79 / 180
覚醒編
11話 良心
しおりを挟む紫音は右肘を曲げ、男性の背中に
すこし斜め上から打ち下ろす
男性の背中、背骨の少し左、肩甲骨のすこし下に
ピンポイントでヒットした
その男は、悲鳴も無くその場にうつぶせで崩れ落ち悶絶するのだった・・・
それを確認すると、紫音は、その男に話しかけた
「アバラ骨の11・・・
ん、まぁ、アバラ骨を2本折ったから、無理に動けば
折れたアバラ骨が内蔵に刺さって死ぬよ
僕なら、動かないことをおすすめするね」
そう紫音は、男の左アバラ骨の第11助骨と第12助骨を折ったのだ
アバラ骨は、人間の骨の中でも、比較的折れやすい骨でもある
そして、この2本のアバラ骨は、片側に12本ある、下側の2本である
上から7本の助骨は、背骨と胸骨に繋がっており
一箇所折れたところで、どうにかなる物でもないが
この11・12助骨は一度折れると
支えが無くなり、その骨は内蔵に刺さる恐れがあるのだ
そして、折れた骨は、周りの筋肉が動くごとに、体内を傷つけ激痛を引き起こす
それは、息をするだけで激痛を引き起こすのだ
言葉を発することもできず、動くことも出来ない
そう、死なない程度に動けなくしたのだ。
それは紫音が、もさぼって手に入れた知識の一つでもある
どの角度で、どう力を加えれば、このアバラ骨が折れることは知っていたのだ
知っていれば、出来るものでもないが・・・
今まで実行したこともないが・・・
普通であるなら
良心があるなら
慈悲があるなら
その攻撃に
ブレーキがかかるだろう
が、スイッチがOFFになった今の紫音にそんなものはなかった
そして、その牙は、もう一人の男に向けられた
そして、その男は、現状が把握できずにいた
そのはずである
9歳の子供が、大人の背中に肘打ちをしただけなのだ
それなのに、その大人は崩れ落ち、悶絶するという
信じられない光景を目にしたのだ
そう魔法を使った形跡は感じ取れない
ただの肘打ちに・・・・・
男は頭から血の気が引いてゆく
それは、得体のしれない存在に対峙した感覚である
気づくと、ただの9歳の男の子相手に、無意識に一歩後退していた
男は自分にムチを打つように歯を噛み締める
そして、さほど得意ではない強化魔法を使う
物理防御魔法、そして、速度強化魔法の2つだ
傍から見れば大人げないと言われるだろうが、そんな物は関係ない
すでに、仲間が一人再起不能にされているのだ
仲間が食らったのは、物理的な攻撃である
それはこの子供が魔法を使った形跡が無いので、そうなのだろう
なら物理防御をあげればいい
そして
先程まで子供のすばしっこさに負けていたが
速度強化により、子供のそれを軽く超えたのだ
これで、負けることはないと確信するが
男は、紫音と対峙したまま、その動けずにいた
得体のしれない子供相手だが、強化した自分であるなら
自分の方が強いと頭では分かっていても
それを身体が拒否していた
そのため、踏み出す最初の一歩が出ずにいた。
紫音の目の前の男は、自身に強化魔法をかけた
速度強化の魔法もだ、それは速さ有利の状態だった紫音にとって
嬉しくない魔法であるに違いなかった
数分前の紫音であったなら、かなり追い詰められた状態だっただろう
それは、紫音にとって最後の手段となる魔法を使わざる得ない状態だったろ
だが、今の紫音にとって、そんな事はどうでも良かった
やることは決まっている、この男を戦闘不能にするだけである。
先ほどの男は、背中から不意打ちを食らわした紫音
それは、不意打ちだからこそ、ピンポイントで当てれた攻撃でもある
今は相手の正面に立ち、速度強化までして、此方に全意識を向けている
そんな相手に、急所に攻撃を当てることすら難しいであろう
そう、そんな事は、今の紫音にとって些細な事であった
紫音は全身の力を抜き、男に向け歩きだした
自然体とは言い難い動き
ゆっくりと歩くそのリズムで、ゆっくりと上半身を左右に揺らす
無駄な体重移動そこには、体の中心線など存在しない
男は紫音のその行動に息を呑むが
半身に構えを取り、迎え撃つ
男の間合いに紫音が入るまで、8メートル弱
その数秒が、男には倍以上にも感じられ
とてつもない緊張の中、額には汗が吹き出る。
紫音は、男の間合いに入る寸前
握手をするかのように無造作に右手を男に差し出した。
男は攻撃のタイミングをずらされ
前のめりだった、その重心が後ろ足に乗る
それと同時に、車の向こう側、蘭の居た場所に大きな爆発音が轟いた
それに反応し男は視線を紫音から外した
その時間 0、3秒も無かっただろう。
男の視線が泳いだのを、紫音は見逃さなかった
男に向けて差し出した右手を、そのまま男の腹に当てる
男は、何が起こったか分からないまま
膝を地面に落とし、嘔吐した
突然の吐き気に男は何が起こったのかも分からない
そして紫音の目線の位置まで落ちてきた男の頭を手の甲で軽く叩いた
そして男は、自分に何が起こったかもの分からず意識を失った・・・。
紫音の生まれ持ったスキル、触れたものを揺らすスキル
それは、実用性に欠けたスキルであった
物心付いた時から考えているが、その使い方は皆無であった
いや、有効利用でる方法が皆無といってもいい
その為、紫音がスキルを使えるという事を知っているのは、鈴だけであるし
使えないスキルは、名前すら付けられずにいた
だが生物を殺す事に関しては
これほど適したスキルは数える程しか無いのでは無いだろうか?
