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再び学校の昇降口にて
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放課後、俺はいつもの通り昇降口で本を読みながら航平を待っていた。
「井之原、昨日はありがとう。今日も協力してくれない?」
伊東がにこにこしながら話しかけてくる。どうしてこんなに態度が大きいのだろう。
「えっと、昨日のうちに告らなかったの?」
「昨日の北村は、井之原が先に帰ったのが気になったみたいで井之原の話ばっかりだったの。告れる雰囲気じゃなくて」
「ふうん」
航平の朝の様子だと俺に捨てられたとか言ってたから気にしてたんだろうなあ。
「だからいいでしょ?今日も先に帰ってくれない?」
この伊東というやつは人にものを頼む態度じゃないよな。今日の俺は少し冷静だ。いくら外見が可愛くてもこんな感じのやつと付き合って航平が幸せになれるとは思えない。
「いや、俺がそこまで協力しなきゃなんない理由がわかんないから嫌だ。告りたいんだと思って昨日は協力したけど、毎日なんてどうなんだよ」
航平や吉井に頼まれたんなら友だちだから協力するけど伊東は俺の友だちじゃないもん。
「それぐらい、いいじゃない。アタシは真剣に北村のことが好きなんだから。帰りぐらい譲ってよ」
伊東は怖い顔をして少しばかり大きな声を上げる。
何なのこの人。こんな人が俺の大事な航平と付き合うなんてことになったら暴れてしまいそうだ。
俺が口を開こうとしたタイミングで速足で近づいて来た人影に腕をぐいと掴まれた。航平だ。
「朱鷺、お待たせ。帰るぞ」
航平は俺の腕を引いて校門へ向かう。
「北村、待って。話があるんだ。ねえとアタシと帰ろうよ」
伊東が可愛い声を出して航平を呼び止める。
伊東に呼び止められて振り返った航平の笑顔は明らかに怒っている。ああヤバい。
「伊東、俺に話があるって何?聞くから今ここで話して?」
「2人で話したいの。お願い」
伊東がねっとりと甘えた声を出した。航平が笑顔だから自分に好意があると勘違いしたのだろう。
航平ははあとため息を吐いた。
「昨日2人で帰ったじゃねえか。何も言わなかったくせに何の話があんだよ。用があるんなら今ここで言えよ」
「ここには井之原がいるでしょ。北村はいつも井之原にまとわりつかれてるから2人で話すチャンスがないじゃない。昨日だって井之原の話ばっかりしてたし。
邪魔者がいないところで話したいの」
俺は航平にまとわりついてる邪魔者なのか。昨日とほぼ同じ意味だけどこんなにはっきり言われるとは思わなかった。
「ねえ、伊東…」
「朱鷺はしばらく黙ってて。俺のせいみたいだから」
航平はやんわりと俺がしゃべるのを止めると声のトーンを落として伊東に言葉を向けた。
「なあ、俺の大事なやつのこと巻き込んどいてそんなこと言うの酷くねえ?」
航平の怒りがピリピリと伝わってくる。俺のことを大事なやつって言ってくれたことに喜びがわく。そんな場面じゃないのにさ。
「何よ、大事なやつって。井之原のせいで北村に近づけないってみんな言ってるじゃない」
伊東がものすごい形相で俺を睨んでくる。あー…航平に告りたいから俺が邪魔にシフトしてんなこの人。
「ああもう話になんねえ。俺は自分の意志で朱鷺と一緒にいるんだ。自分の思い通りになんねえからって朱鷺を悪者みたいに言うのやめろ。それから俺に関することで二度と朱鷺に絡むな。いいな」
「北村、アタシは北村のことが好きなの!」
伊東のそれはもう絶叫のようだった。
「俺はお前と付き合うことはないから。これから先は部活の用事以外で話しかけてくんな」
