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社会人10年目の母と小学校高学年の娘
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1993年、とある日曜日の午後。
カラフルなビーズが散乱したリビングで、美咲は母親の洋服ダンスを漁っていた。小学校高学年になり、手先が器用になった美咲は、家庭科の授業で使う小物入れの装飾に凝っていた。探しているのは、光沢のあるサテンリボン。できれば、少し幅広で、つやつやとした質感のものがいい。
「リボン?そんなの、とっくに使ってないわよ」
ソファで新聞を広げていた母の声は、まるで遠い国の言葉のようだった。社会人10年目の母の服は、どれもシンプルで上質だ。肩パッドが入ったかっちりとしたジャケット、ウエストを絞った膝丈のタイトスカート。フリルやリボンがついた服は、もう何年も前から姿を消していた。
それでも美咲は諦めきれず、ダンスの奥に押し込められた大きな箱に手を伸ばした。埃をかぶった段ボール箱を開けると、ふわりと古い香水の匂いがした。美咲が初めて嗅ぐ、甘くて少し懐かしい匂い。箱の中には、何着ものワンピースやブラウスが、丁寧に畳まれて眠っていた。
美咲の目が釘付けになったのは、淡いピンク色のブラウスだった。胸元には幾重にも重なったフリルが施され、袖口にも小さなリボンがあしらわれている。フリルの端は、まるで繊細なレースのように波打っていて、指でなぞると少しざらりとした感触がした。リボンはほどよい硬さがあり、結び目がふっくらとしていた。
「これ、お母さんの?」
美咲はブラウスを胸に抱きしめ、ソファの母に尋ねた。母は新聞から目を上げ、そのブラウスを見ると、少しだけ遠い目をした。
「ああ、懐かしいわね。美咲が生まれる前に、初めてボーナスで買ったのよ」
美咲は、ブラウスを鏡の前で体に当ててみた。フリルが顔まわりを華やかに飾り、まるで自分がお姫様になったみたいに思えた。裾は少し短いが、今の美咲にはちょうどいい丈だった。
「これ、着てみたい」
美咲の小さな声に、母は立ち上がり、ブラウスを手に取った。
「そうね、たまにはいいかもね」
母は優しく微笑みながら、美咲の着替えを手伝ってくれた。ブラウスの滑らかな肌触りや、肩のあたりに感じる柔らかい感触。それは、母の仕事や日々の生活を支えてきた、確かなものの質感だった。
着替えた美咲は、くるくるとその場で回ってみせた。ひらひらと揺れるフリルと、ふわりと広がるスカート。母は目を細めて美咲の姿を見つめた。
「ちょっと待って」
母はそう言って、再び段ボール箱から、もう一枚のブラウスに付いていたリボンを取り外した。それは深みのある赤色で、美咲が探していた光沢のあるサテンリボンだった。母は美咲を椅子に座らせると、櫛で丁寧に髪を梳かし、器用にリボンを結んでくれた。
「ほら、お似合いよ」
鏡に映った自分を見て、美咲は思わず声を上げた。リボンは、まるで小さな宝石のように美咲の髪の上で輝いていた。
フリルとリボン。それは、時代遅れになってしまったけれど、母の思い出と、美咲の新しいときめきが詰まった、かけがえのない宝物になった。
カラフルなビーズが散乱したリビングで、美咲は母親の洋服ダンスを漁っていた。小学校高学年になり、手先が器用になった美咲は、家庭科の授業で使う小物入れの装飾に凝っていた。探しているのは、光沢のあるサテンリボン。できれば、少し幅広で、つやつやとした質感のものがいい。
「リボン?そんなの、とっくに使ってないわよ」
ソファで新聞を広げていた母の声は、まるで遠い国の言葉のようだった。社会人10年目の母の服は、どれもシンプルで上質だ。肩パッドが入ったかっちりとしたジャケット、ウエストを絞った膝丈のタイトスカート。フリルやリボンがついた服は、もう何年も前から姿を消していた。
それでも美咲は諦めきれず、ダンスの奥に押し込められた大きな箱に手を伸ばした。埃をかぶった段ボール箱を開けると、ふわりと古い香水の匂いがした。美咲が初めて嗅ぐ、甘くて少し懐かしい匂い。箱の中には、何着ものワンピースやブラウスが、丁寧に畳まれて眠っていた。
美咲の目が釘付けになったのは、淡いピンク色のブラウスだった。胸元には幾重にも重なったフリルが施され、袖口にも小さなリボンがあしらわれている。フリルの端は、まるで繊細なレースのように波打っていて、指でなぞると少しざらりとした感触がした。リボンはほどよい硬さがあり、結び目がふっくらとしていた。
「これ、お母さんの?」
美咲はブラウスを胸に抱きしめ、ソファの母に尋ねた。母は新聞から目を上げ、そのブラウスを見ると、少しだけ遠い目をした。
「ああ、懐かしいわね。美咲が生まれる前に、初めてボーナスで買ったのよ」
美咲は、ブラウスを鏡の前で体に当ててみた。フリルが顔まわりを華やかに飾り、まるで自分がお姫様になったみたいに思えた。裾は少し短いが、今の美咲にはちょうどいい丈だった。
「これ、着てみたい」
美咲の小さな声に、母は立ち上がり、ブラウスを手に取った。
「そうね、たまにはいいかもね」
母は優しく微笑みながら、美咲の着替えを手伝ってくれた。ブラウスの滑らかな肌触りや、肩のあたりに感じる柔らかい感触。それは、母の仕事や日々の生活を支えてきた、確かなものの質感だった。
着替えた美咲は、くるくるとその場で回ってみせた。ひらひらと揺れるフリルと、ふわりと広がるスカート。母は目を細めて美咲の姿を見つめた。
「ちょっと待って」
母はそう言って、再び段ボール箱から、もう一枚のブラウスに付いていたリボンを取り外した。それは深みのある赤色で、美咲が探していた光沢のあるサテンリボンだった。母は美咲を椅子に座らせると、櫛で丁寧に髪を梳かし、器用にリボンを結んでくれた。
「ほら、お似合いよ」
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