の記憶を思い出した私は違って見えるのかもしれない。

「でもユーリちゃん、大人っぽくなってません? 外見は変わりませんけど」
「マーテル。褒めてるんですか? それとも喧嘩売ってます?」
「まあまあ、お嬢もその辺で。ようは学園の入学までに強くなろうって事だろう。望むところさ」
「ノックスは脳筋でシンプルでいいわね。まあ、そうよ。私が誘拐された事件は知ってると思うけど、これ以上ルミエール家が舐められる訳にはいかないの。皆んなには、死ぬ気で着いて来てもらうわ」

 マーテルからの指摘は正しい。体に精神が引っ張られてるとはいえ、前世で八十過ぎまで生きた記憶と経験を得たんだもの。多少は大人っぽくなっている。勿論、外見は変わらないけどね。

 このララとマーテル。そしてお嬢なんて呼び方するノックスの三人が幼馴染になる。

「強くなれるなら文句はないわ。ユーリを傷モノにした奴らを潰してやるわ」
「ちょっとララ。言い方。大怪我はしたけど、傷モノって違う意味に聞こえるから」
「私もユーリちゃんの仇はとるわ」
「だから、マーテル。私は死んでないわよ!」

 ほんとララとマーテルといると退屈しないわ。



 アレクお父さまとフローラお母さまに許可を得て、この四人には前世の記憶があり、そこでは八十年近く武術を研鑽した武人だったとカミングアウトした。

 その記憶が蘇ったのが、馬車ごと崖から落ちて大怪我をした後という事と、この義手は賢者マーサ・ロードウェルが遺跡から発掘した魔道具で、普通の腕と変わらず不自由はないと言っておく。

 勿論、神機である事は伏せてある。秘密は知る人数が少なければ少ない程漏れにくいから。

 そして私の事情を話したのは、ララ達を鍛えるにあたって、その指導を私がする為だ。

 前世には無い魔法という要素はあるものの、私が身に付けた内功や練気は、繊細な魔力操作と強力無比な身体強化技術に通じる。そのコツを伝えられれば、ララ達が一回りも二回りも強くなれる筈だ。


 そんなこんなで、私専用の建物建設現場で、訓練を兼ねた土木作業が始まった。

「フンッ! お、重いっ!」
「ほら、ノックス、もっと身体強化に使う魔力を増やして」
「まっ、魔力がぁ!」

 土魔法で基礎工事が行われ、地下室用の穴も掘られた。その壁面は土魔法で硬化してあるけど、建物自体は石造りにするので、そのブロックを皆んなで運んでいる。

 私達はノックスが八歳で、他は全員まだ七歳なので、過度の負荷の掛かる運動は避けるべきだ。だから、様子を見ながら魔力操作と身体能力を絶妙なバランスで鍛えていく必要がある。