相手の頭に触り脳を揺らせばいいのだ
本気で揺らせば、液状化するまで、脳みそを破壊できるのだから
そう紫音は男の腹を触ることで内蔵を少し揺らし、動きを制限させた
それによって嘔吐したことと、膝を落とした事は想定外であったが
男の頭が手の届く位置に来たのは、喜ばしい事であった
そして軽く頭を叩き脳を揺らし男は動きを止めた
人間相手に使うのは初めてであったが
犬相手に数度試した事のある、軽い脳震盪を起こす技であった
なぜ最初の男に、このスキルを使わなかったのか?
理由は数個あるが、最大の理由は、人間相手に使ったことが無いからである
脳を揺らすのだ、その為、最悪死なないまでも
今後何らかの後遺症が出る事を視野に入れていたからだ
そう考えると、この技より、アバラ骨を折った方が
比較的、軽傷であるし
そもそも、立っている大人相手に
頭に触れる事は、さすがに難しかった。
膝を地に付けた男は意識の無いまま、一度横に倒れると仰向けに転がった
決着の時、倒れた男の姿を後に紫音は、鈴の居る車に体を向けた
「ゲホッ・・・ゴホ・・・・・」
意識の無い男の苦しそうな咳・・・・そして紫音は足を止めた
少し頭を右に傾け、右手で頭を2度3度かき、男に振り向く
「しくった・・・加減みすったかな・・・・」
紫音は男に近寄り、男の体を、少しうつ伏せ気味に、横に向け
背中を軽くたたく
男は少し、嘔吐すると、先程よりは楽そうに息をしだした
「息道(きどう)確保・・・と・・・」
そう、意識が無い仰向け状態では
嘔吐物が喉に貯まると呼吸困難で死ぬおそれがあったのだ
死なない程度に行動不能にするつもりの紫音
相手を殺すわけにはいかない
それは、幼き時に蘭(母親)に言われた大切な約束事・・・・
紫音は・・・生き物や・人間を、殺したら、いけないという事が理解できない
人間は生きるために、動物を殺しているではないか?
食卓にあがる、多くの肉や、魚、これは動物や生物にほかならない
生きるため、食べるために、何処かで誰かが殺しているのだ
食べる為なら、殺しは許されるのか?
食欲と言う快楽の為なら許される殺しなら
殺人という快楽の殺しも許されるべきだ
戦争と言う大量殺人も法によって許されている
そして、ある種の正当防衛によっての殺人も
3000年も昔には、刀を持つ侍と言う権力を持つ人種は
権力を持たない人間を、無意味に無差別に殺すことを許されていた時代もある
時代によって代わる殺人の正当化、法律の改正
歴史を紐解けば、歴史上最大の大量殺人を起こした人物
過去日本広島における原爆の死者数、約14万人
この原爆を投下した人物は、法の元その罪は無いのだ
それを、今更、人殺しはダメ・動物を殺してはダメ
だと言われても、紫音は、納得いかないのである
いや紫音も、親しい人物の死は、悲しい
両親や鈴・友達が、死んだなら、涙を流して悲しむかもしれない
そして、それが事故や、病気ではなく、意図的な殺害ならば
紫音は必ず、その報復をするだろう
だが、その事と、人間や生き物を殺してはいけない事が
紫音の中で結びつくことはない
普段入っている、スイッチは、そんな紫音の感情を押さえ込む
蘭(母親)が植え付けた
【良心】と言うスイッチに他ならなかった・・・
だが元々【良心】など持ち合わさない蘭では
紫音に対し本物の【良心】など植え付けれはしない・・・
上辺だけの仮初の【良心】などでは
紫音と言う【変態】を檻に閉じ込める事など出来はしなかった
そう、紫音は全てを理解した上で
自分にスイッチを設けていた
だが、家族に危機が及ぶなら
躊躇なく【良心】と呼ばれるスイッチを切ったのだった
それでも、殺さない配慮だけは忘れずに・・・。
紫音は鈴の待つ、車に近づき軽く助手席の窓を、ノックした
車の中から蘭を見守っていた鈴は、それに気づき振り向くと
そこにいた紫音の姿を確認し
外に居た男達を紫音が、処理した事を理解する
まるで、それが当たり前かのように、再び蘭に視線を移した
そして紫音も、視線に蘭の姿をいれると
蘭に向けて、その足を進めるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる