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覚醒編
50話 それからの双子
しおりを挟む3月31日午前6時
新潟県のある漁港の近くにある、お食事亭【鈴蘭 (すずらん)】
ガラガラガラ
少女は、お店のドアを開けて中に入っていく
「おはようございま~す」
「おう」
「鈴ちゃん、おはよ~」
「おはよ~今日も早いねぇ~」
「みなさん、今日もよろしくおねがいしますー
奥で着替えてきます~」
********
それは約1月前の、とある出来事の後
3月一杯、学校を休む事となった鈴は
交換条件として紫音にある、お願いを申し出る
それは、魚料理の勉強の為、新潟県の漁港に、魚の買い出しに行く事
リルの空間転移の話を聞き、昔行った事のある、魚市に行きたいと申し出た
それくらいはと、紫音もすぐ承諾し
次の朝には、魚市を、鈴と紫音は、活気ある魚市を歩き周りこととなった
新鮮な、魚達に、鈴の瞳は輝きを増し
あれや、これやと、品定めし気に入った魚を何匹か買い込んだ
そして、地元の漁師と思われる人間に、有ることを訪ねていく
それは「この近くで、魚料理のおいしい店を教えてくっださい」と
そして、多くの漁師さんが薦めてくれた、3店舗を、2人は食べ歩くが
2人は、お店をでると毎回の用に、ため息をはく・・・・
どの店も、雑誌等で名前が載る、有名なお店であり
その、どのお店の料理も、きっと美味しいのだろうが
2人の求める味ではなかったのだ
そして、諦めかけたが、最後に、もう一件だけと、あるお店に足をむける
そこは、ある漁師さんがすすめた、古くからある店
だが、そこの大将は、漁師でもあり、いい料理を格安で提供するとの事
それより、鈴が引かれたのは、その店の名前である
【鈴蘭】そう、すずらん
その名前には、鈴の文字と、鈴の母の名前である蘭の文字が使われていたのだ
漁港からは、すこし離れた場所にあるため、たどり着いたのは
お昼時をすぎ、2時に差し掛かろうとしていた
そして、店の前に行くと、ちょうど暖簾 (のれん)を外す所であった
年の頃は50過ぎだろうか、割烹着姿の女性に声をかける
「すいません、もう終わりでしょうか?」
「お客が、途切れたんで、少し早いけど
暖簾を下ろそうかと、思ったんだけど?お客さんかい?」
「はい!おいしい店さがして、食べ歩きしてるのですが・・・
できれば何か、お願いしたいんですが・・ダメでしょうか?」
「ん?お父さんか、お母さんは?」
「・・・子供2人ではだめですか?」
「いや、ダメじゃないが・・・・・ちょっとまちな、旦那に聞いてみる」
そして、割烹着姿の、気さくなおばさんは、下ろした暖簾と共に店の中に入っていく
そして、十数秒立ち店の扉が開き、入ってくるように促される
「こんにちは、おじゃまします」
「こんちは~」
「はい、いらっしゃい、うちの旦那が、いいってさ、好きな所に座んな」
そこは、外見と同じで、古い食堂である
古い使い込んだ机に、椅子、そして、カウンター席を合わせても
全部で30席にも満たない、小さな食堂であった
そして、鈴は迷わず、カウンター席を選び
この店の料理人であろう大将の前に座った
「ん、嬢ちゃん、何にするんだ?」
包丁の手入れをしていた、60歳は過ぎているだろうが
現役の漁師らしく、体格のいい男は、無愛想に聞いてくる
それに、鈴は、怯むことなく、笑顔で応える
「魚料理を、できれば、おいしいお刺身を、2人前、お願いできますか?」
その言葉に、カチンとくる大将
「ん?ここは、魚料理しか置いてねえ
ワシは、おいしい料理しか出さねえ」
そういい、大将は店の奥に、入っていった
その行動に、鈴は、驚き紫音の顔を見る
「あぁ、紫音どうしよう・・・・・怒らせたかな・・・・・・・」
「俺は何も言ってない、お前が悪いんだろ」
そこに、先ほどの、おばさんがやって来て
「ハッハッハ 気にしなさんな、店の奥の生簀に魚を取りに行っただけだから」
その言葉を聞き、ホッと胸をなで下ろす鈴
「2人は、どこから来たのかい?」
静岡からとも言えず、口ごもる鈴、そこへ紫音が
「最近この近くの祖母の家に、ご厄介になる事になりまして
妹が料理が好きなので
せっかくだからと朝から魚市をまわっていたんですよ」
「そうなのかい、料理好きなのかい、えらいねぇ
家の娘たちにも、見習わせたいくらいだねぇ
なら、そっちが、お兄ちゃんなのかい?」
「お兄ちゃんというか、双子の兄なんです」
「そうかい、そうかい、それにしては、にてないねぇ」
性格の明るい、おばさんと、鈴が話していると
奥から一匹の、生きた真鯛の尻尾を握り締めた、大将が戻ってくる
その真鯛に、おばさんと話していた、鈴の口が止まる
そして、カウンターを挟んで、大将がまな板の上に真鯛を寝かすと
鈴が、焦ったように口にする
「すいません、失礼ですが、椅子の上に立っても良いですか?」
そして返事も待たず、靴を脱ぎすて椅子の上に立ち
カウンターの上から、まな板を覗き込む
そんな、姿の少女に、大将と、女将さんはびっくりしていた
「もうしわけないです、鈴が・・・あ、妹が大将が魚を捌く所が見たいらしくて
こうなったら、なかなか動かないんで、気にせずに、料理してください」
あきらめてくださいと、言わないばかりに、紫音が再度断りを言う
無愛想な大将は、一度眉をしかめるが、料理を始めた
包丁の背で、真鯛の頭を軽く叩くと
先程まで動いていた真鯛は動きを止める
