42 / 42
消えた靴と学園の謎
その42
しおりを挟む
「ははは・・・その手は食わないよ! と言いたいところだけど、レイをこのまま騙せるわけがないんで、白状するが・・・俺はアメリカとは無関係だよ」
既にユウジはレイが常識を逸するほどの洞察力を備えていることを熟知している。下手に惚けたり、誤魔化したりするのは、これまで築いた信頼を裏切ることになる。ユウジはアメリカとの関係だけを否定する。
「んん、そこは外したか・・・では国防軍関係者かな? そうすると国防軍もこの計画については無関係だったのかな?」
ユウジの解答に、レイは僅かにがっかりしたような表情を見せるが、直ぐに新たな質問を告げる。
「それは流石に俺の口からは認められない。察して欲しい」
「そうか。じゃ、ユウジの正式な階級は少尉くらいか?」
「だから、はっきり言えないって!」
「ああ、では准尉か。ユウジの実年齢はわからないが、それでも二十歳は越えてないんだろう? スパイの役割として下士官では低いし、流石に十代を少尉には出来ないか!」
「レイ、頼むから勘弁してくれ!」
正解だと認めるにも等しいが、ユウジは次々と言い当てるレイに苦笑しながら告げる。
「もしかして、今も監視されているのか?」
「いや、それはない・・・はずだ。俺もレイとのデートを邪魔されたくなかったからね。少なくても俺の方からは報告していない。そんな余裕もなかったし、でも立場的には明言できないんだ」
「そうか。まあ、電車を乗り継ぐ時に私も注意していたし、この公園を選んだのも私だから監視はなさそうだな」
「ああ。しかし、いつ頃気付いたんだ?」
観念したユウジはレイに自分の正体に気が付いた時期を尋ねる。
「君が転入して自己紹介した頃だから、実は初対面の時だな!」
「まじかよ! 嘘・・・いや、レイがつまらない嘘を吐くはずがないし。自分の不甲斐なさにがっかりだ・・・」
「まあ、仕方がない。私は自分の出生もあって以前からこの学園の秘密には気付いていたからな。いつか、この秘密を共有出来る者が現れるのではないかと待っていたんだ。何しろ、私達の存在は秀才を人工的に造る研究の成功例だ。ちょっかいを掛ける組織や国がしゃしゃり出るのは明白だった。そこに平凡を装う転入生が現れたんだ。もう疑うしかないだろう? 君は目立たないように細心の注意を払っているように感じられた。まあ、軍か、それに準じた組織の者だと確信したのは、私の提案に君が乗ったことかな。ユウジ、君は私との距離を取るのが上手すぎた。近すぎず、遠すぎず。これは私からすれば好ましいことなんだが、可憐な美少女相手にあの立ち回りは冷静過ぎる! 君の身体能力の高さもあって、こんなことは訓練した者にしか出来ないってね!」
「見事な推測だと納得するしかないが・・・例え事実だとしても、自分で可憐な美少女と言うのはどうだろうか? それと、理解者が欲しいなら同じ特待生同士で秘密を共有すれば良かったじゃないか?」
レイと同じクラスになった時点、いや彼女の能力からすれば、クラスや学年が違ってもいずれ目を付けられていただろう。最初から詰んでいたことになる。それでも、ユウジは小さい突っ込みを入れつつ、気になった疑問をレイにぶつける。どうせなら全てを明らかにしたかった。
「いや、それは難しいんだ。ユウジ! 私は気にしないし、君も若くしてスパイに抜擢されるくらいだから、メンタルが強いと思われるが、いくらなんでも『私達、政府の遺伝子実験で生まれた人造人間の一種らしいぞ! 実験体同士これから仲良くしようぜ!』なんて気軽に言えるわけだろう! 下手したら自分の存在に悩んで自殺される危険性があった。他の特待生が独自に気付く可能性もあるが、私からは暗示するのも危険だったんだ!」
「ああ、なるほど・・・」
レイの説明にユウジは納得を示す。レイが呆気らかんとしているので気が回らなかったが、優れた才能を持っているからといって精神面まで頑強とは限らない。自分が実験で生まれた特殊な人間だと知ったら、程度の差はともかく悩むことになるだろう。むしろIQが高い人間ほど鬱になりやすいと任務前にレクチャーされたことを思い出した。
「・・・ところでユウジ、君はこれからどうするのかな? こうして学園の秘密、正確には秘密とされていた情報について当事者の証言を得たことで目的を果たしたんじゃないかな?」
「ああ、確かに軍にもひみ・・・いや、今のは聞かなかったことにしてくれ! た、確かにレイの証言で極秘裏に進められていた遺伝子実験の裏が取れた。だが、俺にはもう一つ任務が課せられていて、そっちはまだ達成していない。とは言え、レイに正体を看破されてしまったからな。存在を知られたスパイ・・・諜報員に居場所はないんだ」
