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第5章 トラブルは恋と共に
第23話 一目惚れ
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「言っておきたいこと……?」
『ああ。聞いてくれるか? いや、違う。お前はたまたま、俺の独り言を聞いただけだ』
真剣な優斗くんの声に、思わず頷いた。
言っておきたいことって、なんだろう。
『このままじゃ姫乃は、高校に進学できないかもしれない』
「えっ……えっ!?」
緑光学院は中高一貫校で、外部受験をする子以外は、全員が高等部へ進学するはずだ。
成績によってクラスは変わるけれど、どれだけ成績が悪くても、進学できない、なんてことはないはず。
『いくら内部進学って言っても、私立だからな。今の出席率じゃ厳しいらしい。それで最近、やたらと三者面談とかしてるんだよ』
「……そんな……」
如月さんが、高等部に進学できない? 如月さんと、違う学校になる?
そんなの、考えたこともなかった。
『あいつはたぶん今、すごく悩んでるし、迷ってると思う。……前のあいつなら絶対、もういいって投げ出しただろうにな』
一瞬だけ、優斗くんが柔らかく笑った。
『お前のおかげだ』
「……私の?」
『ああ。保健室に委員長がきてくれるって、前から何度も嬉しそうに言ってた。最近は、委員長がいれば教室に行けるかも、なんて言ってる日もあったくらいだ』
如月さん、そんな風に思ってくれてたんだ……!
胸の奥が熱くなって、泣きそうになる。今すぐ、如月さんを抱き締めたい気分だ。
『姫乃はたぶん、お前と同じ高校に行きたいって思ってる。でも今、変身部がなくなったら、あいつは……』
続く言葉を、優斗くんは口にできないようだった。
『悪い。言い過ぎた。またな』
そう言って、優斗くんは一方的に電話を切った。
「……絶対、なんとかしなきゃ」
如月さんのおかげで、私は変われた。私は如月さんに救ってもらった。
それに如月さんは、初めて本当の自分をさらけ出せた友達だ。
真面目な委員長としての天野望結以外の私のことも、如月さんには素直に話せた。
これで終わりだなんて、絶対に嫌だ!
◆
一睡もできないまま、私はいつもよりさらに早く学校に到着した。もうすぐ夏だとはいえ、朝の教室は少し肌寒い。
「あれ? 委員長って、いつもここまで早かったっけ?」
笑いながら教室に入ってきたのは早瀬くんだ。
そう言う早瀬くんだって、いつもは遅刻寸前の時間にしかこないくせに。
「ねえ、委員長、昨日のことなんだけど」
「……うん。まだ、誰にも言ってないよね?」
「言ってないって。やっぱり、どうしてもみんなに知られたくないんだ?」
「……うん」
「委員長たちは、放課後にあそこでなにをしてるの? 教えてよ」
教えないと人にばらす、と言われたわけじゃない。でも、この状況で拒否権がないことくらいは分かる。
「放課後変身部って私たちは言ってる。放課後に、それぞれが好きな格好をして自由に過ごすだけ」
「それだけ?」
「……まあ、部活ネームっていうあだ名で呼び合うし、性格もいつもとは違うけど……」
なるほどね、と早瀬くんが頷く。どれくらいちゃんと分かってくれたかは分からないけれど、とりあえず納得はしてくれたらしい。
「あの、早瀬くん」
「なに?」
「それで、えっと……これからも、内緒にしてほしいんだけど。お願いします……!」
私は勢いよく頭を下げた。とにかくお願いするしかないって、そう思ったから。
「えっ!? ちょっと委員長、やめてよ。元々俺、ばらすつもりとかないし」
「……え?」
「だって、人にばらしたって俺に得がないでしょ。委員長たちに恨まれて、むしろ損するだけっていうか」
言われてみればそうだ。変身部の秘密をばらして、早瀬くんがなにか得をするとは思えない。
「それに俺、人の秘密をばらして楽しむほど、性格悪くないから」
「……じゃあなんで昨日、あんな言い方したの?」
ばらすつもりがないのなら、明日からのことは明日話そう、なんて言う必要はなかったはずだ。
疑いの目を私が向けると、早瀬くんは気まずそうに目を逸らした。
「……内緒にしておく代わりに、なんて言うのはダサいけど、委員長に頼みがあって」
「頼み?」
「うん。あのさ、えーっと、その……」
早瀬くんは乱雑に頭をかいた。心なしか、いつもより頬が赤い気がする。
いつも飄々としている早瀬くんのこんな表情を見るのは初めてだ。
「昨日、委員長と如月さんの他に、もう一人いたでしょ?」
「……雪さんのこと? 黒髪ロングの」
「そう! そっか、あの子、雪さんって言うんだ。そっか……」
本名じゃないけどね、なんて言えない。私はただ呆然として、早瀬くんを見つめることしかできなかった。
どうしよう。なんか、嫌な予感がする。
「あの子のこと、俺に紹介してくれない?」
「……えっと、な、なんで?」
聞かない方がいいのかも、と思いながらも、聞かずにはいられなかった。
早瀬くんは大きく深呼吸をした後、真剣な瞳で私を見つめる。
「俺、あの子に一目惚れしちゃったんだ」
『ああ。聞いてくれるか? いや、違う。お前はたまたま、俺の独り言を聞いただけだ』
真剣な優斗くんの声に、思わず頷いた。
言っておきたいことって、なんだろう。
『このままじゃ姫乃は、高校に進学できないかもしれない』
「えっ……えっ!?」
緑光学院は中高一貫校で、外部受験をする子以外は、全員が高等部へ進学するはずだ。
成績によってクラスは変わるけれど、どれだけ成績が悪くても、進学できない、なんてことはないはず。
『いくら内部進学って言っても、私立だからな。今の出席率じゃ厳しいらしい。それで最近、やたらと三者面談とかしてるんだよ』
「……そんな……」
如月さんが、高等部に進学できない? 如月さんと、違う学校になる?
