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その29
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ヘリオから弾け飛んだ肉片は蠢動しながらその体積を増大させ、見る間に大柄な人型の塊へと成長する。そのまま統率された動きで十体ほどの集団を形成すると遠巻きにサージを取り囲んだ。
「自分の肉体を憑代にゴーレムを創ったか・・・悪趣味だな!」
敵の意図を見抜いたサージは率直な感想を漏らす。彼はその素性故に体系的に魔法を学んだ記憶はない。それでもサージは本能的にヘリオが行使した魔法の原理と目的を正確に理解していた。
ゴーレムとは魔法によって仮初の命を吹き込まれた魔法付与物のことである。一般的には土や石材で作られるが、根本的に材質は何でも良い。もっとも、当然ながら生み出されたゴーレムは根本となった素材の影響を受ける。木材なら軽く素早いが火に弱い。鉄なら鈍重だが、極めて頑強で火にも強い等である。
今回、ヘリオは自身の肉を憑代にしてフレッシュゴーレムを作り上げた。術者の身体の一部なのだから、これほど相性の良い素材はなく、人間と同程度のしなやかさと動きを実現していると思われた。
そしてレッサーバンパイアである彼は肉体再生能力を有している。使用した肉は直ぐに回復が可能だ。人間の魔術師には真似どころか発想も出来ない魔法の使い方だった。
「減らず口はそこまでだ!! やれ!!」
サージとしては本心のつもりだったが、ヘリオには状況を理解しない敵の迷い言と受け取り、自らのゴーレムに攻撃開始を下す。創造主の命令に従いフレッシュゴーレム達はサージをその数と質量で押し潰そうと殺到した。
「ふん!」
怪物達の動きはそれなりに素早かったが、サージの長剣は前方から迫るゴーレムを左肩から脇腹に掛けて袈裟斬りに両断する。そのまま捻りながら身体を縮めて別のゴーレムの股倉を抜ける。一瞬遅れで左右から迫った二体のゴーレムがそれまでサージがいた空間に倒れ込んだ。
「うらぁ!!」
更に床を蹴って体勢を整えたサージは、反転しながら自分を掴もうとするゴーレムの野太い腕を斬り落とす。
「お前! こそこそしてんじゃねぇ!!」
「・・・がぁ!」
怒りの雄叫びを上げると、サージは床に落ちつつあったゴーレムの腕をヘリオに向って蹴り飛ばす。何かしらの魔法を発動させるために印を結んでいた異形の男は、その攻撃を受けて仰け反った。
サージは手持ちの武器で敵に立ち向かう接近戦こそ戦いの極地と信じている。遠方から魔法等で一方的に攻撃するのは邪道であり、敵とはいえ命を奪う以上は対等な立場で対するべきだと。そんな彼からすればヘリオのやり方は不愉快だった。
一対一の状況でどんな戦い方をするのかと身構えていたら、複数のゴーレムを作り出して前衛役の壁とし、自分は後方から隙を見て攻撃魔法を放つである。これは、サージの矜持に反することだった。
「まあ、死にぞこないだ。そんなものか!」
叫んだことで気が済んだのか、サージは涼しい顔で嫌味を告げるとヘリオに止めを刺すべく間合いを詰める。彼は傲慢ではあるが、愚かではない。自分の理想を他者に、それも敵に押し付ける行為が不毛なのは理解していた。押し付けるのは〝死による敗北〟だけで充分なのだ。
「自分の肉体を憑代にゴーレムを創ったか・・・悪趣味だな!」
敵の意図を見抜いたサージは率直な感想を漏らす。彼はその素性故に体系的に魔法を学んだ記憶はない。それでもサージは本能的にヘリオが行使した魔法の原理と目的を正確に理解していた。
ゴーレムとは魔法によって仮初の命を吹き込まれた魔法付与物のことである。一般的には土や石材で作られるが、根本的に材質は何でも良い。もっとも、当然ながら生み出されたゴーレムは根本となった素材の影響を受ける。木材なら軽く素早いが火に弱い。鉄なら鈍重だが、極めて頑強で火にも強い等である。
今回、ヘリオは自身の肉を憑代にしてフレッシュゴーレムを作り上げた。術者の身体の一部なのだから、これほど相性の良い素材はなく、人間と同程度のしなやかさと動きを実現していると思われた。
そしてレッサーバンパイアである彼は肉体再生能力を有している。使用した肉は直ぐに回復が可能だ。人間の魔術師には真似どころか発想も出来ない魔法の使い方だった。
「減らず口はそこまでだ!! やれ!!」
サージとしては本心のつもりだったが、ヘリオには状況を理解しない敵の迷い言と受け取り、自らのゴーレムに攻撃開始を下す。創造主の命令に従いフレッシュゴーレム達はサージをその数と質量で押し潰そうと殺到した。
「ふん!」
怪物達の動きはそれなりに素早かったが、サージの長剣は前方から迫るゴーレムを左肩から脇腹に掛けて袈裟斬りに両断する。そのまま捻りながら身体を縮めて別のゴーレムの股倉を抜ける。一瞬遅れで左右から迫った二体のゴーレムがそれまでサージがいた空間に倒れ込んだ。
「うらぁ!!」
更に床を蹴って体勢を整えたサージは、反転しながら自分を掴もうとするゴーレムの野太い腕を斬り落とす。
「お前! こそこそしてんじゃねぇ!!」
「・・・がぁ!」
怒りの雄叫びを上げると、サージは床に落ちつつあったゴーレムの腕をヘリオに向って蹴り飛ばす。何かしらの魔法を発動させるために印を結んでいた異形の男は、その攻撃を受けて仰け反った。
サージは手持ちの武器で敵に立ち向かう接近戦こそ戦いの極地と信じている。遠方から魔法等で一方的に攻撃するのは邪道であり、敵とはいえ命を奪う以上は対等な立場で対するべきだと。そんな彼からすればヘリオのやり方は不愉快だった。
一対一の状況でどんな戦い方をするのかと身構えていたら、複数のゴーレムを作り出して前衛役の壁とし、自分は後方から隙を見て攻撃魔法を放つである。これは、サージの矜持に反することだった。
「まあ、死にぞこないだ。そんなものか!」
叫んだことで気が済んだのか、サージは涼しい顔で嫌味を告げるとヘリオに止めを刺すべく間合いを詰める。彼は傲慢ではあるが、愚かではない。自分の理想を他者に、それも敵に押し付ける行為が不毛なのは理解していた。押し付けるのは〝死による敗北〟だけで充分なのだ。
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