13 / 51
12.未来予測シミュレーション
しおりを挟む
「あれ?…」
「じゃぁねぇ~~~っ」
ドアの外で、長い指を動かして、皇真はそう言い、去っていった。
「ちょ、長身、足速すぎ……」
そう言いながら、美菜は紙袋の中を覗く。
また廊下で、キャーという女子達の叫び声がしている。
ショコラは木箱に入っていた。
木箱が少しだけ冷たかったので、温度調節の機械付なんだと、
美菜は思った。
「さすがリアル王子…」
蓋を開けると、中には、5つのショコラが並んでいた。
ショコラの甘さと苦みを纏った香りが、広がる。
丸くて艶のあるショコラは、それぞれ
ワインレッド、ブラウン、グリーン、ブルー、ブラックで輝いていた。
香りと高級感に釣られて、美菜はワインレッドのショコラを
口に入れる。
「ふっ、うまぁ……」
甘みと苦みが絶妙に混ざり合っていて、鼻から抜ける香りは何だか恋のようなドキドキを感じさせる。
ワインレッドのショコラは、ほんの少しストロベリーが入っているようだった。
美菜は、人をこんなに自然に笑顔にする物を作れることは凄いなと、少し感動した。
しかし同時に、やっぱりもらってばかりの自分が、申し訳ないように思えた。
応えられないんだから、ちゃんと断んなきゃ…。
…でも、あのリアル長身イケメン…、セクシーで、優しくて……。
「はぁ、いつの間に私、こんな悪い女になったんだろ…。
てか、何で、こんな地味な、理系女子の私なんかを……」
窓に薄っすらと映る自分の姿を見て、美菜は舌を出す。
「スタイル悪ッ!…。……はぁ」
さっきまでの皇真とのやり取りを、客観的な視点で想像した美菜は、大きな溜め息を吐いた。
どう考えたって釣り合わないし…。それなのに、こんなのもらって、しかも失踪した初恋の人を引き摺ってて…。
この未来予測の研究も、上手くいかないし……。
パソコンの前で、俯きながら、美菜は作業を進める。
そして、いつもの結論に至る。
落ち込んだ時、やっぱり頭に浮かぶのは、助けてくれるのは、憲斗との思い出だ―――…。
美菜は、大学の卒業論文発表を思い出す――…。
いつもより大きめの教室に、黒いスーツ姿の憲斗が入って来た時、私はおはようとも言えなかった。
ビックリする程、何か、細くて口元が上品で…。髪型もワックスで前髪立て気味で、お洒落な七三に分けてて…、かっこ良すぎて、好きすぎて…。
それに、違うゼミのクラスの女子や、違う学年、他大学の女子までもが、憲斗を見に来てたから、歓声で、どうせ挨拶しても、届かなかった…。
「ん?憲斗、もしかして女子達にさらわれたのかな…。憲斗なら十分有り得るわ……」
憲斗を思い起こしながら、美菜は未来予測パソコンの予測結果を、バーチャル映像として、窓の近くに映し出す。
アジアの地図のような映像が、壁いっぱいに広がって、動いている。
「あ、やっぱ、情報を制限して、焦点を当ててやると、ある程度は上手く走るんだ…」
昼と夜の映像が繰り返され、大きな雲や台風も見える。
「でも情報を制限すると、精度がなぁ…。これで農作物の生産を考えても、限界があるし…。あぁでも…台風の数とかから商品の売り上げの予測はできるか…。生産量をそれに合わせるとかかぁ」
バーチャル映像の日本で、夜に電気の点かない地域が増えていっている。
「この山とか土地をどう活用するかだなぁ…。この地域で農業を推進した場合の予測結果も、シミュレーションで出してみるか…」
手袋型のマウスで未来の映像を動かしながら、美菜の頭の右半分は、過去の憲斗の卒論発表を眺めている――――…。
スーツの憲斗が「静かにしてねっ」と言う。
「「きゃぁぁぁ――――!!!」」
教室に女子達の怒号のような悲鳴が鳴り響いた。
「じゃぁねぇ~~~っ」
