放課後の秘密~放課後変身部の活動記録~

八星 こはく

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第6章 化学反応

第27話 クラスメート

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「それで……雪ちゃんって、どんな人がタイプなの?」

 雪さん……もとい、優斗くんの好みは、雪さんのような黒髪美少女だ。それは分かっている。つい先日も、黒髪ロングについて熱く語られたことがある。
 でも好きな男の子のタイプなんて、全然知らない。っていうか、そんなものがあるのかどうかすら、私は分からない。

「えーっと……雪さん自身みたいな、黒髪の美少女?」

 私がそう言うと、早瀬くんは真剣な表情で溜息を吐いた。

「俺、女装は厳しいと思うんだよね。身長とか骨格的に。でもまあ、雪ちゃんがどうしてもその方がいいって言うなら頑張るけど」

 なんか、いいな。
 女装をすぐに否定しなかったところに、私はなんとなく好感を覚えた。

「確かに早瀬くんは、男子のままの方がいいと思う」
「委員長もそう思う?」
「うん」

 早瀬くんはイケメンで、綺麗な顔をしている。でも別に、中性的な顔立ちってわけじゃない。
 加えて骨格もしっかりとした感じだから、あまり女装が似合うタイプではないだろう。
 もちろん早瀬くんが女装をしたいなら、全力で応援する。でも早瀬くんがなりたいのは女の子の姿じゃなくて、雪さん好みの姿になること、なのだ。
 優斗くんって黒髪美少女にはうるさいから、たぶん、中途半端なクオリティーは嫌うだろうし。

「如月さん。雪さんの男の子の好みって、分かったりする?」

 優斗くんのことに関しては、私よりずっと如月さんの方が詳しい。
 ダメもとで聞いてみると、如月さんは首を傾げた。

「えーっと、なんていうかその……恋愛的な好みかどうかまでは、分からないけど……」

 如月さんはそう前置きした。それに、視線はずっと私に向けられたまま。
 早瀬くんを見たら、緊張して喋れないんだろうな。

「男女問わず、たぶん黒髪が好きかな。あ、あと……元気系っていうよりは、ミステリアスで色気がある感じ……あ、あとはえっと……ちょっと、中二病っぽい子が好き、かも」

 さすがは従妹。如月さん、優斗くんの好みをよく分かってるな。
 ……まあ、本当に、恋愛的な好みと一致しているかどうかは分からないけど。

「なるほど。すっごく参考になるよ、如月さん!」

 早瀬くんは前傾姿勢でメモをとっている。
 分かってたことだけど、本気なんだ。

「俺、地毛は茶色っぽいから、ウィッグかぶった方がいいのかな?」
「絶対ウィッグがいるとは限らないけど、かぶった方がいいんじゃないかな。イメージもがらっと変わるし」

 それにウィッグなら、髪型も自由に変えられる。なるほど、と頷きながら早瀬くんはまたメモをとっていた。

「髪型はどんなのがいいと思う?」

 如月さんに聞くと、如月さんは数秒黙り込んだ後、あっ! と声を上げた。

「ウルフヘアとか、絶対好きだと思う! ……あ、ご、ごめん。急に大声出しちゃったりして……」
「謝る必要ないって! 教えてくれてありがとう、如月さん」
「い、いや、その、わ、わ、私なんかにお礼とか……」
「なんで?」

 きょとん、とした顔で早瀬くんが首を傾げた。

「私なんか? って、なんでそんなに自分のこと下げるの? 俺たち、普通にクラスメートじゃん」
「えっ、あ、でも、私と違っては、早瀬くんは人気者で……」
「それは周りからの評価でしょ。俺と如月さんは、どっちが下とか上とか決められるほど、お互いのこと知らないじゃん。いや、知ってもそんなの決めなくていいんだけど」

 早瀬くんの顔が一瞬、すごくおとなびて見えた。
 私は『真面目な委員長・天野望結』が嫌になってしまったり、周りからそう見られることに疲れたりすることもある。
 もしかしたら、早瀬くんもそうなのかな。『イケメンで人気者の早瀬葵』に、疲れちゃったりするのかな。
 だとすれば、早瀬くんが変身部に入るのはすごくいいことだと思う。
 変身部は、そういうのを全部脱ぎ捨てて、自由になれる場所だから。

「ご、ごめんなさい……っ!」

 如月さんが震えながら謝る。

「謝らないでってば」

 早瀬くんはそう言うと、明るい笑顔を浮かべた。

「俺も委員長も如月さんも、全員同じ中学二年生で、しかもクラスも一緒。おまけに今日からは部活まで一緒。せっかく仲良くなれそうなのに、最初から壁とか作んないでよ」

 言い終わると、早瀬くんはグラスに残っていたアイスコーヒーを飲み干した。

「だから、謝るのも、変に謙遜するのもなし。そんなことより、雪ちゃんのこともっと教えてよ」
「う、うん。分かった……」

 如月さんの緊張がゆっくりと解けていくのが分かった。
 早瀬くんって、すごい。
 こんな風に、思っていることをちゃんと言葉で伝えてくれる人だったんだ。

「委員長もさ。ここでは、いつもみたいに、委員長らしくしなくていいから」
「え?」

 もしかして、私が教室でちょっと無理してることに、早瀬くんは気づいてたの?

「俺も、二人には変に取り繕ったりしないから。まあ、雪ちゃんにはガンガン、見栄張ってでもアピールするけど?」

 冗談っぽく言って、早瀬くんが笑う。おどけたような表情が面白くて、私はつい吹き出してしまった。
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