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Last Episode《Timeless》
#94《機械少女の秘密》
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電動車に揺られ、適度に電気エネルギーを補給しながら長距離を移動する。
ソレイユ達が研究所へ到着する頃には正午を迎えようとしていた。
街の外での移動には不向きだった電動車の主電力は、ルナがアクセサリーとして身につけているバッテリーを参考にして作られてはいるが、大きさと個数だけはどうにもならず、車の中が狭くなるばかりだと、湊音が苦笑しながら教えてくれた。
無事に到着して車を降りると、辺りを見回して初めて訪れた研究所を見上げる。
魔女のアトリエと似た静けさと大地の賑わう声が聴こえた。
どうやら人里離れた場所に作られた理由はアトリエの事情と似ているらしい。
研究所から従業員が慌てて移動ベッドを運んできたので、湊音がルナを寝かせている。
眠りについたままのルナはロボットを想像させない、人間そのものにしか見えなかった。
「んじゃ、俺は親父に連絡してくるわ」
奏は右手を上げて研究所の中へ入っていった。
「僕達も行こうか。……君も来なさい」
湊音の視線の先にいるルナと瓜二つの機械少女は、機械独特の言葉で返事をして湊音の後ろをついてきている。
ソレイユは魔力感知を通して機械少女の体内を調べると、彼女は鉱石がない生粋のロボットである事が解った。
機械少女はソレイユに目を向ける事なく、湊音の命令通りに動いている。
彼の話によると、今の機械少女は安全制御システムが作動しているとの事で、製造者以外の指示には従わないように設定しているらしい。
「それじゃあ、治してくる。終わるまでは向かいの部屋で待っていてくれないか? 修復には時間がかかるし、仮眠を取ってくれて構わないから」
湊音は二人の機械少女を連れて製造室へ入ってしまった。
ソレイユは言われた通りに部屋の扉を開け、一台のベッドと机とソファが置かれている、こじんまりとした部屋の中へ入った。
二人がけのソファに座ると、目の前にあるマガジンラックに数冊の雑誌が置かれているのが見える。
そこには服飾系や漫画等、多種多様な雑誌があった。
ソレイユは女性向け服飾雑誌を一冊取り出すと、ソファに座り直して頁を捲る。
――そういやぁ、ルナに服をせがまれた時は大変だったな……。
ルナを弟子として迎えたあの日の事を思い出した。
ソレイユが偶然遊んでいたテレビゲームを見たルナが『主人公と同じ服が着たい』と駄々を捏ねてきたのだ。
『お前な……確かに可愛いが露出しすぎじゃないか?』
『ババアだってめちゃくちゃ露出してんじゃん!』
『いや、うん……そうだけどさ……』
そのままを作ってしまえば湊音に殺される。
ソレイユは半ば誤魔化しながら衣服を作ってはダメ出しされ続けた。
片や胸を大きく見せろだの、片や装飾にこだわってほしいだの我儘が多かったが、修行中という理由をつけて今の衣装が出来上がったのだ。
他にも食事を静かに嗜みたいという想いからルナ専用のでんきあめを作り、イタズラを鎮める為にハリセンを作り、やたらと部屋に入りたがろうとするので特殊な鍵を作る等、ルナの為に色々なものを作り与えていた事に気付く。
「さぁて。帰ったらやる事が山積みだな……」
ソレイユは感情を露にして息を零すと、久しぶりに触れる本を読み始めたのだった。
◆
「ソレイユ」
声のする方に目をやると、湊音がソレイユを起こそうと肩を揺らしてくる。
どうやら読み耽っている内に眠ってしまったようだ。
「確認したい事があるんだ。ちょっと来てもらえるかい?」
湊音に呼ばれて向かった先は製造室の隣りにある部屋で、その中には大きな液晶画面が二つとパソコンが置かれている。
