173 / 466
第九章北満経略
第九章第四節(時局処理方案)
しおりを挟む
四
中央の手にかかった「満蒙問題」の解決策は「時局処理方案」としてまとめられ、十月八日の陸軍三長官会議でやっと正式決定する運びとなった。
その骨子は次の通りとなる。
「一、満蒙に関するもの
㋑満蒙問題は大陸本土より分離して満洲に樹立される新政権と交渉して根本解決を図る。その間、できる限り既得権益の実現に努める。
㋺新政権樹立の動きには「干渉しない」方針を継続し、民国から満蒙の分離独立を期待するような意図は表に出さない。
㋩満蒙に関連して民国政府側との間に交渉は、満蒙と民国の一般関係事項に止め、満蒙自体に関する事柄は絶対に避ける。
二、民国本体に関するもの
㋑排日排貨など不当な行為を根絶すべく警告を発し、これに従わない場合や実際に行動で示さない場合には、必要にして有効な措置を取る旨通告し、これを内外に声明する。
㋺邦人居留民の現地保護が必要と判断される場合には、これらを北平、天津、青島、漢口、上海、厦門などに集め、揚子江沿岸や青島、厦門については海軍がその保護にあたる。また北平、天津については必要に応じて陸兵を派遣しその保護に任ずる。
三、第三国に対する態度
以上に関し諒解を得られるよう努め、不法な干渉に対してはこれを排除する。
四、国民指導並びに宣伝
時局に関する理解・認識を徹底させ、挙国一致して目的の貫徹に邁進する」
このほか、鉄道問題や商組権、課税問題、金融など実務的な事項を「別紙」に列挙した。
皮肉にも十月八日と言えば、石原中佐自ら飛行機へ乗り込んで錦州を爆撃した日と重なる。後日、爆撃の理由を問われた石原は、「満蒙問題の解決に政府や軍中央部が本腰となるよう尻を叩いた」と答えたという。中央の動きが鈍いのに苛立ったとの弁だが、むしろ関東銀の一撃で各地へ散り散りになった王以哲の軍が、この頃から錦州へ再集結して反攻の機会をうかがい始めた。こうした機運が高まるとともに、新政権の要人たちの間に動揺が広がりだした。だからここでガツンと一発決めておく必要があった--と言う方が正確だろう。
仮に「時局処理方案」がもう少し早く成案して出先へも伝わっていたなら、関東軍は錦州爆撃を思いとどまっただろうか?
少なくとも中央が無関心でないというメッセージくらいは伝わっただろうが、中央の計画は関東軍が九月二十二日に策定した「満蒙問題解決策」の域を出ていない。その後の諸般の関係を踏まえて出先は十月四日、「独立国を建てる」という方向へ舵を切っていた。中央の「三段階論」ではとても“こと”は収まらないと判断していたのである。
中央の手にかかった「満蒙問題」の解決策は「時局処理方案」としてまとめられ、十月八日の陸軍三長官会議でやっと正式決定する運びとなった。
その骨子は次の通りとなる。
「一、満蒙に関するもの
㋑満蒙問題は大陸本土より分離して満洲に樹立される新政権と交渉して根本解決を図る。その間、できる限り既得権益の実現に努める。
㋺新政権樹立の動きには「干渉しない」方針を継続し、民国から満蒙の分離独立を期待するような意図は表に出さない。
㋩満蒙に関連して民国政府側との間に交渉は、満蒙と民国の一般関係事項に止め、満蒙自体に関する事柄は絶対に避ける。
二、民国本体に関するもの
㋑排日排貨など不当な行為を根絶すべく警告を発し、これに従わない場合や実際に行動で示さない場合には、必要にして有効な措置を取る旨通告し、これを内外に声明する。
㋺邦人居留民の現地保護が必要と判断される場合には、これらを北平、天津、青島、漢口、上海、厦門などに集め、揚子江沿岸や青島、厦門については海軍がその保護にあたる。また北平、天津については必要に応じて陸兵を派遣しその保護に任ずる。
三、第三国に対する態度
以上に関し諒解を得られるよう努め、不法な干渉に対してはこれを排除する。
四、国民指導並びに宣伝
時局に関する理解・認識を徹底させ、挙国一致して目的の貫徹に邁進する」
このほか、鉄道問題や商組権、課税問題、金融など実務的な事項を「別紙」に列挙した。
皮肉にも十月八日と言えば、石原中佐自ら飛行機へ乗り込んで錦州を爆撃した日と重なる。後日、爆撃の理由を問われた石原は、「満蒙問題の解決に政府や軍中央部が本腰となるよう尻を叩いた」と答えたという。中央の動きが鈍いのに苛立ったとの弁だが、むしろ関東銀の一撃で各地へ散り散りになった王以哲の軍が、この頃から錦州へ再集結して反攻の機会をうかがい始めた。こうした機運が高まるとともに、新政権の要人たちの間に動揺が広がりだした。だからここでガツンと一発決めておく必要があった--と言う方が正確だろう。
仮に「時局処理方案」がもう少し早く成案して出先へも伝わっていたなら、関東軍は錦州爆撃を思いとどまっただろうか?
少なくとも中央が無関心でないというメッセージくらいは伝わっただろうが、中央の計画は関東軍が九月二十二日に策定した「満蒙問題解決策」の域を出ていない。その後の諸般の関係を踏まえて出先は十月四日、「独立国を建てる」という方向へ舵を切っていた。中央の「三段階論」ではとても“こと”は収まらないと判断していたのである。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【新作】1分で読める! SFショートショート
Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。
1分で読める!読切超短編小説
新作短編小説は全てこちらに投稿。
⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる