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プロローグ
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問い掛けられるような声に呼び起こさせると立川弘樹は意識を戻した。鼓膜を震わせる声質に聞き覚えはないが、それでも彼は義務を果たすように目を開く。
「・・・なんだ?!」
目の前に映った見慣れない情景に弘樹は思わず驚きの声を上げる。薄暗い光の中、自分が冷たい石材の床に寝転がっていたからだ。それと同時に目を覚ます以前の記憶を辿る。
自分は直前まで学校の図書室でレポートの資料となる本を探していたはずだった。貧血を起こして倒れたとしても、図書室の床は淡いベージュ色の絨毯であったはずだし、そもそも学校で石材が敷かれている場所を思い出せなかった。
不思議に思いながらも更なる情報を仕入れようと弘樹は身体を起こす。すると顔を上げた彼の視線を塞ぐように一人の人影が現れた。そう、寝ていた自分に呼び掛ける者がいたのだ。
視界に映った人物によって弘樹はこれまで以上の困惑の表情を浮かべる。現在の状況に思考が追い付かず、彼は氷ついたように固まった。
それでも弘樹の中の古いシステム、おそらくは本能だろう。それは人物を観察し評価することを実行する。弘樹は目の前に現れた人物を美しい少女と判断した。
年齢は自分の一つか二つ下の十五歳程度だろう。彼女は長く綺麗に揃えられた金髪を持ち、瞳は赤味を帯びた茶色をしている。髪色だけならヨーロッパ系の人種と思われるが、顔つきはそこまで彫が深くなく、微かな光に中でも白人と呼ぶほど肌が白くないこともわかった。
もっとも、目鼻立ちは整っており長い睫毛もあって女性としては非常に魅力的で、あどけなさを残しつつもどこか大人びた顔つきをしている。人種が交わると美人が生まれやすいと言われているが、この少女の身体は幾つかの人種の良いところだけを集めて作られているように思われた。
また、彼女の服装も弘樹の常識からは逸脱するものだ。短めのマントらしい上着を肩に掛けて、その下には黒を基調とした膝丈の服を纏っている。下半身はスカートではなく同系色のズボン、そして足は革製のブーツを履いていた。
特に目に付くのは幅広のベルトに帯びている短剣だ。金細工で装飾されているので単純な武器というよりは装飾品のように思われたが、シックな色合いの中にあってかなり目立つ。全体的に見れば中央アジア付近の民族衣装と一昔の軍服を足して二で割ったような印象だ。
「ナ・・フィ・・レミ!」
弘樹に対して少女が何度目かの言葉を投げ掛ける。外見の美しさに似合った鈴を鳴らしたような声だが、やや苛立ちを感じさせた。外国語らしく言葉の意味はわからないが、こういったニュアンスは伝わる。
「・・・ちょっと、何を言っているのかわからないですね」
弘樹は数えきれないほど湧き上がった疑問を抑えて返答する。問い掛けたいことは山ほどあるが、言葉が通じないのでは意味がない。まずはこちらが彼女の使う言語を理解出来ないことを伝えるべきだと判断した。英語での応答も考えたが早々に諦める。
何しろ自分には標準的な高校生程度の知識しかない、下手に英語が通じると思われると厄介であるし、そもそも彼は直感的にこの少女が常識の通じない異質な存在だと認め始めていた。
「レ・・・スム・・・ネン!」
「うわ!」
詩と思われる言葉を囁きながら自分の肩に触れる少女の行動に弘樹は驚きの声を上げた。彼は石造りの床に胡坐を掻く形で座っていたのだが、彼女は何かを悟ったような表情を浮かべると前方から一気に距離を詰めたのだ。
当然ながら弘樹の目の前には少女の胸部分が迫ることになる。残念なことに起伏には乏しいが、年頃の異性の身体に弘樹は赤面する。
「これで、言葉が通じるな?!」
「な!・・・ど、どうなっているんだこれ?!」
慌てる弘樹に少女は改めて日本語で語り掛け、彼はそれに疑問で答える。彼女の言葉が直接頭に響いているように感じられたからだ。
「・・・ん?言語変換の魔法を掛けただけだよ、そんなに驚くほどのことじゃないだろう。これで君の言葉はこちらの世界の共通語となり、君も私の言葉が理解出来るようになったはずだ。まあ、いきなり呼び出したのは不作法だったが、こちらも事情があってね。早速だけど、君の力を貸してもらいたい」
「ま、魔法?・・・助けだって?!」
少女に腕を引かれて立ちあがった弘樹は彼女の言葉を反芻するように呟く。強気な発言のわりに少女の身長は低めで彼の肩ほどだ。百五十㎝を僅かに超える程度だろう。
「ああ、私はイサリア・アーヒエン・リゼート。帝立魔導士官学院の士官補生・・・まあ、君と同じ学生だ。実は来週にミゴールへの昇格試験があるのだが、この試験は二人一組の参加が義務付けられていてね。それで君には私と一緒にその試験に参加してもらいたいのだ!」