ソレイユは言われるがまま椅子に座って彼の言葉を待った。
「君は確か、『琉奈の鉱石に魔力を注いだ』って話していたよね? これは今の鉱石を映したものなんだけど、君が視たこの子の鉱石はモニターと同じように映ってる?」
「えっ? それってどういう……」
湊音が指をさした画面の中には基盤や配線が設置されている機械の内部が映っている。
その中に目立った輝きを放つカプセルのようなものがあった。
ソレイユはカプセルの中にある鉱石に魔力を注いだのだ。
「えっ、なんだコレ……?」
「基盤が鉱石に取り込まれているんだ。その様子だと、君がいた時はそうじゃなかった――って事だね?」
ソレイユはルナの鉱石を注意深く観察した。
魔力を通さずとも見える鉱石の光の中に基盤が刺さったような形状をしている。
別れ際に視たルナの鉱石には確かに異様なものは無かった。
「それともう一つ。あの時泣き叫んでいたのは確かに琉奈なんだよね?」
「え……? そうだが……」
「そうか……」
湊音は大きなため息をついて椅子に座った。
「……実はね。今のあの子の声は僕がプログラムした合成音声じゃないんだ」
「えっ!? つー事は、今までオレが聞いていたアイツの声は……」
「恐らく魔石となった琉奈の声、だろうね」
ソレイユは湊音が組み込んだという合成音声のサンプルを聞かせてもらったが、その声を耳にするのは初めてだった。
人の声に近しい質を持っていながら機械特有のぎこちなさを併せ持っており、それが合成音声だと気付く者は多いだろう。
「君には頼んでばかりで申し訳ないけど、この子の様子を見守ってくれないか? 僕も定期的に確認はするけど、こればかりはどうなるか予測がつかなくて……」
「あぁ、解った」
ルナの治療は既に終わっているようで、次はもう一人の機械少女の話題へと変わった。
月城組の研究室で創られた彼女は新品のパーツで製造してはいるが、ルナと比較しても明らかに未完成だという。
現段階であれば完成させる事も解体させることも出来ると言うが、湊音は思い悩んでいるように見えた。
「ひとまず今日はここで休むよ……。明日すみれのところに帰る……」
「わかった。オレも今日はここに泊まるよ。一緒に行かなきゃ意味がないからさ」
ソレイユは用件を済ませて先程の部屋へ入ると、身体を大の字にしてベッドに寝転がった。
◆
あれから幾つか日を跨いだ。瑠璃達はいつもの日常へと戻っている。
作戦が無事成功したあの夜、ワープゲートを通った先で颯率いる魔狼族は一度集落へ戻り、蛍吾とクリスタとは管理人の家で別れ、黒斗を先頭にアトリエへ帰宅した頃には早朝を迎えようとしていた。
到着した直後に黒斗が倒れてしまい、今日まで大浴場付近にある空室で碧が付きっきりで看病をしてくれている。
開始前の絶対防御付与とは別で、防壁魔法を遠隔操作しながら瑠璃達に付与してくれていた事や、瑠璃達と合流した時には既に疲労が蓄積していた事、ワープゲートを使用する際の魔力の消費量が大きい事を碧から知らされ、瑠璃は重い責任を感じていた。
時刻は昼。快晴の空の下、畑の作業を終えて夕食の献立を料理本で探しながら考える。
曜日で言えば本日は蛍吾がこちらへ泊まりに来る日で、彼に合わせて颯も帰ってくる事が多かった。
「それ、今日の夕食? 良かったら桜結にも手伝わせてよ!」
桜結が一冊の本をテーブルに置いて瑠璃の隣りに座る。
「それってお裁縫の本だよね? 何か作るの?」
「今、人の街ではぬいぐるみに衣服を着せる嗜好が流行ってるんだよ!」
「そうなんだぁ! 楽しそう!」
「実は皆に提案してみようかなって思っててさー。ルナには色々とお世話になってるし、プレゼントしたら喜んでくれるかなーって」
本の頁をいくつか捲ると裁縫の基本がこと細かく丁寧に書かれている。
――そういえばこの前、ルナの部屋にお邪魔した時に大きな犬のぬいぐるみがあったなぁ。