一撃で急所を叩き、気絶させた職人ならではの技
それに驚き「おおおおおおおおおお」と鈴は声を上げる
そして、早業で真鯛を三枚に下ろし、綺麗な切り身を取り分ける
そんな、大将の動きを、一部も見逃さないように目に焼き付ける鈴
それを不思議そうに、見守る、女将さん
そして1分も経たない間に、紫音と鈴の前に
不格好なお皿と共に、真鯛の刺身が差し出された
2人は、それを刺身醤油にもつけず、一口ぱくりと食べる
「ん~~~~~~~~~おいしい~~」
今日一番の鈴の叫び
紫音は、先程もだが、お店に他の客がいないことにホッとする
だが、鈴が叫びたくなるのも、わかるほど、その刺身は美味しかったのだ
先程まで、生きていたのだ、ぷりぷりで美味しいのは分かっている
だが、それだけではない
先程回った店でも、食べた刺身は生簀から引き上げた魚だったはずだ
それと、比べ物にならないほど、おしいかったのだ
紫音ですら認めた味、それは、現時点の鈴の腕を超えていた
そして大将は腕を組み、鈴の叫びに、ドヤ顔になっていた
そして、刺身を食べ終わる頃に、大将から差し出されたのは
真鯛の切り身をのせた、出汁茶漬けであり、それも鈴が唸るほど美味しかったのだ
絶賛する、鈴に、照れくさそうに、後ろを向き
此方に背を向けた大将は、片付けを始める
満足した2人は、席を立ち、値段を女将さんに聞くと
女将さんは、大将に視線を送る
そして・・・・
「今日の余り物で、出したような賄い飯に金など取れるか」
くすくすと、笑いながら、女将さんが
「だってさ、かわいい女の子に褒められて、かなり嬉しかったらしいね」
「それは、だめです、食材、そして、関わった人間、それを料理した人間に対して失礼になります
多少でも構いません、払わしてください」
頭を下げる、鈴
それを見た女将さんは、すこし嬉しそうに、複雑な気持ちで
「なら、1人1000円、2人で2000円いただこうかしら?」
「はい、そして、お2人に、お願いがあります
ここで働かしてもらえませんか?学校がありますので3月一杯に成りますが
師匠の料理を教えてもらえませんか?」
椅子からおり、頭を下げる鈴
びっくりして、女将さんは鈴に問いかける
「お嬢ちゃん、いきなり、どうしたの?」
「魚料理を覚えたいんです、おいしい料理を作りたいんです」
頭を下げたまま答える鈴
戸惑う2人は、視線を合わせ困惑する
紫音は、気にもしない
「お嬢ちゃん、小学生を働かすわけにはいかないよ
それに、親御さんが、承知しないと思うよ」
「それでも・・お願いします」
大将と女将さんは、こそこそと話し合い出す
それはそうだ、年端もいかない少女を雇うなんて
それ以上に、料理が好きだといっても、所詮小さい子の、おままごとだと
バカにはしないが、そんなレベルの子供を相手には出来ないと言う感じで
2人は、視線を合わせ、断ろうと意志を通じ合わす
そこに紫音が助け船をだした
「両親の事なら大丈夫ですよ、聞かなくてもOKだすのは解りきってますから
俺からも、お願いします、こう見えても、それなりに料理できますから
鈴、さっき買った魚を2人の前で料理して
自分の腕で2人を納得させてみろ」
鈴は頷くと
料理場を借りる承諾を得て、先程買った、メバルをまな板に並べ
小学校の入学祝いに蘭に買ってもらった自前の包丁を取り出し
刺身と、軽い塩焼きを作り上げ
大将、女将、紫音に差し出した
それには、さすがの2人は驚く
鈴が荷物から取り出したのは、布製の巻物上の物
それを開くと、数本の包丁がそこに有り
その包丁が長年使い込まれている事は見ただけで大将は理解できた
そして、その包丁さばきと、魚を下ろしていく手際は大将の想像を超えていた
そこいらの料理人より腕がいいと、理解したのだ
だが、年端もいかない、この少女が、此処までの技術を体得するのに
どれだけの苦労をしてきたのか、想像すらできなかった
そして、出された料理を、黙々と食べる
「お嬢ちゃん、おいしいよ、料理うまいじゃないか?」
「うん・・・うまい」
2人が鈴を褒める中
「大将さんの料理と比べると、70点・・いや60点くらいか?」
その言葉に「だよね・・・・」と納得する鈴
「これだけ料理がうまいのに?60点?」
女将さんの言葉に
「あぁ・・・うん、大将の料理を食べる前なら
何時もの台所ではない事を考慮しても90点くらいだろが
大将の料理を食べてしまったからには60点
素材の良いところを、その味を120%引き出せる
大将の腕と比べると、どうしても見劣りするんだよね
それは、なんだ?・・・包丁の違い?刃の入れ方か?、その速度か・・・
その詳細は、俺には分からないけど
長年培った技術に裏付けされた技なんだろうな・・・と」
そういい、紫音は大将の顔をみあげた
そして、大将が言葉少なく口を開く
「朝6時から仕込み、1度でも嫌な顔をしたら、叩き出す」
「ありがとうございます」
そして鈴は、深々と頭を下げる
それを嬉しそうにみる女将さんは、鈴に声をかけた
「よかったね、お嬢ちゃん」
「ありがとうございます、私は三千風鈴です
こっちは、双子の兄、紫音、それで、母の名前が蘭といいます
私が、リン、鈴 (すず)の文字です、母が蘭
合わして鈴蘭なので、ここの名前が大好きです、それもあって、ここを訪ねました」
そして、次の日から
鈴はここで手伝いをしながら
大将に付いて修行を始める事になったのだった。
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