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消えた靴と学園の謎
その37
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「ああ、本田先生と及川先生。彼女達がお二人にお話しがあるらしいとのことなので連れて来ました。何でも靴の事件で重要な証拠を見つけたとか?」
「ええ、その通りです」
レイの隣には二年G組の担任である横山が立っており来訪の理由を告げる。それを受けてレイは快活に答え、更にその横いた女子生徒が頷く。彼女は靴事件の被害者の一人で、先程ユウジがその胸の大きさを思い出していた女子バレー部に所属する安中マユミだった。レイはこの二人を引き連れて生活指導室に乗り込んで来たのである。
「重要な証拠? 君、さっきは・・・」
「ええ、今から順を追って説明します! 中に入っても?」
突然の展開に逡巡する本田にレイは隙を与えることなく入室を願う。彼からすればほんの一時間前にユウジを靴事件の犯人と信じて泣き崩れていた少女が、まるでそんなことは遠い昔の出来事とばかりに涼しい顔をしているのである。驚くのも無理もなかった。
「ああ・・・とりあえず、椅子を出そう」
「私も二人・・・正確には麻峰から証人として同席を頼まれているのですが、よろしいですか?」
「それは・・・ええ、どうぞ」
更に横山が本田に了承を取り付ける。既に時刻は最終下校時間である六時をとうに過ぎて、七時も越えている。この時間、生徒であるレイ達は教師である横山の同伴なくては生活指導室に来られなかったわけだが、このまま彼女も同席することが決まった。
「では、話を・・・重要な証拠と君が判断する件について聞かせて貰おうか?」
レイ達が新たに出された椅子に腰を下ろしたことで本田は話を促した。
「ええ。ですが、その前に本田先生と安中さんにも全ての原因と思われる〝あの事件〟について言及する必要があることをお断りしておきます。よろしいですね?」
「・・・この二人の理解がないと話が進まないということか?」
「そうです。正確には証言を手伝ってくれるのは安中さんで、横山先生は私達の後ろ盾としてこの場に居て貰うつもりです。先生も学園に起きた事件についは薄々気づいていたようですし、秘密にする必要は薄れていると思われます」
「ええ、私もここ数日に渡る学園の違和感には気付いていました」
レイの返答によって本田は横山の顔を窺うが、それに彼女は頷く。
「わかった・・・続けてくれ」
おそらく、レイはユウジが本田達の事情聴取を受けている間に、靴事件の被害者への再聞き込みと担任の横山が事件とは無関係であることを突き止め、協力を要請したに違いない。もっとも、レイが何かしらの形で助けに来るのはユウジにとっては想定内のことだった。
彼の部屋から盗まれた靴が見つかった際には涙を流してまで激昂したレイだが、それが本田を、あるいは及川を含めた両方を油断させるため演技であることは最初から気付いていた。むしろ、レイがあまりに迫真に演じたのでユウジは噴き出しそうになるのを、頭を垂れて隠す必要があったほどだ。
流石に横山を味方にしたことまでは読めなかったが、ユウジ達が僅かな証拠や変化から事件の存在を嗅ぎつけたように〝視る目〟がある者なら、詳細はともかく何かしらの片鱗には気付いたはずである。これほど早く横山がレイの説得に乗ったのも、彼女なりに何らかの違和感を覚えていたのだと思われた。
「ではまず、ここにいる全員に一連の学園を巡る事件について、私なりに導き出した回答を一からお話しましょう! まずは・・・」
本田の許可を得たレイは協力者の横山と安中に視線を送りながら、事件に関する詳細を語り始める。
レイの説明はユウジ達にとって発端となった彼女の靴の盗難事件から始まり、そこから靴を取り戻すために自力での捜査を開始して、学園上層部がひた隠しにしていたデータ漏えい事件の影に気付いたこと。更に時系列的にはデータ漏えい事件が先で、日曜日の深夜から月曜日の早朝にかけて起ったこと。