ルナがそのぬいぐるみに抱きついては幸せそうにしている姿が印象に残っていた。
「わたしで良ければ協力させてほしいなぁ」
瑠璃は桜結と一緒に材料となるものはないだろうかと本を読み漁っていると、玄関から控えめな開閉音が聞こえ、反射的にそちらへ顔を向ける。
「やっほー! 遊びに来たぜー!」
「昼間っから騒々しいわねー。もうちょっと静かに入ってこれないの!?」
「蛍吾が開けてくれたんだから十分静かだっただろ!?」
桜結と颯が恒例の言い合いをしている最中、蛍吾が手を振って瑠璃の元へやってきた。
彼の手首を見ると何も付いていない。『また落としてしまった』と言って茶化しているのは日常茶飯事の事だ。
瑠璃はいつものように苦笑を浮かべる。
「ところで、黒斗は? 別館に上がろうとしたけど入れないし、珍しく見かけないから」
「えっと……実はね……」
今も奥の部屋で療養している事を話すと颯が大きな声を出した。
「オレ……ダチなのに全然気付けなかった……。アイツの様子は?」
「だいぶ回復してるよ。今朝は本を持って戻っていくところを見かけたから、今日くらいには一緒に夕食を取れると思う」
瑠璃はふと献立の事を思い出して机に置いたままの付箋に料理の名前をメモした。
黒斗の体調に合わせた料理にしようと、もう一度レシピ本を開いてめぼしいものを探す事にする。
蛍吾と颯はすぐそこのソファに座り、桜結は再度瑠璃の隣りに座って一緒に献立を考えてくれた。
藍凛は帰宅してからはいつも通り魔導具の解体や製作を一人で続けている。
「……なぁ、先に入ってくれよ」
「はぁ!? ここババアの家でしょ? ババアが開けなよ」
「いやその……久しぶりに帰るわけだし? まだ挨拶もしてねぇし? つーかババアって言うな!」
外が騒がしい。聞き覚えのある声がする。瑠璃は玄関へ向かって扉を開ける事にした。
ドアノブを回してゆっくり扉を押すと外の光が漏れてくる。
目の前には知っている顔が二つあった。
「えへへぇ。……ただいまぁ」
ルナが照れくさそうに頭を搔いて笑っている。
ルナが帰ってきた。
それだけで瑠璃の心に張り詰めていた糸が緩んだ。
ソレイユ達が研究所へ到着する頃には正午を迎えようとしていた。
街の外での移動には不向きだった電動車の主電力は、ルナがアクセサリーとして身につけているバッテリーを参考にして作られてはいるが、大きさと個数だけはどうにもならず、車の中が狭くなるばかりだと、湊音が苦笑しながら教えてくれた。
無事に到着して車を降りると、辺りを見回して初めて訪れた研究所を見上げる。
魔女のアトリエと似た静けさと大地の賑わう声が聴こえた。
どうやら人里離れた場所に作られた理由はアトリエの事情と似ているらしい。
研究所から従業員が慌てて移動ベッドを運んできたので、湊音がルナを寝かせている。
眠りについたままのルナはロボットを想像させない、人間そのものにしか見えなかった。
「んじゃ、俺は親父に連絡してくるわ」
奏は右手を上げて研究所の中へ入っていった。
「僕達も行こうか。……君も来なさい」
湊音の視線の先にいるルナと瓜二つの機械少女は、機械独特の言葉で返事をして湊音の後ろをついてきている。
ソレイユは魔力感知を通して機械少女の体内を調べると、彼女は鉱石がない生粋のロボットである事が解った。
機械少女はソレイユに目を向ける事なく、湊音の命令通りに動いている。
彼の話によると、今の機械少女は安全制御システムが作動しているとの事で、製造者以外の指示には従わないように設定しているらしい。
「それじゃあ、治してくる。終わるまでは向かいの部屋で待っていてくれないか? 修復には時間がかかるし、仮眠を取ってくれて構わないから」
湊音は二人の機械少女を連れて製造室へ入ってしまった。
ソレイユは言われた通りに部屋の扉を開け、一台のベッドと机とソファが置かれている、こじんまりとした部屋の中へ入った。