区切りが付いたと判断したレイが話題を変え、ユウジはこれからの行動を示唆する。それは二人の別れを暗示させるものだ。
「うむ。・・・そのことなら、私が胸の内にしまっておくから安心してくれ。学園側も今回の事件は私が主体的になって解決したと思っている。ユウジの正体にはミジンコ程にも気付いていないだろう。彼らからすれば君は私のオマケだ!」
「ははは、オマケはともかく、レイならそう提案してくれると思っていたよ! 学園側に秘密にしてくれるならありがたい! このまま退散したのでは、俺の評価がガタ落ちだからね!」
レイなら他言はしないと確信していたが、ユウジは彼女から望んだ回答を取り付ける。余計な捻くれ口はいつものことだ。
「ふふふ。しかし、それだけなのか? ユウジは軍・・・じゃなかった・・・所属する組織での評価を気にするだけなのか?」
「・・・言わせたいのか?」
「こういうのは、はっきりさせないとな!」
レイはベンチから立ち上がってユウジの正面に立つと、彼の顔を覗き込みながらダメ押しを行なう。
「わかった・・・言うよ。言う! せっかくレイと仲良くなれたのに、このまま別れるのは残念だ!」
「うむ、正直だ! 私としてもやっと見つけた理解者だからな。このまま別れるのは惜しい・・・」
「それって?」
「いや、相棒としてだぞ! それに君のもう一つの目的も知りたいしな!」
「それについては俺の口からは言えない。まあ、レイなら直ぐに勘付くだろう?」
「いやいや、私も万能じゃないよ。これからもう少し時間を掛けて調べさせてもらう。・・・まあ、とりあえず一本どうだい? 相棒君!」
レイは口角を僅かに上げる微かな笑みを浮かべると、チョコレートの箱をユウジに差し出すのだった。
ハードボイルドJK 了
レイとユウジの物語はこれで一先ず終幕です。
続きのプロットはあるので、人気が出たら書くかもしれません。
既にユウジはレイが常識を逸するほどの洞察力を備えていることを熟知している。下手に惚けたり、誤魔化したりするのは、これまで築いた信頼を裏切ることになる。ユウジはアメリカとの関係だけを否定する。
「んん、そこは外したか・・・では国防軍関係者かな? そうすると国防軍もこの計画については無関係だったのかな?」
ユウジの解答に、レイは僅かにがっかりしたような表情を見せるが、直ぐに新たな質問を告げる。
「それは流石に俺の口からは認められない。察して欲しい」
「そうか。じゃ、ユウジの正式な階級は少尉くらいか?」
「だから、はっきり言えないって!」
「ああ、では准尉か。ユウジの実年齢はわからないが、それでも二十歳は越えてないんだろう? スパイの役割として下士官では低いし、流石に十代を少尉には出来ないか!」
「レイ、頼むから勘弁してくれ!」
正解だと認めるにも等しいが、ユウジは次々と言い当てるレイに苦笑しながら告げる。
「もしかして、今も監視されているのか?」
「いや、それはない・・・はずだ。俺もレイとのデートを邪魔されたくなかったからね。少なくても俺の方からは報告していない。そんな余裕もなかったし、でも立場的には明言できないんだ」
「そうか。まあ、電車を乗り継ぐ時に私も注意していたし、この公園を選んだのも私だから監視はなさそうだな」
「ああ。しかし、いつ頃気付いたんだ?」
観念したユウジはレイに自分の正体に気が付いた時期を尋ねる。
「君が転入して自己紹介した頃だから、実は初対面の時だな!」
「まじかよ! 嘘・・・いや、レイがつまらない嘘を吐くはずがないし。自分の不甲斐なさにがっかりだ・・・」
「まあ、仕方がない。私は自分の出生もあって以前からこの学園の秘密には気付いていたからな。いつか、この秘密を共有出来る者が現れるのではないかと待っていたんだ。何しろ、私達の存在は秀才を人工的に造る研究の成功例だ。ちょっかいを掛ける組織や国がしゃしゃり出るのは明白だった。そこに平凡を装う転入生が現れたんだ。もう疑うしかないだろう? 君は目立たないように細心の注意を払っているように感じられた。まあ、軍か、それに準じた組織の者だと確信したのは、私の提案に君が乗ったことかな。ユウジ、君は私との距離を取るのが上手すぎた。近すぎず、遠すぎず。これは私からすれば好ましいことなんだが、可憐な美少女相手にあの立ち回りは冷静過ぎる! 君の身体能力の高さもあって、こんなことは訓練した者にしか出来ないってね!」
