余命数日の公爵令嬢の影に転生した俺、毒を喰らって最強の影の大精霊になる

もふもふ隊

文字の大きさ
24 / 25

ドブ掃除はエレガントですわ

しおりを挟む
「ドブ掃除、意外と楽しかったわね、レオン様」

その一言が、王立ラピス学院のきらびやかな廊下に響き渡った瞬間、周囲を歩いていた令嬢や貴公子たちの動きがピタリと止まった。ジークからは「成績を落とさないこと」を条件に、冒険者活動の許可を(半ば強引に)もぎ取った。レオンもまた、特例措置で冒険者登録を済ませている。というより彼の場合、王家から「何があってもセレナを護れ」という至上命題を下されているのだ。

「ドブ掃除楽しかったですね

お、俺はあなたとならどこでも嬉しいです(小声)」
 
貴族の学び舎に響く「異界」の会話

豪華なシャンデリアの下、優雅に歩を進めるのは、かつて「病弱な深窓の令嬢」として知られ、今は「第一王子を壁に埋めた狂犬」として恐れられるセレナ・フォルテス。そして、その後ろを忠実な猛犬のように守る騎士団総帥の息子、レオンハルトです。

二人は、昨日の初依頼(Fランク:下水道の泥浚いおよびスライム駆除)の余韻に浸ってた。

「え?ごめんなさい最後の方聞き取れなくて…」

「いえ!大丈夫です!」

前を向くレオンの耳は赤く染まっていた。
 
「…ええ。最初はあの独特の臭気に驚いたけど、カゲレナちゃんが影で泥を濾過(ろ過)してくれたおかげで、宝石の破片や古いコインがいくつか見つかったのも面白かったわ。ねえ、カゲレナちゃん?」

(ケッ、お嬢。あんな汚ねぇ場所、普通は令嬢が笑顔で語るもんじゃねーんだわ。ま、あのヘドロスライムの『発酵したドブ味』、案外悪くなかったけどな。おかげで毒耐性がさらに上がったぜ)



二人の会話を聞いていた周囲の生徒たちは、泡を吹かんばかりに驚愕していた。

令嬢A: 「ド……ドブ……? フォルテス様、今、下水道を掃除したと仰ったの……?」

貴公子B: 「しかもあのレオンハルトが、ドブ掃除…?あの二人、王宮で何を食べてきたらあんなに逞しく(狂って)しまうんだ……」

彼らにとって、冒険者ギルドは「身分の低い者が命を懸ける場所」ましてやドブ掃除など、一生縁のないはずの「不潔な作業」だ。それを、学院一の美少女とエリート騎士候補生が、お花摘みの思い出でも語るかのように談笑している。

「あ、見てレオン様。靴にまだ少し『ドブネズミの粘液』が私の靴に残ってるわ。これ、なかなか落ちないのね」

「……失礼。すぐに拭き取ります、セレナ様」

レオンハルトがその場に跪き、家宝級のシルクのハンカチで彼女の靴を拭い始める。 その際、少し持ち上がったスカートの裾から、眩いほどに白い太ももが露わになる。

周囲の令嬢たち: 「ドブ……ネズミ……粘液……」と、不潔な単語の暴力に耐えきれず、白目を剥いて壁際に崩れ落ちる。

周囲の野郎共: 泥の不潔さなどどうでもよくなった。令嬢の禁断の領域を間近で拝むレオンハルトへの殺意と、視覚情報の暴力(白い太もも)により、鼻血を噴き出しながら悶絶。

(そういえばペッパー、お前最近寝てること多いな)

『ふわぁ、深夜までお嬢様の告白パターンをレオンが考えてて…寝不足っす』

(そりゃあ、お気の毒様)

ドブ掃除で大活躍した俺

影の網(ネット)を展開: セレナの足元から伸びた影が、泥の下に広範囲に広がる。この時、俺は影の密度を調整して、「液体や細かい泥は通すが、固形物は通さない極細のメッシュ」のような状態になる。

「毒素捕食」による強制クリーニング:泥に含まれるヘドロ、腐敗物、毒素を影が「ズルズルと吸い取って食べる」ことで、泥自体のボリュームが減り、汚れが消える。

比重選別(お宝だけ浮上): 汚れを吸い取ってきれいになった液体(ただの水)と、俺が「不味くて食えねぇ!」と吐き出した無機物(宝石、金貨、魔石)だけが、影の表面にキラキラと残される。

(お嬢、見てろよ。このドロドロを俺がゴクゴク飲んでやると……ほら、食えないゴミ(宝石)だけが残るだろ? 手を汚さずに掃除完了だ、エレガントだろ?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、休職致します

碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。 しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。 作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。 作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...