わたしの王子の願いごと

高橋央り

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22.王子からのメッセージ

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携帯を手に取った美菜は、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、メッセージを開く。


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  美菜へ

  星宮憲斗です。
  元気にしてるかな?
  
  こっちも元気って答えたかったけど、
  実は俺は、重い病気でした。
  
  凄く珍しい病気らしくて、
  病院がある東京に引っ越したんだ。

  で、このメールは、日時指定で、送るようにしてた。
  だから、ごめん。
  これの送信を俺が中止しなかったってことは、
  俺は、たぶん死んじゃったってことです。

  言わなくてごめん。言えなくてごめん。
  夢を邪魔したくないとか、嫌われたくないとか、
  色んな理由で、気付けばこんなに
  時間が経ってしまった。

  美菜の王子みたいになって、
  世界一幸せにしたいって思って、
  高校も大学もいつも頑張ってたんだけど、
  美菜を幸せにしてあげれる俺にはなれなかった。
  …ごめんな。

  美菜の研究はHPで少しだけ見れたよ。
  本当に凄いね。ずっと応援してるよ。

  でも夢も大切だけど、自分の幸せってのも、
  しっかり叶えろよなっ。
  美菜ならすぐにいい王子様に出逢えるから、
  ってもういるかw
  
  とにかく、ちゃんと掴めよ幸せ!絶対だぞ!
  死んだって…、みんな仲間だし…。
  美菜が微笑って頑張ってるなら、
  俺は何も悲しくないからさ。

  それにたかが60年なんて、
  どの道すぐに終わるから、
  楽しく生きろよ!
  
  いつも大好きだったよ。
  いつも言えなくて、言うのがこんな形になって、
  こんなに遅くなって、ごめんな。

  ありがとう。

  星宮憲斗
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「うぐっ…べぐ……ぐぅぅ……」

美菜は涙で殆ど何も見えなくなった。
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