そして月曜日の早朝、犯人が外部の協力者に盗んだデータを壁から投げ出すことで搬出したこと。その現場を目撃あるいはニアミスをしたことでレイを含む被害者達が犯人から狙われ、特定するために靴の盗難事件が起こったこと。最終的にこの二つの事件は密接に関わり合っており、同一犯の仕業である可能性が高いことを告げた。
「まさか、そこまでとは・・・」
「・・・」
これらは現時点ではレイの推測に過ぎないが、全体像を聞かされたことで横山と安中は自分達が思っていたよりも深刻な事件に巻き込まれていたことを知り、息を飲みながら顔を緊張させる。
「その話しぶりからすると、君は犯人がデータを搬出したとされる場所も割り出したのかね?」
逆に本田は感心したような表情を見せると、より詳しい説明を求めた。
「ええ、私達はテニスコート横の雑木林の周辺だと睨んでいます。先程、外からも確かめましたが、この地点だと壁がカーブを描いているので侵入者を監視するカメラの死角となっているはずです。学園の内側からも見通しが効かず、犯人にとっては最良の場所だったと思われます。まあ、先述の通り、犯人にとっては想定外のことが起きたわけですが!」
「本田先生。面白い考察ですが、これらの話は彼女の推測でしかありません。下手に付き合ってしまうと先入観を植えつけられて、我々の判断が歪む可能性があります。もうこの辺りでよろしいのでは?」
レイが搬出場所とその根拠を告げると、これまで黙っていた及川が本田にレイからの証言中止を提案する。
「確かに、推測に過ぎませんが・・・学園のデータベースに対する不正アクセスの時間帯など、本来は知り得ない情報を彼女は言い当てています。無下にする必要はないと思います。もう少し聞いてみましょう」
「し、しかし!」
「ええ、及川先生からすれば、私の推測は不本意かもしれません。何しろ、あなたが二つの事件の犯人なのですから!」
本田に食い下がろうとする及川にレイは衝撃の事実を告げるのだった。
「ええ、その通りです」
レイの隣には二年G組の担任である横山が立っており来訪の理由を告げる。それを受けてレイは快活に答え、更にその横いた女子生徒が頷く。彼女は靴事件の被害者の一人で、先程ユウジがその胸の大きさを思い出していた女子バレー部に所属する安中マユミだった。レイはこの二人を引き連れて生活指導室に乗り込んで来たのである。
「重要な証拠? 君、さっきは・・・」
「ええ、今から順を追って説明します! 中に入っても?」
突然の展開に逡巡する本田にレイは隙を与えることなく入室を願う。彼からすればほんの一時間前にユウジを靴事件の犯人と信じて泣き崩れていた少女が、まるでそんなことは遠い昔の出来事とばかりに涼しい顔をしているのである。驚くのも無理もなかった。
「ああ・・・とりあえず、椅子を出そう」
「私も二人・・・正確には麻峰から証人として同席を頼まれているのですが、よろしいですか?」
「それは・・・ええ、どうぞ」
更に横山が本田に了承を取り付ける。既に時刻は最終下校時間である六時をとうに過ぎて、七時も越えている。この時間、生徒であるレイ達は教師である横山の同伴なくては生活指導室に来られなかったわけだが、このまま彼女も同席することが決まった。
「では、話を・・・重要な証拠と君が判断する件について聞かせて貰おうか?」
レイ達が新たに出された椅子に腰を下ろしたことで本田は話を促した。
「ええ。ですが、その前に本田先生と安中さんにも全ての原因と思われる〝あの事件〟について言及する必要があることをお断りしておきます。よろしいですね?」
「・・・この二人の理解がないと話が進まないということか?」
「そうです。正確には証言を手伝ってくれるのは安中さんで、横山先生は私達の後ろ盾としてこの場に居て貰うつもりです。先生も学園に起きた事件についは薄々気づいていたようですし、秘密にする必要は薄れていると思われます」