「見事な推測だと納得するしかないが・・・例え事実だとしても、自分で可憐な美少女と言うのはどうだろうか? それと、理解者が欲しいなら同じ特待生同士で秘密を共有すれば良かったじゃないか?」
レイと同じクラスになった時点、いや彼女の能力からすれば、クラスや学年が違ってもいずれ目を付けられていただろう。最初から詰んでいたことになる。それでも、ユウジは小さい突っ込みを入れつつ、気になった疑問をレイにぶつける。どうせなら全てを明らかにしたかった。
「いや、それは難しいんだ。ユウジ! 私は気にしないし、君も若くしてスパイに抜擢されるくらいだから、メンタルが強いと思われるが、いくらなんでも『私達、政府の遺伝子実験で生まれた人造人間の一種らしいぞ! 実験体同士これから仲良くしようぜ!』なんて気軽に言えるわけだろう! 下手したら自分の存在に悩んで自殺される危険性があった。他の特待生が独自に気付く可能性もあるが、私からは暗示するのも危険だったんだ!」
「ああ、なるほど・・・」
レイの説明にユウジは納得を示す。レイが呆気らかんとしているので気が回らなかったが、優れた才能を持っているからといって精神面まで頑強とは限らない。自分が実験で生まれた特殊な人間だと知ったら、程度の差はともかく悩むことになるだろう。むしろIQが高い人間ほど鬱になりやすいと任務前にレクチャーされたことを思い出した。
「・・・ところでユウジ、君はこれからどうするのかな? こうして学園の秘密、正確には秘密とされていた情報について当事者の証言を得たことで目的を果たしたんじゃないかな?」
「ああ、確かに軍にもひみ・・・いや、今のは聞かなかったことにしてくれ! た、確かにレイの証言で極秘裏に進められていた遺伝子実験の裏が取れた。だが、俺にはもう一つ任務が課せられていて、そっちはまだ達成していない。とは言え、レイに正体を看破されてしまったからな。存在を知られたスパイ・・・諜報員に居場所はないんだ」
区切りが付いたと判断したレイが話題を変え、ユウジはこれからの行動を示唆する。それは二人の別れを暗示させるものだ。
「うむ。・・・そのことなら、私が胸の内にしまっておくから安心してくれ。学園側も今回の事件は私が主体的になって解決したと思っている。ユウジの正体にはミジンコ程にも気付いていないだろう。彼らからすれば君は私のオマケだ!」
「ははは、オマケはともかく、レイならそう提案してくれると思っていたよ! 学園側に秘密にしてくれるならありがたい! このまま退散したのでは、俺の評価がガタ落ちだからね!」
レイなら他言はしないと確信していたが、ユウジは彼女から望んだ回答を取り付ける。余計な捻くれ口はいつものことだ。
「ふふふ。しかし、それだけなのか? ユウジは軍・・・じゃなかった・・・所属する組織での評価を気にするだけなのか?」
「・・・言わせたいのか?」
「こういうのは、はっきりさせないとな!」
レイはベンチから立ち上がってユウジの正面に立つと、彼の顔を覗き込みながらダメ押しを行なう。
「わかった・・・言うよ。言う! せっかくレイと仲良くなれたのに、このまま別れるのは残念だ!」
「うむ、正直だ! 私としてもやっと見つけた理解者だからな。このまま別れるのは惜しい・・・」
「それって?」
「いや、相棒としてだぞ! それに君のもう一つの目的も知りたいしな!」
「それについては俺の口からは言えない。まあ、レイなら直ぐに勘付くだろう?」
「いやいや、私も万能じゃないよ。これからもう少し時間を掛けて調べさせてもらう。・・・まあ、とりあえず一本どうだい? 相棒君!」
レイは口角を僅かに上げる微かな笑みを浮かべると、チョコレートの箱をユウジに差し出すのだった。
ハードボイルドJK 了
レイとユウジの物語はこれで一先ず終幕です。
続きのプロットはあるので、人気が出たら書くかもしれません。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。
くずもち
キャラ文芸
楠 太平は模型作りが趣味の高校生である。
彼には昔から妖怪という普通の人間には見えない存在が見えているのだが、それはそれとして楽しく暮らしていた。
そんな太平の通う学校に、神木杏樹という転校生がやって来る。
彼女にも実は妖怪が見えているらしいのだが、どうやら彼女は妖怪が見えることを持て余しているらしい。
そんな神木さんに見えることが速攻でバレた楠 太平はマイペースにやっていくつもりが、彼女のペースに呑まれてゆく。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる