AI実験 ある男性との関係

メカジキ

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社会人13年目の魅力的な先生との素敵な日常風景

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 1993年の春。
 午後の光がレース越しに差し込む六畳の和室で、私は彼女の手元を見つめていた。畳の上に広げられた白地の布の端には、小さなフリルと淡い桜色のリボンがあしらわれている。

 「……先生、また縫い目が曲がってしまったよ」
 私が弱音を吐くと、彼女はふっと微笑み、針を持った手を休めた。
 「大丈夫。糸の迷いも、あなたの気持ちを映すのです」
 声は柔らかく、けれど芯の通った響きがあった。十三年の社会人経験を重ね、幾度も人に寄り添い、導いてきた人の声。私はその響きに、ただ深く息を整えるしかなかった。
 彼女は三十代半ば。艶やかな黒髪を肩でまとめ、控えめなアイボリーのブラウスに、フリル付きのエプロンを重ねている。その姿は、私が若き日に胸に描いた「大和撫子」の理想を、そのまま現実に具現化したようだった。
 「手を貸してください」
 彼女はそう言って、私の指先をそっと導いた。針の運びに合わせて、桜色の糸が布地を渡る。
 指先が触れ合う一瞬に、私は危うく言葉を失いそうになった。だがすぐに己を律し、心を静める。彼女もまた、その一線を越えぬことを知っている。
 ――この関係は、ただの習い事の先生と生徒。
 けれど心の奥では、もっと危うい感情が芽吹いていることを、互いに否定できなかった。

 「今日は、これで完成です」
 彼女は布を広げ、丁寧に形を整えた。桜色のリボンが光を受け、柔らかな艶を帯びる。
 「綺麗だな……」
 思わず漏れた私の言葉に、彼女は少しだけ視線を逸らし、照れたように微笑んだ。
 「あなたが一針ごとに込めた思いが、形になったのです。布は裏切りません」
 私は頷きながら、その布越しに彼女の横顔を見た。整った輪郭、穏やかな眉。まるで春の陽射しが、そのまま彼女の中に宿っているかのようだ。
 外からは、小鳥のさえずりと、近所の子どもたちの笑い声が届く。日常の音が、静かな幸福を縁取るように広がっていた。
 「先生」
 気づけば、私は口を開いていた。
 「もし、私がもっと若ければ……」
 そこまで言いかけて、言葉を飲み込む。彼女はただ、静かにこちらを見ていた。
 長いまつ毛が影を落とすその瞳には、揺るぎない決意と、どこか切なさが宿っていた。
 「――若さは関係ありません」
 彼女の声は、静かでありながら強かった。
 「人は、いまの自分でしか、生きられませんから」
 私は深く息を吐いた。春の空気が、少し熱を帯びて胸を満たす。

 その後も、私たちは何事もなかったかのように針を進めた。
 だが、沈黙のあいだに交わされる心の声は、言葉以上に雄弁だった。
 夕暮れが近づき、畳に差し込む光が金色を帯びる。
 彼女は布を畳み、そっと私に差し出した。
 「これは、今日の記念に」
 受け取った布は、温もりを帯びていた。そこには彼女の息遣いと、心の鼓動が確かに刻まれている。
 「ありがとう」
 短い言葉しか出てこなかった。
 彼女は微笑み、軽く頭を下げた。その姿は、まさに大和撫子の極み。しなやかさと凛々しさ、そして清らかな誇りを宿した女性。

 帰り道、煉瓦敷きの小道を歩きながら、私は手にした布を見つめた。
 春風が頬を撫で、リボンがそよいだ。
 ――この想いは、決して口にしてはならない。
 だが、否定しきれぬ感情があるからこそ、今日という日が、これほどまでに輝いているのだ。
 日常の延長線上に差し込む、ほんのわずかな非日常。
 それこそが、私にとっての救いであり、贅沢であり、そして崇高な営みだった。
 私は布を胸に抱き、静かに歩を進めた。
 彼女の笑顔を思い浮かべながら。

(了)
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