【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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第二章(受胎編)

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 怖いはずなのに、恐ろしいはずなのに。妖魔に触れられる場所は全て、暖かくて気持ちが良かった。零れる声は、悲鳴ではなく嬌声で。無抵抗に晒し続けた喉を最後に甘噛みされた瞬間には、あまりの心地よさにふるりと身体を震わせてしまった。蕩けた吐息をこぼすジュゼを愛し気に見つめた妖魔が、一度顔を遠ざける。
 快楽に潤んだ瞳で、ぼんやりと己の身体に目を向ければ、剥き出しの肩口にはいくつもの赤い痣が浮き出していた。自分で見るには限界がある首元も同様なのだろうと理解すれば、強い雄に執着され、所有の証を刻まれる喜びに、すでに雌として馴らされつつある身体の奥が甘く疼く。
 無意識に腿を擦り合わせながら、まだ受け入れ切れない雌の衝動を、大いなる困惑と共に震えて耐えるジュゼの身体を締め付けるように抱き締めながら、妖魔は優しい声で囁き笑った。

「叶うことなら、あなたの全てを手に入れてから愛して差し上げたいところですが。何しろ一族がもう限界で」

 一刻も早く子供をと、泣いて私に懇願するものですから、と。苦笑と共に囁かれるその言葉の意味を、まだジュゼは上手く呑み込めない。彼の精を、最奥で受け止める悦びを知ってしまった胎は甘く震えたが、それでも。この身体に子供が、宿るだなんて。
 花嫁と呼ばれても、女の子でも出さないような声を上げながら男に抱かれても。赤ちゃんが出来るなんて思えない。それは未だ幼くもある人間の少年にとっては当然の戸惑いと恐怖だったが――逆に、すでに。子供ができないことこそを不安がっているような自らの心の動きに、ジュゼはぞくりと背をわななかせた。
 あらゆる不安に満たされながら、ジュゼは庇うように自らの胎に手を当てる。その手に手を重ねた妖魔の赤い瞳が、ちりり、と。身を焼き焦がすような熱を帯びた。

「怖がらなくて大丈夫ですよ。あなたが欲しいと思ってくださらなければ、決して一方的には子供はできませんからね」
「僕が……?」
「ええ、ふふ。そうして、あなたに。私の子供を産んでもいいと思ってもらえるかは、私の甲斐性次第です」

 ぎゅう、と。ジュゼを抱き締める腕にはますます力が込められて、決して痛くはない程度の力で抱き潰される体の微かな息苦しさに、胸がドキドキしてジュゼの体温も上がっていく。はふ、と。苦しい息を吐き出した唇を美しい指になぞられれば、無意識にも口付けを請うように薄く開いてしまった。
 嫌だと、駄目だと拒絶しなければとは思うのに。自由にならない身体に渦巻くのは、これから始まってしまうだろう行為を待ち焦がれる気持ちばかりで。暖かな指にまさぐられる肌は、すでに淫らな期待に火照っていた。

「必ず、私を好きになって頂けるように尽くしますから。……今は、蜜月を先に」
「あ……っ」

 横抱きにされていた身体を、正面を向くようにしっかりと抱き締め直され、妖魔の膝の上に優しく拘束される。
 膝を跨ぐように座らされれば脚が自然と大きく開き、薄衣越しにもはっきりと解る灼熱の男根を尻のあわいに感じて、身体が震えた。
 前から見れば普通のキュロットに見えなくもない衣服には、その実大胆なスリットが入っていて、背面は一枚の布に覆われているだけだった。その部分を捲ってさえしまえば、すぐに生身の肌が剥き出しになってしまうのは明白で。脚を閉じることもできない不安にきゅっと閉まった内股を優しく撫でた指が布地の内側に入り込み、薄い尻の狭間をくすぐるようになぞる。
 むずむずと腰を浮かせてしまったジュゼを咎めるように性急に、一夜の交接だけですっかり入り口へと変わってしまったその穴へ、ぐちゅりと音を立ててしなやかな指が押し入った。

「ふあっ……!」
「まだ、柔らかいままですね」

 空いた片手で、ジュゼの上体を押さえるついでのように胸を弄りながら、妖魔が二本目の指を穴にかける。鋭い爪に引っ掛けるようにして穴の縁を伸ばされたと思った次の瞬間には、その指もずちゅりと尻穴に埋め込まれていた。

「んうっ⁉ んっ、ふっ」

 すらりと細長くも骨ばったその指を、二本も容易く飲み込んだその穴から、ぐちゅぐちゅと生々しい音がする。奥を抉ってから浅い場所まで抜き出されて、懸命に窄もうとする肉筒を押し広げながら、再度奥まで捻じ込まれる感覚がたまらなかった。じゅん、と。潤んだ熱い粘膜をほぐすように、しなやかな指がバラバラに動いて穴を内側から割り広げ、広範囲に刺激を加えながら幾度も出し入れされる。
 本来異物が入るべきではない場所を往復される違和感は、もうほとんど感じられなかった。指とは比べ物にならないほどに固くて太い灼熱を飲み込んだ記憶も生々しい粘膜は、むしろ物足りないとばかりに貪欲に濡れながら妖魔の指に絡みつく。懸命にその指をしゃぶろうとする粘膜を宥めるように、妖魔は微かに指を折り曲げて、ふっくらと存在を主張するジュゼの気持ちのいい場所をこそぐように抉って刺激をした。
 傷付けないように気を付けてくれていると解ってしまうほどに丁寧な指の動きに紛れて、時々意地悪をするようにちくりとした爪の刺激を加えられて、吐息が淫らな興奮に上擦る。
 本来であれば、一生気付くことさえなかっただろう性感帯をごりゅごりゅと捏ねられて、声もなく感じ入ったジュゼの上気した肌から汗が噴き出した。抑える布地もなく股の間に垂れていたペニスに血が巡って芯が通り、前面のキュロット部分に擦れて窮屈に腫れ上がる。

「気持ちいいですか? ふふ、もう一本増やしましょうね」
「あぅっ、あっ⁉ あっ、ああっ!」
「ああ……あなたの声は心地良いですね。もっとたくさん聞かせてください」

 あっという間に三本にまで増えた指が、いやらしい水音を立てる尻穴を大きく掻き回した。
 代わる代わるに嬲られる気持ちのいい場所は甘い刺激に膨張し、体積を増すほどにますます手酷く責められる。柔い粘膜の中に潜んでいたその場所は、もはや隠れようがないほどに固くしこって、妖魔の指にいいように弄ばれて悶えていた。
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