 今は、体に負荷をかけ過ぎないよう、魔力による身体強化を行い、魔力操作の向上と魔力量を増やす訓練になる。そのうち慣れてきたら身体強化なしでも筋トレしてやる。



 そして一日の最後に、建設現場で魔力を放出する。その前に、マーサおばあちゃん特製の魔力を回復させるお茶は欠かせない。

「ふぅ。魔力を垂れ流すのって難しいわね」
「ララちゃんは、魔法が得意だからまだいいじゃない」
「う~ん……」
「うーん、放出って、どうするんだ?」

 最初はコツを掴めず苦戦してたけど、ララは魔法が得意なだけあるわね。マーテルはだいぶ苦労している。パティとノックスは苦戦を通り越して唸っている。

 まあ、これも直ぐに慣れてくるだろう。

 私は私で、聖属性の魔力を大量に垂れ流す。

 そう。これは薬草園を造る準備だ。私が聖属性の魔力なのは、無属性や他の属性だと魔物を呼び寄せる可能性があるから。魔物は聖属性の魔力を嫌う個体が大半だからね。

 この一日の最後に行う魔力放出は、魔力操作と、魔力量増加の訓練になる。私達はまだ七歳と八歳だから、魔力量が体の成長に伴い本格的に増えるのはこれからだ。




 そして何故か、次の日からルミエール伯爵家の騎士団所属の魔法使いシルエルとウルエルが建設の手伝いに参加し始めた。

 シルエルとウルエルは、我が家に仕えるエルフの姉妹。我が領に居る三人の精霊魔法使いのうちの二人。もう一人は領都で薬師をしている。

 二人が、こっそりと近付いて来て、私の耳元でこう言った。

「ユーリお嬢様も精霊と契約しているのですね」
「内緒にしてね」

 それは、エルフで精霊魔法使いなら姿を見せていないゴクウも見えてるよね。私の肩をチラチラ見てたから間違いなく見えている。

 それから二人は騎士団での仕事が無い時に、私を手伝ってくれている。

 他にも職人さん達が仕事として建設に参加している。その一人が話し掛けてくる。背丈は150センチ無いくらいと大人としては低いけど、ビア樽みたいな胴体に太い筋肉質の手足。そう、ドワーフだ。

「お嬢、工房は耐火の付与が必要じゃぞ」
「私、鍛治はしないよ」
「そんな寂しい事言わんでくれ。炉があれば便利じゃぞ」
「そんな事言って、ガンツはマーサおばあちゃんの鉱石目当てでしょう」
「お嬢! 魔物素材もだぞ!」
「威張って言えないからね」

 工房に炉をとしつこいガンツの思惑は分かっている。私がマーサおばあちゃんから受け継いだ鉱石や魔物素材が目的だ。

 ドワーフのガンツは、領都に工房を持つルミエール家御用達の鍛治師。武具は勿論、日用品や他の職人と組んで魔道具の製作まで携わる腕の良い職人。今日も私の工房建設の手助けに来ていた。

「なぁ、頼むよお嬢」
「ガンツの工房でいいんじゃないの?」
「流石に、賢者様からお嬢が受け継いだ物を、俺の工房には持って行けぬわい」
「その辺は変に律儀なのね」

 マーサおばあちゃんが、集めてストックしてあった鉱石はどれも貴重な物だ。まあ、貴重じゃない何処でも手に入れれる鉱石なら、マーサおばあちゃんがわざわざ倉庫に保管していないけどね。



 そのうち、ガーランドやマーカス、ジェスが騎士団の訓練の一環として工事を手伝い始めた。騎士団だけあり、身体強化の魔法はララ達よりもずっと巧みで力強い。結果、工事の進捗が捗る捗る。

 薬草園も工房に先立って完成したので、早速種を植えたわ。

 耕すのは土魔法で、水やりも水魔法で、そして皆んなの魔力放出による豊富な魔力で、森の薬草畑と大差ない環境を整えれたと思う。


 予定外の協力もあり、私の城とも言える施設の建設はあっという間だった。重機よりも魔法は凄いと思い知らされたよ。

 ルミエール伯爵家、城の敷地の一画。普段は人が近付く事もない場所に、私の城が完成した。

 小さな森の側。綺麗な泉にテニスコート二面分の薬草園。そして四階建てで石造りの丸い塔が私の城だ。

 一階は、工房と休憩スペース。二階には、マーサおばあちゃんから受け継いだ、魔導書他大量の書籍を収納した図書室。三階と四階は寝泊まり可能な部屋を作った。そして地下を倉庫にして、此処にもマーサおばあちゃんが長年収集した素材や作った魔道具を収納してある。

 まだ水の魔道具や照明の魔道具を設置しないといけないけど、それはガンツに任せておけばいいかな。



 そして、ここは私達の勉強場所でもある。まだ七歳と八歳だから様々な知識を得るのも大切なのだから。

 そんな私の城と言うべき場所には、フローラお母さまが入り浸っている。勿論、マーサおばあちゃんの魔導書類が目的だ。お陰で、可愛い妹と弟のメルティとルードの遊び場と化している。危ないので、工房には入れていないけどね。


 そうして私やララ達は、知識を得、武術や魔法を磨いていく。このルミエール伯爵領を守るために。



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 あけましておめでとうございます。

 この度、作者著作の「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。

 2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。

 それと「いずれ最強の錬金術師?」の17巻が12月中旬に発売されます。書店で手に取って頂ければ幸いです。


 あとコミック版の「いずれ最強の錬金術師?」8巻が、12月16日より順次発売予定です。



 また、コミック版の「いずれ最強の錬金術師?」1巻~7巻の増刷されます。

 12月中頃には、お近くの書店に並ぶと思いますので手に取って頂ければ幸いです。



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