「ええ、私もここ数日に渡る学園の違和感には気付いていました」
レイの返答によって本田は横山の顔を窺うが、それに彼女は頷く。
「わかった・・・続けてくれ」
おそらく、レイはユウジが本田達の事情聴取を受けている間に、靴事件の被害者への再聞き込みと担任の横山が事件とは無関係であることを突き止め、協力を要請したに違いない。もっとも、レイが何かしらの形で助けに来るのはユウジにとっては想定内のことだった。
彼の部屋から盗まれた靴が見つかった際には涙を流してまで激昂したレイだが、それが本田を、あるいは及川を含めた両方を油断させるため演技であることは最初から気付いていた。むしろ、レイがあまりに迫真に演じたのでユウジは噴き出しそうになるのを、頭を垂れて隠す必要があったほどだ。
流石に横山を味方にしたことまでは読めなかったが、ユウジ達が僅かな証拠や変化から事件の存在を嗅ぎつけたように〝視る目〟がある者なら、詳細はともかく何かしらの片鱗には気付いたはずである。これほど早く横山がレイの説得に乗ったのも、彼女なりに何らかの違和感を覚えていたのだと思われた。
「ではまず、ここにいる全員に一連の学園を巡る事件について、私なりに導き出した回答を一からお話しましょう! まずは・・・」
本田の許可を得たレイは協力者の横山と安中に視線を送りながら、事件に関する詳細を語り始める。
レイの説明はユウジ達にとって発端となった彼女の靴の盗難事件から始まり、そこから靴を取り戻すために自力での捜査を開始して、学園上層部がひた隠しにしていたデータ漏えい事件の影に気付いたこと。更に時系列的にはデータ漏えい事件が先で、日曜日の深夜から月曜日の早朝にかけて起ったこと。
そして月曜日の早朝、犯人が外部の協力者に盗んだデータを壁から投げ出すことで搬出したこと。その現場を目撃あるいはニアミスをしたことでレイを含む被害者達が犯人から狙われ、特定するために靴の盗難事件が起こったこと。最終的にこの二つの事件は密接に関わり合っており、同一犯の仕業である可能性が高いことを告げた。
「まさか、そこまでとは・・・」
「・・・」
これらは現時点ではレイの推測に過ぎないが、全体像を聞かされたことで横山と安中は自分達が思っていたよりも深刻な事件に巻き込まれていたことを知り、息を飲みながら顔を緊張させる。
「その話しぶりからすると、君は犯人がデータを搬出したとされる場所も割り出したのかね?」
逆に本田は感心したような表情を見せると、より詳しい説明を求めた。
「ええ、私達はテニスコート横の雑木林の周辺だと睨んでいます。先程、外からも確かめましたが、この地点だと壁がカーブを描いているので侵入者を監視するカメラの死角となっているはずです。学園の内側からも見通しが効かず、犯人にとっては最良の場所だったと思われます。まあ、先述の通り、犯人にとっては想定外のことが起きたわけですが!」
「本田先生。面白い考察ですが、これらの話は彼女の推測でしかありません。下手に付き合ってしまうと先入観を植えつけられて、我々の判断が歪む可能性があります。もうこの辺りでよろしいのでは?」
レイが搬出場所とその根拠を告げると、これまで黙っていた及川が本田にレイからの証言中止を提案する。
「確かに、推測に過ぎませんが・・・学園のデータベースに対する不正アクセスの時間帯など、本来は知り得ない情報を彼女は言い当てています。無下にする必要はないと思います。もう少し聞いてみましょう」
「し、しかし!」
「ええ、及川先生からすれば、私の推測は不本意かもしれません。何しろ、あなたが二つの事件の犯人なのですから!」
本田に食い下がろうとする及川にレイは衝撃の事実を告げるのだった。
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