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大学の噂
しおりを挟むピコンッ
ピコンッ
「大森みゆから新着メッセージがあります」
諸々の処理やいろいろなモノを整理するのに疲れて寝込んでいた私はその通知音で目を覚ました。
私の身内が死んだと知っている友達、大森みゆは昔からよく私の家に遊びに来ていただけあって、両親や弟が死んだと伝えた時は私より泣いていた。
現在時刻は夜中の1時、彼女がこんな時間にメッセージを送ってくることなんて普段はあり得ない。だからこそ、その内容が気になった私は即座にそのメッセージを開き、既読を付ける。
「ねね、ひなちゃん起きてる?」
「いい話があるんだけど」
こんな最悪な気分の今、いい話だと思えることなんて無い。でも私がそう思うことを彼女は分かっているはずなのになんでこんなことを送ってきたんだろう。私はなぜかこの状況でそのいい話の内容が気になってしまった。
「起きてるよ、なに?」
「よかった、今から大学に行こう?」
「……は?」
こればっかりは本当に何を言っているのかわからない。この時間に大学なんて開いてないと思うし、わざわざなんで大学に行く必要があるのかも分からない。
ピコンッ
「大森みゆから新着メッセージがあります」
このままメッセージでやりとりしても何も分からないと思った私は、みゆに電話をかける。
Prrrrr......
「は~い、もしもしひなちゃん?」
「あの、こんな時間になんで大学?」
「あ~そうそう。私達の通う大学にはね、一つ噂があるの」
「噂??」
「そう!深夜の三時に食堂前にある大きな鏡を合わせ鏡にすると自分の願いが叶った後の世界に行けるんだって」
この大学にもう三年通うけどそんな噂、一度も耳にしなかった。でもみゆの話す声のトーンはふざけてるようにも聞こえない。本気でそれを信じて話している声だ。
「そんな話信じれないけど……」
「でもね、この大学では行方不明者が五人くらい出てるの。大学が上手にもみ消してるけど、私知ってるの」
「ねえ、いこ?」
泣きそうな声で私を誘う。そう、みゆがなにを叶えたいか私には分かった気がした。どうせやることもないんだ、みゆの話に乗ってあげるのも悪くないかもしれない。
「いいよ。大学前に集合ね」
そう言って私は電話を切り、出掛ける準備を始めた。
夏とは言え、夜は寒い。軽く羽織れるモノと携帯、懐中電灯と鏡。さっきまで雨が降っていたから折りたたみ傘も鞄に詰め込み、準備は終わり。私はさっさと家を出発し、大学前に向かった。
水たまりの水を蹴り飛ばし、誰も居ない静かな夜道を駆け抜ける。これが世に言う空元気と言う奴なんだろう、本当は走るような元気なんて無い。走って気を紛らわしてるだけ。たってそれだけでも多少の気持ちは違う。
そんなことを考えてるうちにあっという間に大学前に到着し、みゆを待つことになった。みゆを待っている間も家族のことはできるだけ考えないようにし、彼女が早く来ないかなと考えていた。
そうやって待っていると時間が経つのは本当に遅く感じ、一分が中々進んでくれない。体感時間の10分が実際時間の5分くらい。
それから彼女が待ち合わせ場所にやってきたのは体感時間30分後くらいだった。
「おまたせ、ひなちゃん」
「待ったよ、みゆ」
「じゃあいこうか、噂では大学の鍵は開いてるんだって」
こうして私達の忘れられない夜遊びが始まった――
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