二人がけのソファに座ると、目の前にあるマガジンラックに数冊の雑誌が置かれているのが見える。
そこには服飾系や漫画等、多種多様な雑誌があった。
ソレイユは女性向け服飾雑誌を一冊取り出すと、ソファに座り直して頁を捲る。
――そういやぁ、ルナに服をせがまれた時は大変だったな……。
ルナを弟子として迎えたあの日の事を思い出した。
ソレイユが偶然遊んでいたテレビゲームを見たルナが『主人公と同じ服が着たい』と駄々を捏ねてきたのだ。
『お前な……確かに可愛いが露出しすぎじゃないか?』
『ババアだってめちゃくちゃ露出してんじゃん!』
『いや、うん……そうだけどさ……』
そのままを作ってしまえば湊音に殺される。
ソレイユは半ば誤魔化しながら衣服を作ってはダメ出しされ続けた。
片や胸を大きく見せろだの、片や装飾にこだわってほしいだの我儘が多かったが、修行中という理由をつけて今の衣装が出来上がったのだ。
他にも食事を静かに嗜みたいという想いからルナ専用のでんきあめを作り、イタズラを鎮める為にハリセンを作り、やたらと部屋に入りたがろうとするので特殊な鍵を作る等、ルナの為に色々なものを作り与えていた事に気付く。
「さぁて。帰ったらやる事が山積みだな……」
ソレイユは感情を露にして息を零すと、久しぶりに触れる本を読み始めたのだった。
◆
「ソレイユ」
声のする方に目をやると、湊音がソレイユを起こそうと肩を揺らしてくる。
どうやら読み耽っている内に眠ってしまったようだ。
「確認したい事があるんだ。ちょっと来てもらえるかい?」
湊音に呼ばれて向かった先は製造室の隣りにある部屋で、その中には大きな液晶画面が二つとパソコンが置かれている。
ソレイユは言われるがまま椅子に座って彼の言葉を待った。
「君は確か、『琉奈の鉱石に魔力を注いだ』って話していたよね? これは今の鉱石を映したものなんだけど、君が視たこの子の鉱石はモニターと同じように映ってる?」
「えっ? それってどういう……」
湊音が指をさした画面の中には基盤や配線が設置されている機械の内部が映っている。
その中に目立った輝きを放つカプセルのようなものがあった。
ソレイユはカプセルの中にある鉱石に魔力を注いだのだ。
「えっ、なんだコレ……?」
「基盤が鉱石に取り込まれているんだ。その様子だと、君がいた時はそうじゃなかった――って事だね?」
ソレイユはルナの鉱石を注意深く観察した。
魔力を通さずとも見える鉱石の光の中に基盤が刺さったような形状をしている。
別れ際に視たルナの鉱石には確かに異様なものは無かった。
「それともう一つ。あの時泣き叫んでいたのは確かに琉奈なんだよね?」
「え……? そうだが……」
「そうか……」
湊音は大きなため息をついて椅子に座った。
「……実はね。今のあの子の声は僕がプログラムした合成音声じゃないんだ」
「えっ!? つー事は、今までオレが聞いていたアイツの声は……」
「恐らく魔石となった琉奈の声、だろうね」
ソレイユは湊音が組み込んだという合成音声のサンプルを聞かせてもらったが、その声を耳にするのは初めてだった。
人の声に近しい質を持っていながら機械特有のぎこちなさを併せ持っており、それが合成音声だと気付く者は多いだろう。
「君には頼んでばかりで申し訳ないけど、この子の様子を見守ってくれないか? 僕も定期的に確認はするけど、こればかりはどうなるか予測がつかなくて……」
「あぁ、解った」
ルナの治療は既に終わっているようで、次はもう一人の機械少女の話題へと変わった。
月城組の研究室で創られた彼女は新品のパーツで製造してはいるが、ルナと比較しても明らかに未完成だという。
現段階であれば完成させる事も解体させることも出来ると言うが、湊音は思い悩んでいるように見えた。
「ひとまず今日はここで休むよ……。明日すみれのところに帰る……」
