このカラダ、魔力供給源!~新米テイマー奮闘記~

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エピソード2 スライムさんなのです!

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「魔力が…欲しいのですね?」


目がないはずなのですが…期待の眼差しで見つめられている気がします。


どうしましょう…魔力の正しいあげ方なんて分かりません。


一般的な方たちは、魔力が体を巡り…手や杖などの道具から放出する事が出来ます。

しかし…私や母には、それが出来ないのです。

その代わりに、ほぼ無限に魔力を生成する事が出来るみたいです。これは、本当に凄いことです。


母が今まで誰にも言わず、秘密にしていた理由が分かります。

 

それに…ある場所から生成されるらしいのですが…。


それが…少し恥ずかしいです。


テイマーの素質がある事は、凄くありがたいのですが…何故…この体質なのでしょうか。


小さい頃、小型の虫さんみたいなモンスターがお口の周辺に群がった事があります。

母が、必死に追い払ってくれて…

その後一日中、何やら考え込んでおりました。


それ以降、私はあの虫さんが少し苦手です。


この力をコントロールなんて、どうやってするのでしょうか。


「とりあえず…ぎゅっと抱きしめてみますね、苦しかったら言ってください。」


スライムさんのひんやりプニプニした感触が伝わります。渡すイメージを頑張って作ってみますね。


うーん。やはり…あれをする必要がありそうですね。

体を密着させたら、もしかしたらと思いましたが…あまり効果がないようです。


「スライムさん、少しじっとしていて下さいね。」


スライムさんの身体にそっと唇を近づけ、優しくキスをしてみます。


一瞬でしたが、確かな感覚。


なんと私の力は唾液に宿るのです。

なので、お口の中が魔力で満たされています。


どうやら唇を当て続けなければ、いけないようです。


もしかしたら、お口にキスをするのが1番良いのかもしれませんが、スライムさんにお口なんてあるのでしょうか。


母もきっと、たくさんの苦労をしたと思います。


…もう少しでしょうか。


結構…長い間、こうしているので息が苦しくなってきました。


ふと、魔核を見てみると先程よりも光が強くなっています。上手く出来ているようで安心しました。


しばらくすると、ぷるんと1度震えて私の腕から降りて行きました。


そして…目の前で何かを待っている様子です。


お礼を言いたいのかもしれません。


「元気になったのですね…良かったです。私は大丈夫ですよ!この通りピンピンしています!」


プルプルしていてとても可愛いです。キラキラ輝く核も、出会った時よりずっと元気です。


「私は…夜までにこの森を抜けないといけません。名残惜しいですが…そろそろ出発しますね。」


軽く衣服を整えて…再度、準備をします。


お見送りをしてくれるのでしょうか。

私が動く度に、足元をぴょんぴょんと行ったり来たりしています。


こんなに人懐っこいモンスターが居るなんて驚きです。これもテイマーの素質なのでしょうか。


私がリュックを背負うと…その上に飛び乗って、こちらを見ている様です。



「もしかして…着いてきてくれるのですか?」


スライムさんは、頷くようにユラユラ揺れていて…何だか嬉しそうにしています。


こちらまで、その気持ちが伝わってくるようで楽しい気分になってきました。

ちゃんとテイムできたわけでは、ないと思います。


「街に着いたら…色々と調べないといけませんね…。少し急ぐので、しっかり掴まっていて下さい!」


森を抜けたらスライムさんには、カバンの中に隠れて貰いましょう。とても珍しい個体だと思いますし、まだしっかり言うことを聞いてくれるか分かりません。


ですが危害を加えるなんて事は、絶対にしないと何故か断言できます。


とても不思議です。


白いお花の群生地まで来ました。ここは森の半分を過ぎた辺りでしょうか。

昔、母とここを通った時に、このお花を使って冠を作ってくれた事があります。


気が付くと…小鳥さんも何羽か私の後をついてきているみたいです。私の肩に止まったりしていて、お話ししているようで可愛らしいです。


もう、日が傾きかけています。


暗くなる前には抜けられそうですが、恐らくギリギリです。


「もう少し早く…村を旅立っていたら、良かったですね。お別れするのが辛く…ついつい遅くなってしまいました。」


すると、スライムさんが私の頭を優しく撫でてくれます。ひんやりしているのに、温もりが伝わってきて自然と笑顔になれました。

その後にぴょんと降りて、先導するように前を歩いてくれます。


「ありがとう…本当に。ついてきてくれて、優しくしてくれて…とても嬉しいです。」


正直に言うと…スライムさんに出会うまでは、とても心細かったです。


独りじゃないと思うだけで、勇気が湧いてきます。


しばらく歩いていると…森の出口が見えて来ました。先導してくれてから、ものすごく歩くペースが上がったような気がします。


道を見てみると…スライムさんが通った後は、おおきな草が潰れていたり、小石などを端に寄せながら進んでくれていました。


……優秀過ぎませんか?

この子は…本当にスライムなのでしょうか?


…とりあえず、少し森から離れると小川が見えて来るはずです。その場所で野営の準備をしましょう。


順調に行けば、明日の今頃には街にたどり着いているはずです。


「あっ、そうだ。スライムさん…小川の先におおきな道があります。そこは旅の方達がよく使う道なので、明日はカバンに隠れていて下さいね。」


こちらに向かってぷるんと頷いたのを確認した後、2人揃って森を抜けました。


遮る葉っぱや木々もなく。

風が吹き抜け…夕日が眩しいです。


完全に太陽が沈む前には今日の寝床も用意出来そうで、まだ初日だというのに達成感と安心感で気持ちが和らぎます。


布を棒に引っ掛けるだけの簡単なテントですが、私1人なら充分なスペースです。村にいる時に、お庭で何回も組み立てる練習をしてきました。


そしてなんと、火起こしも習得済みです!


野生のお肉を食べる動物達は火を怖がるらしく、その対策らしいです。

ですが私は、昔おおきな熊さんと遊んだ事があり…母には秘密にしています。


ただの優しい熊さんかもしれないし、何があるか分からないので、ちゃんと火は起こします。


スライムさんが水遊びをしているのを眺めながら、残ったサンドイッチを食べることにしました。もう暗くなり始めています。


たくさん歩いたし…色んな事があったので思ったよりも体が疲れているみたいで、今日は早く寝れそうです。


そういえば…スライムさんは何を食べるのでしょうか。

そこら辺も含めて、調べる必要がありそうです。


「おば様が作ってくれたサンドイッチです!とても美味しいですよ。食べますか?」


すると、ゆっくりと近付いてきて…何やら考えているようです。


私は1口パクッと食べて、お手本を見せてみました。


「 …ひゃあ! 」


プルプルと震えた後、急に腕ごと包み込まれてしまって、思わず驚いて変な声が出てしまいました。

すぐに手を引っ込めましたが、胸がドキドキしています。


「大きな声を出してしまい、ごめんなさい。怒っているわけではないのですよ。…少しビックリしただけです。」


申し訳なさそうにしているスライムさんの体内に、残ったサンドイッチが見えます。


それがシュワシュワと溶けながら消えていきました。食べられたのでしょうか。


すごく不思議です。


ふと空を見上げれば…満天の星空が広がり、私の村や、まだ行ったことのない色んな場所と繋がっていると思うと…自分の存在が小さく感じる気がします。


目を閉じると…小川のせせらぎが、風と共に私の耳を撫でて心地良さが眠気を誘うようです。


「もう、寝ましょうか。明日は早起きして朝のうちに出発しましょう。」



明日も、長い一日になりそうです。

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