ただ、隣に。

ぷりん

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6 家族

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  「ただいま」

 まだ誰も居ない家に帰ってきた俺は、いつものように玄関で脱いだ靴を左端に揃えた。花を片手に家の中に入ると、先に台所へ。
 カバンは床に置き、花をテーブルに一旦寝かせてから手を洗いに洗面所へ向かった俺は鏡に映った自分の顔をじっと見つめため息をついた。


  「生きてたら小学生だもんな」
 
 初めて妹を見たのは写真の中だった。
 直接見に行けなかったから父さんが携帯で撮ってくれた写真を家で見た。年が離れてたからだと思うけど、どんな姿でも可愛いと思ってしまえたのは多少なりとも両親にとっては残酷だったのかもしれない。
 手を洗い終えて、台所に戻り買った白の胡蝶蘭を仏壇に供える用に整え、両親より一足先にお菓子と整えた胡蝶蘭をお供えした。手を合わせて目を瞑り、心の中で話しかける。話すことなんてたいしてないけど、せめてお菓子を気に入ってくれるといいなと願う。

 
 「おし、勉強しようかな」

 自分の両頬をパチンっと両手で叩き気合いを入れた俺は台所に置きっぱなしだったカバンを持って部屋に行った。
 医者になるという目標はもうそこまで差し迫っていて、ゆっくりとゲームなんかしてる暇なんてない。弁護士とかなら学歴が必要ないからちんたらしようと思えばできるけど、医者になるには医学部に入らないといけないから2年生の俺にとってはもう時間がない。
 スマホをズボンのポケットから取り出して、父親に一言連絡を入れると、すぐに勉強に取りかかった。


 ◇◇◇

 
 部屋のドアをノックする音が聞こえたのは、夜の8時を過ぎたあたりだった。帰ってから制服のまま時間を気にせず机に向かっていたから、両親がいつ帰ってきたのかなんて全く気が付かず。

 「かずき、夜ご飯出来てるけど食べる?」
 「あぁ、食べる。すぐに行くよ」


 夜ご飯はだいたい家族揃って食べることが多い。帰ってくる時間はバラバラだけど、食卓を囲む時だけは一緒だ。

 
 「今日学校どうだった?」

 そして会話はいつも俺のことから始まる。
 毎日たいして変わり映えしないから似たような返しをしてるけど、流石に今日はそうならなかった。

 「ん~・・・繁とはクラスが別になったよ」
 「あら、そうなの?残念ね」
 「うーん。でも嫌な奴と同じクラスになった」
 「嫌な奴?」
 
 スーパーで買ったコロッケを父さんが箸でつまんで食べる直前、俺の発言が気になったのかオウム返しで聞いてきた。倉田のことは直接的に言う気はサラサラないから、曖昧に言おうとしたけど、いい表現が見つからず結局一言だけで済ませた。

 「うん。一匹狼」
 
 
 俺の言い方に二人ともたいして反応せず、『そうなんだ』とでも言いたそうな表情で呆気なく別の話題に移ってしまったけど、あまりの無反応ぶりになんだか少し寂しくなった。親ならもっと突っ込んでくれてもいいのにと思いながらも、自分は自分、他人は他人、人様に迷惑かけてないのなら問題ないのでは?というスタンスな親だから仕方がない。残りのご飯をササッと食べ終わって俺は早々に風呂に行き、部屋に戻って勉強を再開した。
 
 
 
 

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