風紋(Sand Ripples)~あの頃だってそうだった~

宗像紫雲

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第九章北満経略

第九章第四節(時局処理方案)

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                 四

 中央の手にかかった「満蒙問題」の解決策は「時局処理方案」としてまとめられ、十月八日の陸軍三長官会議でやっと正式決定する運びとなった。
 その骨子は次の通りとなる。

 「一、満蒙に関するもの
 ㋑満蒙問題は大陸本土より分離して満洲に樹立される新政権と交渉して根本解決を図る。その間、できる限り既得権益の実現に努める。
㋺新政権樹立の動きには「干渉しない」方針を継続し、民国から満蒙の分離独立を期待するような意図は表に出さない。
㋩満蒙に関連して民国政府側との間に交渉は、満蒙と民国の一般関係事項に止め、満蒙自体に関する事柄は絶対に避ける。
 二、民国本体に関するもの
 ㋑排日排貨など不当な行為を根絶すべく警告を発し、これに従わない場合や実際に行動で示さない場合には、必要にして有効な措置を取る旨通告し、これを内外に声明する。
 ㋺邦人居留民の現地保護が必要と判断される場合には、これらを北平、天津、青島、漢口、上海、厦門などに集め、揚子江沿岸や青島、厦門については海軍がその保護にあたる。また北平、天津については必要に応じて陸兵を派遣しその保護に任ずる。
 三、第三国に対する態度
  以上に関し諒解を得られるよう努め、不法な干渉に対してはこれを排除する。
 四、国民指導並びに宣伝
  時局に関する理解・認識を徹底させ、挙国一致して目的の貫徹に邁進する」
 このほか、鉄道問題や商組権、課税問題、金融など実務的な事項を「別紙」に列挙した。

 皮肉にも十月八日と言えば、石原中佐自ら飛行機へ乗り込んで錦州を爆撃した日と重なる。後日、爆撃の理由を問われた石原は、「満蒙問題の解決に政府や軍中央部が本腰となるよう尻を叩いた」と答えたという。中央の動きが鈍いのに苛立いらだったとの弁だが、むしろ関東銀の一撃で各地へ散り散りになった王以哲おういてつの軍が、この頃から錦州へ再集結して反攻の機会をうかがい始めた。こうした機運が高まるとともに、新政権の要人たちの間に動揺が広がりだした。だからここでガツンと一発決めておく必要があった--と言う方が正確だろう。

 仮に「時局処理方案」がもう少し早く成案して出先へも伝わっていたなら、関東軍は錦州爆撃を思いとどまっただろうか?
 少なくとも中央が無関心でないというメッセージくらいは伝わっただろうが、中央の計画は関東軍が九月二十二日に策定した「満蒙問題解決策」の域を出ていない。その後の諸般の関係を踏まえて出先は十月四日、「独立国を建てる」という方向へ舵を切っていた。中央の「三段階論」ではとても“こと”は収まらないと判断していたのである。
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