名乗りを上げた少女はさも当然のように弘樹に告げたのだった。
「・・・なんだ?!」
目の前に映った見慣れない情景に弘樹は思わず驚きの声を上げる。薄暗い光の中、自分が冷たい石材の床に寝転がっていたからだ。それと同時に目を覚ます以前の記憶を辿る。
自分は直前まで学校の図書室でレポートの資料となる本を探していたはずだった。貧血を起こして倒れたとしても、図書室の床は淡いベージュ色の絨毯であったはずだし、そもそも学校で石材が敷かれている場所を思い出せなかった。
不思議に思いながらも更なる情報を仕入れようと弘樹は身体を起こす。すると顔を上げた彼の視線を塞ぐように一人の人影が現れた。そう、寝ていた自分に呼び掛ける者がいたのだ。
視界に映った人物によって弘樹はこれまで以上の困惑の表情を浮かべる。現在の状況に思考が追い付かず、彼は氷ついたように固まった。
それでも弘樹の中の古いシステム、おそらくは本能だろう。それは人物を観察し評価することを実行する。弘樹は目の前に現れた人物を美しい少女と判断した。
年齢は自分の一つか二つ下の十五歳程度だろう。彼女は長く綺麗に揃えられた金髪を持ち、瞳は赤味を帯びた茶色をしている。髪色だけならヨーロッパ系の人種と思われるが、顔つきはそこまで彫が深くなく、微かな光に中でも白人と呼ぶほど肌が白くないこともわかった。
もっとも、目鼻立ちは整っており長い睫毛もあって女性としては非常に魅力的で、あどけなさを残しつつもどこか大人びた顔つきをしている。人種が交わると美人が生まれやすいと言われているが、この少女の身体は幾つかの人種の良いところだけを集めて作られているように思われた。
また、彼女の服装も弘樹の常識からは逸脱するものだ。短めのマントらしい上着を肩に掛けて、その下には黒を基調とした膝丈の服を纏っている。下半身はスカートではなく同系色のズボン、そして足は革製のブーツを履いていた。
特に目に付くのは幅広のベルトに帯びている短剣だ。金細工で装飾されているので単純な武器というよりは装飾品のように思われたが、シックな色合いの中にあってかなり目立つ。全体的に見れば中央アジア付近の民族衣装と一昔の軍服を足して二で割ったような印象だ。
「ナ・・フィ・・レミ!」
弘樹に対して少女が何度目かの言葉を投げ掛ける。外見の美しさに似合った鈴を鳴らしたような声だが、やや苛立ちを感じさせた。外国語らしく言葉の意味はわからないが、こういったニュアンスは伝わる。
「・・・ちょっと、何を言っているのかわからないですね」
弘樹は数えきれないほど湧き上がった疑問を抑えて返答する。問い掛けたいことは山ほどあるが、言葉が通じないのでは意味がない。まずはこちらが彼女の使う言語を理解出来ないことを伝えるべきだと判断した。英語での応答も考えたが早々に諦める。
何しろ自分には標準的な高校生程度の知識しかない、下手に英語が通じると思われると厄介であるし、そもそも彼は直感的にこの少女が常識の通じない異質な存在だと認め始めていた。
「レ・・・スム・・・ネン!」
「うわ!」
詩と思われる言葉を囁きながら自分の肩に触れる少女の行動に弘樹は驚きの声を上げた。彼は石造りの床に胡坐を掻く形で座っていたのだが、彼女は何かを悟ったような表情を浮かべると前方から一気に距離を詰めたのだ。
当然ながら弘樹の目の前には少女の胸部分が迫ることになる。残念なことに起伏には乏しいが、年頃の異性の身体に弘樹は赤面する。
「これで、言葉が通じるな?!」
「な!・・・ど、どうなっているんだこれ?!」
慌てる弘樹に少女は改めて日本語で語り掛け、彼はそれに疑問で答える。彼女の言葉が直接頭に響いているように感じられたからだ。
「・・・ん?言語変換の魔法を掛けただけだよ、そんなに驚くほどのことじゃないだろう。これで君の言葉はこちらの世界の共通語となり、君も私の言葉が理解出来るようになったはずだ。まあ、いきなり呼び出したのは不作法だったが、こちらも事情があってね。早速だけど、君の力を貸してもらいたい」
「ま、魔法?・・・助けだって?!」
少女に腕を引かれて立ちあがった弘樹は彼女の言葉を反芻するように呟く。強気な発言のわりに少女の身長は低めで彼の肩ほどだ。百五十㎝を僅かに超える程度だろう。
「ああ、私はイサリア・アーヒエン・リゼート。帝立魔導士官学院の士官補生・・・まあ、君と同じ学生だ。実は来週にミゴールへの昇格試験があるのだが、この試験は二人一組の参加が義務付けられていてね。それで君には私と一緒にその試験に参加してもらいたいのだ!」
名乗りを上げた少女はさも当然のように弘樹に告げたのだった。
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