【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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番外編1(新婚旅行編)

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 突然海の底は流石に怖いからと、取り敢えず返事は保留にしてもらって。その代わりに海辺までは遊びに連れて行くことも約束してもらって、ジュゼはそれを楽しみに思いつつ水辺にしゃがみこんだ。
 最初は恐る恐る、次第に冷たい感触が火照った肌に気持ちいいことに気付いてからは腕全体を浸すほどに差し入れて遊んでいる内に、大分日は高くなっていた。
 これ以上は冷えてしまうからと、水辺から離されて水気を拭ってもらって、昨日は見えなかった庭の花壇を覗いて回る。色とりどりの花々は優しい色をしていて、とてもここが魔界とは思えない平穏に満ちていたが、綺麗だとは思えども一つとして見覚えのある花のないことに、やはりここは自分のいた場所とは違う所なのだと言う不思議な気持ちを噛み締めた。
 いい気候ですね、と。穏やかに笑ったレーヴェは花の中に座り込み、にこりとジュゼに微笑みを向ける。

「丁度いいですから、お昼にしましょう?」

 さあどうぞ、と。腕を広げるレーヴェの前で、一度赤くなったジュゼは立ち尽くした。
 それでも、昨日、精液を注いでもらえなかった体は空腹を覚えてもいる。人の目もないことを改めて確認するように首を巡らせた後、ジュゼは恐る恐るレーヴェの腕の中に納まった。
 光を浴びて、ますます暖かな腕の中に抱かれることは幸せなのに、そんな幸福に包まれながらも疼く体を持て余す自分がひどくいやらしい存在になってしまったような気がして。赤みの差しかけたジュゼの頬に触れた手に顔を持ち上げられて、しばし二人で見つめ合う。逆光の影がかかる白皙の美貌は、何年経っても見慣れるということもなく、ジュゼの胸を甘く高鳴らせた。
 逃げられないように、首の後ろを捉えられると、逃げる気などとうになくした今になっても体が竦む。甘いおののきに震える体を優しく掻き抱いて、レーヴェがそっと唇を重ねた。
 夢魔の花嫁となってからは、性交にまつわる全てのことが食事の代わりだった。朝から晩まで情交を続けるような日は、全く空腹を覚えない。そうでない日は人のように、朝昼晩の区切りでの触れ合いを、体が勝手に求めて止まなかった。
 口付けは、触れ合いの中でも最も簡単なものではあったけれど。精を吸われれば気が遠くなるような、精を注がれれば体が燃え上がるような。それはどちらも至上の快楽で、ジュゼにとっての幸福だった。彼がその気になれば、口付けだけでもジュゼを失神させてしまえる。――たった一度、戯れに。舌に淫らな紋章を刻み付けられて愛された夜の記憶は、ジュゼの体に消えない炎を灯してしまった。
 いいようにジュゼを翻弄する巧みな口付けに誘われて、気付けば両手両足で縋り付いて甘えていたジュゼは、ぐちゅりと音を立てて後ろに触れた指に気付いてハッと目を剥いた。とろとろと粘った液がまるでお漏らしでもしたかのように服を濡らしていて、発情していることが一目瞭然の酷い有り様に、一瞬で我に返ったジュゼの頬が赤く染まる。

「甘い匂いがしますね」

 舐めてもいいですか? と。ダメと言われることなど考えてもいないような声にそう囁かれて、ジュゼは羞恥にふるふると震えた。
 ダメ、と。言えない自分を、誰よりもはっきりと理解していたばかりに。

「……いい、よ」

 消え入りそうな声で是の答えを呟くと、ジュゼは自らその場に伏せて、震える膝を立てて尻を上げる。下肢の衣服を止める紐まで解いて、レーヴェが行為をしやすいように、健気に尻を差し出して見せた。
 衣服を下ろそうとした手はレーヴェに止められ、殊更にゆっくりと、濡れてしまっている服をずり下ろされる。その場所で快楽を得ることに慣れてしまった証のように縁をふっくらと盛り上がらせた穴は、外気に触れてひくひくと物欲しげに震え、紐程度の存在感しかない下着をちゅぷちゅぷと淫らに食んでいた。
 すっかり昂ってしまった体は期待に濡れて、次から次へと奥から蜜を垂れ流す。周囲の花々よりも蠱惑的に香りはじめた己の体液が、肌を伝って土に垂れる微かな音を聞いてしまったジュゼの瞳に涙が滲んだその瞬間に、とろりと熱を帯びた舌がするりと体の内側を舐め上げた。

「ふぁっ、あっ、ああっ♡ あ……っ!」

 存在感の薄い下着ごと尻肉を割り開けば、もう丸見えになってしまう無防備な穴から垂れる蜜を舐めたその舌に、弱い入り口をぐちぐちとくじられて、途端に悲鳴のような嬌声が明るい花園に響く。いつもなら口を押えられるシーツもなく、花に顔を押し付けることも可哀想でできないジュゼは、今にも崩れ落ちそうな四つん這いで懸命に体を支えて喘いでいた。
 ほんの数年前まで、何者の侵入も許したことがなかったその穴はすっかり淫らに熟れていて、天性の媚薬を満たした舌を歓んで迎え入れながらきゅうきゅうと収縮する。深い場所へ招き入れようとするその健気な振る舞いに応えるように、奥まで捻じ込まれた長い舌が前立腺にまで触れて、腰骨に強烈に響いた快楽にジュゼの嬌声が引き攣れた。

「あっ⁉ アァッ! いや、あ、あ、あうぅっ♡」

 がくりと腕が崩れて、下半身だけを剥き出しにされた体が汗に濡れる。肉膣内にたっぷりとたまった蜜を啜り上げるように尻穴を吸われながら、絶頂を得て痙攣する脚を抱き締められて脳が多幸感に蕩けた。
 はしたない声を上げて悶えれば悶えるほど、溢れてしまう蜜を飽きずに舐めていたレーヴェが、嬌声も保てなくなってきたジュゼの有り様に気付いて小さく笑う。
 唇を離して、痙攣するジュゼを背後から抱き上げると、己の膝の上に下ろしてよしよしと頭を撫でた。

「キリがなくなってしまいますね」

 ここまでにしましょうか、と。宥めるように優しく告げられ、掌に付いた草の葉を取り払われながら、ジュゼははあはあと荒い息をついた。
 力の入らない脚はレーヴェの膝を跨いだ形でカクカクと震え、しばらく休まなければ歩くこともできないほどだったけれど――もっと、たくさん欲しいと。そんな欲深い衝動を抑え切れない身体は、熱を持て余して火照ったままだ。レーヴェの胸に頬をすり寄せ、剥き出されたままの尻を押し付けて甘えていると、胴に回された白い手が締め付けるようにきゅう、と絡んだ。

「あまり愛しいことをなさらないでくださいね」

 時間はたくさんありますから、と。耳に触れる吐息混じりの囁きにも、焦らされるような心地がして。
 ジュゼはせめて、彼をたくさん感じられるように、体の向きを変えて正面から両手で抱き着いた。
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