航平はそれだけ言い捨てると呼び止めようとする伊東を置き去りにして俺の腕を掴んだまま今度こそ家路についた。
「井之原、昨日はありがとう。今日も協力してくれない?」
伊東がにこにこしながら話しかけてくる。どうしてこんなに態度が大きいのだろう。
「えっと、昨日のうちに告らなかったの?」
「昨日の北村は、井之原が先に帰ったのが気になったみたいで井之原の話ばっかりだったの。告れる雰囲気じゃなくて」
「ふうん」
航平の朝の様子だと俺に捨てられたとか言ってたから気にしてたんだろうなあ。
「だからいいでしょ?今日も先に帰ってくれない?」
この伊東というやつは人にものを頼む態度じゃないよな。今日の俺は少し冷静だ。いくら外見が可愛くてもこんな感じのやつと付き合って航平が幸せになれるとは思えない。
「いや、俺がそこまで協力しなきゃなんない理由がわかんないから嫌だ。告りたいんだと思って昨日は協力したけど、毎日なんてどうなんだよ」
航平や吉井に頼まれたんなら友だちだから協力するけど伊東は俺の友だちじゃないもん。
「それぐらい、いいじゃない。アタシは真剣に北村のことが好きなんだから。帰りぐらい譲ってよ」
伊東は怖い顔をして少しばかり大きな声を上げる。
何なのこの人。こんな人が俺の大事な航平と付き合うなんてことになったら暴れてしまいそうだ。
俺が口を開こうとしたタイミングで速足で近づいて来た人影に腕をぐいと掴まれた。航平だ。
「朱鷺、お待たせ。帰るぞ」
航平は俺の腕を引いて校門へ向かう。
「北村、待って。話があるんだ。ねえとアタシと帰ろうよ」
伊東が可愛い声を出して航平を呼び止める。
伊東に呼び止められて振り返った航平の笑顔は明らかに怒っている。ああヤバい。
「伊東、俺に話があるって何?聞くから今ここで話して?」
「2人で話したいの。お願い」
伊東がねっとりと甘えた声を出した。航平が笑顔だから自分に好意があると勘違いしたのだろう。
航平ははあとため息を吐いた。
「昨日2人で帰ったじゃねえか。何も言わなかったくせに何の話があんだよ。用があるんなら今ここで言えよ」
「ここには井之原がいるでしょ。北村はいつも井之原にまとわりつかれてるから2人で話すチャンスがないじゃない。昨日だって井之原の話ばっかりしてたし。
邪魔者がいないところで話したいの」
俺は航平にまとわりついてる邪魔者なのか。昨日とほぼ同じ意味だけどこんなにはっきり言われるとは思わなかった。
「ねえ、伊東…」
「朱鷺はしばらく黙ってて。俺のせいみたいだから」
航平はやんわりと俺がしゃべるのを止めると声のトーンを落として伊東に言葉を向けた。
「なあ、俺の大事なやつのこと巻き込んどいてそんなこと言うの酷くねえ?」
航平の怒りがピリピリと伝わってくる。俺のことを大事なやつって言ってくれたことに喜びがわく。そんな場面じゃないのにさ。
「何よ、大事なやつって。井之原のせいで北村に近づけないってみんな言ってるじゃない」
伊東がものすごい形相で俺を睨んでくる。あー…航平に告りたいから俺が邪魔にシフトしてんなこの人。
「ああもう話になんねえ。俺は自分の意志で朱鷺と一緒にいるんだ。自分の思い通りになんねえからって朱鷺を悪者みたいに言うのやめろ。それから俺に関することで二度と朱鷺に絡むな。いいな」
「北村、アタシは北村のことが好きなの!」
伊東のそれはもう絶叫のようだった。
「俺はお前と付き合うことはないから。これから先は部活の用事以外で話しかけてくんな」
航平はそれだけ言い捨てると呼び止めようとする伊東を置き去りにして俺の腕を掴んだまま今度こそ家路についた。
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