「わかった。オレも今日はここに泊まるよ。一緒に行かなきゃ意味がないからさ」
ソレイユは用件を済ませて先程の部屋へ入ると、身体を大の字にしてベッドに寝転がった。
◆
あれから幾つか日を跨いだ。瑠璃達はいつもの日常へと戻っている。
作戦が無事成功したあの夜、ワープゲートを通った先で颯率いる魔狼族は一度集落へ戻り、蛍吾とクリスタとは管理人の家で別れ、黒斗を先頭にアトリエへ帰宅した頃には早朝を迎えようとしていた。
到着した直後に黒斗が倒れてしまい、今日まで大浴場付近にある空室で碧が付きっきりで看病をしてくれている。
開始前の絶対防御付与とは別で、防壁魔法を遠隔操作しながら瑠璃達に付与してくれていた事や、瑠璃達と合流した時には既に疲労が蓄積していた事、ワープゲートを使用する際の魔力の消費量が大きい事を碧から知らされ、瑠璃は重い責任を感じていた。
時刻は昼。快晴の空の下、畑の作業を終えて夕食の献立を料理本で探しながら考える。
曜日で言えば本日は蛍吾がこちらへ泊まりに来る日で、彼に合わせて颯も帰ってくる事が多かった。
「それ、今日の夕食? 良かったら桜結にも手伝わせてよ!」
桜結が一冊の本をテーブルに置いて瑠璃の隣りに座る。
「それってお裁縫の本だよね? 何か作るの?」
「今、人の街ではぬいぐるみに衣服を着せる嗜好が流行ってるんだよ!」
「そうなんだぁ! 楽しそう!」
「実は皆に提案してみようかなって思っててさー。ルナには色々とお世話になってるし、プレゼントしたら喜んでくれるかなーって」
本の頁をいくつか捲ると裁縫の基本がこと細かく丁寧に書かれている。
――そういえばこの前、ルナの部屋にお邪魔した時に大きな犬のぬいぐるみがあったなぁ。
ルナがそのぬいぐるみに抱きついては幸せそうにしている姿が印象に残っていた。
「わたしで良ければ協力させてほしいなぁ」
瑠璃は桜結と一緒に材料となるものはないだろうかと本を読み漁っていると、玄関から控えめな開閉音が聞こえ、反射的にそちらへ顔を向ける。
「やっほー! 遊びに来たぜー!」
「昼間っから騒々しいわねー。もうちょっと静かに入ってこれないの!?」
「蛍吾が開けてくれたんだから十分静かだっただろ!?」
桜結と颯が恒例の言い合いをしている最中、蛍吾が手を振って瑠璃の元へやってきた。
彼の手首を見ると何も付いていない。『また落としてしまった』と言って茶化しているのは日常茶飯事の事だ。
瑠璃はいつものように苦笑を浮かべる。
「ところで、黒斗は? 別館に上がろうとしたけど入れないし、珍しく見かけないから」
「えっと……実はね……」
今も奥の部屋で療養している事を話すと颯が大きな声を出した。
「オレ……ダチなのに全然気付けなかった……。アイツの様子は?」
「だいぶ回復してるよ。今朝は本を持って戻っていくところを見かけたから、今日くらいには一緒に夕食を取れると思う」
瑠璃はふと献立の事を思い出して机に置いたままの付箋に料理の名前をメモした。
黒斗の体調に合わせた料理にしようと、もう一度レシピ本を開いてめぼしいものを探す事にする。
蛍吾と颯はすぐそこのソファに座り、桜結は再度瑠璃の隣りに座って一緒に献立を考えてくれた。
藍凛は帰宅してからはいつも通り魔導具の解体や製作を一人で続けている。
「……なぁ、先に入ってくれよ」
「はぁ!? ここババアの家でしょ? ババアが開けなよ」
「いやその……久しぶりに帰るわけだし? まだ挨拶もしてねぇし? つーかババアって言うな!」
外が騒がしい。聞き覚えのある声がする。瑠璃は玄関へ向かって扉を開ける事にした。
ドアノブを回してゆっくり扉を押すと外の光が漏れてくる。
目の前には知っている顔が二つあった。
「えへへぇ。……ただいまぁ」
ルナが照れくさそうに頭を搔いて笑っている。
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