ドアの外で、長い指を動かして、皇真はそう言い、去っていった。
「ちょ、長身、足速すぎ……」
そう言いながら、美菜は紙袋の中を覗く。
また廊下で、キャーという女子達の叫び声がしている。
ショコラは木箱に入っていた。
木箱が少しだけ冷たかったので、温度調節の機械付なんだと、
美菜は思った。
「さすがリアル王子…」
蓋を開けると、中には、5つのショコラが並んでいた。
ショコラの甘さと苦みを纏った香りが、広がる。
丸くて艶のあるショコラは、それぞれ
ワインレッド、ブラウン、グリーン、ブルー、ブラックで輝いていた。
香りと高級感に釣られて、美菜はワインレッドのショコラを
口に入れる。
「ふっ、うまぁ……」
甘みと苦みが絶妙に混ざり合っていて、鼻から抜ける香りは何だか恋のようなドキドキを感じさせる。
ワインレッドのショコラは、ほんの少しストロベリーが入っているようだった。
美菜は、人をこんなに自然に笑顔にする物を作れることは凄いなと、少し感動した。
しかし同時に、やっぱりもらってばかりの自分が、申し訳ないように思えた。
応えられないんだから、ちゃんと断んなきゃ…。
…でも、あのリアル長身イケメン…、セクシーで、優しくて……。
「はぁ、いつの間に私、こんな悪い女になったんだろ…。
てか、何で、こんな地味な、理系女子の私なんかを……」
窓に薄っすらと映る自分の姿を見て、美菜は舌を出す。
「スタイル悪ッ!…。……はぁ」
さっきまでの皇真とのやり取りを、客観的な視点で想像した美菜は、大きな溜め息を吐いた。
どう考えたって釣り合わないし…。それなのに、こんなのもらって、しかも失踪した初恋の人を引き摺ってて…。
この未来予測の研究も、上手くいかないし……。
パソコンの前で、俯きながら、美菜は作業を進める。
そして、いつもの結論に至る。
落ち込んだ時、やっぱり頭に浮かぶのは、助けてくれるのは、憲斗との思い出だ―――…。
美菜は、大学の卒業論文発表を思い出す――…。
いつもより大きめの教室に、黒いスーツ姿の憲斗が入って来た時、私はおはようとも言えなかった。
ビックリする程、何か、細くて口元が上品で…。髪型もワックスで前髪立て気味で、お洒落な七三に分けてて…、かっこ良すぎて、好きすぎて…。
それに、違うゼミのクラスの女子や、違う学年、他大学の女子までもが、憲斗を見に来てたから、歓声で、どうせ挨拶しても、届かなかった…。
「ん?憲斗、もしかして女子達にさらわれたのかな…。憲斗なら十分有り得るわ……」
憲斗を思い起こしながら、美菜は未来予測パソコンの予測結果を、バーチャル映像として、窓の近くに映し出す。
アジアの地図のような映像が、壁いっぱいに広がって、動いている。
「あ、やっぱ、情報を制限して、焦点を当ててやると、ある程度は上手く走るんだ…」
昼と夜の映像が繰り返され、大きな雲や台風も見える。
「でも情報を制限すると、精度がなぁ…。これで農作物の生産を考えても、限界があるし…。あぁでも…台風の数とかから商品の売り上げの予測はできるか…。生産量をそれに合わせるとかかぁ」
バーチャル映像の日本で、夜に電気の点かない地域が増えていっている。
「この山とか土地をどう活用するかだなぁ…。この地域で農業を推進した場合の予測結果も、シミュレーションで出してみるか…」
手袋型のマウスで未来の映像を動かしながら、美菜の頭の右半分は、過去の憲斗の卒論発表を眺めている――――…。
スーツの憲斗が「静かにしてねっ」と言う。
「「きゃぁぁぁ――――!!!」」
教室に女子達の怒号のような悲鳴が鳴り響いた。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる