見えない2人。語らない2人。

惠諳

文字の大きさ
上 下
3 / 5

洋服店

しおりを挟む
その日。少し汗ばむ位の温度の6月。
珍しく雨も降らずの休日。

今日は、一段とお客様が多い。
ここは、お世辞にも安いとは言えない店。
ここまで来るのはかなり珍しい。

その中で、一際記憶に残る男女がいた。
その辺にいる気持ち悪いカップルではない。
男は口を閉じ、女は目を閉じていた。開ける様子は無い。
そして、手を繋いでいた。相手を見る訳でも、話す訳でもない。
ただ、2人で1人の様な感じだ。

服は男の方が選んでいた。
かなりいいセンスをしている。
女の方が、あまり派手なモノは似合わないのを分かっていた。
単色のワンピースだったり、淡い青のロングスカート。
本当に女に似合っているものばかり選ぶ。
相手の事を全て分かっている様に。

しばらくその2人を見ていた。

そして2人は会計をすまし、帰っていった。

本当に愛しあうっていう事は素晴らしい。
しおりを挟む

処理中です...