そんなの、考えたこともなかった。
『あいつはたぶん今、すごく悩んでるし、迷ってると思う。……前のあいつなら絶対、もういいって投げ出しただろうにな』
一瞬だけ、優斗くんが柔らかく笑った。
『お前のおかげだ』
「……私の?」
『ああ。保健室に委員長がきてくれるって、前から何度も嬉しそうに言ってた。最近は、委員長がいれば教室に行けるかも、なんて言ってる日もあったくらいだ』
如月さん、そんな風に思ってくれてたんだ……!
胸の奥が熱くなって、泣きそうになる。今すぐ、如月さんを抱き締めたい気分だ。
『姫乃はたぶん、お前と同じ高校に行きたいって思ってる。でも今、変身部がなくなったら、あいつは……』
続く言葉を、優斗くんは口にできないようだった。
『悪い。言い過ぎた。またな』
そう言って、優斗くんは一方的に電話を切った。
「……絶対、なんとかしなきゃ」
如月さんのおかげで、私は変われた。私は如月さんに救ってもらった。
それに如月さんは、初めて本当の自分をさらけ出せた友達だ。
真面目な委員長としての天野望結以外の私のことも、如月さんには素直に話せた。
これで終わりだなんて、絶対に嫌だ!
◆
一睡もできないまま、私はいつもよりさらに早く学校に到着した。もうすぐ夏だとはいえ、朝の教室は少し肌寒い。
「あれ? 委員長って、いつもここまで早かったっけ?」
笑いながら教室に入ってきたのは早瀬くんだ。
そう言う早瀬くんだって、いつもは遅刻寸前の時間にしかこないくせに。
「ねえ、委員長、昨日のことなんだけど」
「……うん。まだ、誰にも言ってないよね?」
「言ってないって。やっぱり、どうしてもみんなに知られたくないんだ?」
「……うん」
「委員長たちは、放課後にあそこでなにをしてるの? 教えてよ」
教えないと人にばらす、と言われたわけじゃない。でも、この状況で拒否権がないことくらいは分かる。
「放課後変身部って私たちは言ってる。放課後に、それぞれが好きな格好をして自由に過ごすだけ」
「それだけ?」
「……まあ、部活ネームっていうあだ名で呼び合うし、性格もいつもとは違うけど……」
なるほどね、と早瀬くんが頷く。どれくらいちゃんと分かってくれたかは分からないけれど、とりあえず納得はしてくれたらしい。
「あの、早瀬くん」
「なに?」
「それで、えっと……これからも、内緒にしてほしいんだけど。お願いします……!」
私は勢いよく頭を下げた。とにかくお願いするしかないって、そう思ったから。
「えっ!? ちょっと委員長、やめてよ。元々俺、ばらすつもりとかないし」
「……え?」
「だって、人にばらしたって俺に得がないでしょ。委員長たちに恨まれて、むしろ損するだけっていうか」
言われてみればそうだ。変身部の秘密をばらして、早瀬くんがなにか得をするとは思えない。
「それに俺、人の秘密をばらして楽しむほど、性格悪くないから」
「……じゃあなんで昨日、あんな言い方したの?」
ばらすつもりがないのなら、明日からのことは明日話そう、なんて言う必要はなかったはずだ。
疑いの目を私が向けると、早瀬くんは気まずそうに目を逸らした。
「……内緒にしておく代わりに、なんて言うのはダサいけど、委員長に頼みがあって」
「頼み?」
「うん。あのさ、えーっと、その……」
早瀬くんは乱雑に頭をかいた。心なしか、いつもより頬が赤い気がする。
いつも飄々としている早瀬くんのこんな表情を見るのは初めてだ。
「昨日、委員長と如月さんの他に、もう一人いたでしょ?」
「……雪さんのこと? 黒髪ロングの」
「そう! そっか、あの子、雪さんって言うんだ。そっか……」
本名じゃないけどね、なんて言えない。私はただ呆然として、早瀬くんを見つめることしかできなかった。
どうしよう。なんか、嫌な予感がする。
「あの子のこと、俺に紹介してくれない?」
「……えっと、な、なんで?」
聞かない方がいいのかも、と思いながらも、聞かずにはいられなかった。
早瀬くんは大きく深呼吸をした後、真剣な瞳で私を見つめる。
「俺、あの子に一目惚れしちゃったんだ」
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