幸運の歌姫

歩楽 (ホラ)

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第1章・聖騎士

冒険者ギルド

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・・・・・・・・。



 幸せな夢を見た気がする・・・

すてきな聖騎士様と旅をして・・・

いっぱいいる人の中で、あの人から受け継いだ歌をうたって・・・

みんなが喜ぶ夢を・・・・。



 目が覚める・・・・

知らない天井・・・・・・

どうでもいいや、二度寝したら、夢の続きが見れるかも・・・・

目をつぶり、布団を頭から被る!


 
「ちょっと、あ3なにやってるの!
 酒場の奥さんと約束したでしょ
 さっさと起きて、朝食食べにいくわよ!」

 僕は、布団から顔の半分を出し
金髪の綺麗な人を見つめて。

「それ、夢だから、僕の歌が喜ばれるわけないし
 もう一回寝て、夢の続きみるんだ!
 邪魔しないで、シャル!」


 そして、また布団を頭からかぶる・・・

 ん・・・・?

 布団から飛び起き、目の前の女性に驚く

「シャル・・・?なんで?
 夢?しゃないの?」

 呆れ顔のシャル。

「何を夢だと思ってるのか知らないけど
 昨日酒場で、歌を歌って
 皆を感動させて、褒められて
 酒場の奥さんと、朝ごはんを一緒に食べる約束をしたのは
 現実にあったことよ!」

「え?・・・・シャルも本物?」

「ホントに・・・この子は
 私の事まで、夢だったと?
 そう・・・
 なら、私と言う物を、その魂に刻んであげる
 その目を覚まさしてやるからね!!」

 シャルは、あ3の布団に飛び込み
僕の脇腹をくすぐるのだ。

 もう笑った、久々に笑った気がした・・・
僕も、くすぐり返してやった!

 シャルも笑ってた、疲れきって
2人ベットの上で、倒れ込んで
無意味に笑った!
 
 そして

「も~~奥さん待ってるから、用意していくわよ!」と

 何か照れくさそうなシャルは、笑いながら言う。

 僕も照れくさそうに返事をして
ベットから出て、準備を始めるのだった。




 あぁ・・・・夢じゃなかったんだ・・・・・

 シャルが、側にいる・・・・夢じゃないんだ・・・



 心に暖かさが湧いてくる。

心地よい感覚を胸に抱き、酒場に急ぐのだった。


 僕達は、宿屋を引き払い、酒場に着くと
すでに、僕とシャル、亭主と奥さんの4人分の朝食が用意されていた。

 朝食を食べながら、僕の歌を褒められる
聞いたことのない歌、聞いたことのない楽器
素晴らしかったと。

 そして、すこし買い物をして
王都に向かって出発すると伝えると
出来れば、もう一日、この街に滞在しないかと
今晩もう一回、歌ってくれないかと、勧められた。

 僕は少し考える・・暇もなく。

 シャルは、僕を無視して引き受けるのだった。

 うん、そんな気がしていた・・・。

 シャルは、ついでに、お昼ご飯も亭主にお願いする始末だし

 まぁ・・・急ぐ旅でもないし・・・

 僕も、皆の楽しそうな顔は嬉しいから・・・納得した。

 


 シャルと今日の予定を話し合う
 今日は、朝からこの町を観光するのことにしたと言っていたけど・・・・

きっと、洋服店を見つけて、僕の服を買うつもりだ
そんな話を昨日、奥さんとしていたし
朝食を食べていた時、服屋の話をしていたから・・・

 僕はこの服で十分だし
だいたい、お金もあまりない・・。

 食事も終え、一旦奥さんに別れを告げると
僕達は観光気分で、軽く街を見て回る
大通りに沿っていくと、最初の目的地である
【冒険者ギルド】があった。

 ギルドの看板を見つけると
シャルは色々と確認する為と言って入っていく。

 僕は、ギルド登録してまだ数日
もともと、人と話すのさえ緊張するのだ。

 朝一の混み合う時間は過ぎたけど
まだ、ギルドには多くの人影があった。

 恐る恐る、シャルの影に隠れるように付いて行く・・・・
入るのは怖い、だけど、ここに一人取り残されるのは、それ以上に怖い・・・。


 身長の低い僕は、シャルの後ろで目立たないようにおとなしくしていた。

 だけど、シャルは、人の少なくなったギルドの受付を見つけると
「ちょっと行ってくる」と、一人で受付に足を向けた。

 シャルは、少し話し込んでいるみたいだった
その間僕は、クエストが張り出された掲示板を眺める。

 レベル1の僕が出来る、クエストなんて、無いのだけど
すこし興味が、沸いただけなんだ・・・・。



 いきなり、突き飛ばされた。



 シャルより大きい男の冒険者
背中には、大きな両手斧を担いでいた

40歳くらいの、筋肉の塊
どう見ても、高ランクの前衛だった。

 突き飛ばされ、床に尻餅をつく僕を
見下ろしながら

「獣人のゴミが、ジャマだろうが!
  チョロチョロするなら、踏み潰すぞ!!!!」

 圧倒的な威圧
腰が引け、立つこともままならない。
 
「す・・・すすすすs・・・・・」

 おどおどした僕の態度に、イラつく筋肉

「これだから、獣人は
 おとなしく、奴隷にでもなってればいいものを
 いや、ここに居ると言うことは
 お前も冒険者だな
 なら・・・今ココで殺されても、文句を言わないだろうな」

 その言葉に、あ3は震え上がり。

 筋肉の塊は、背中の両手斧にその右手をかけるのだった。
 
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