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第十二章錦州
第十二章第三十三節(退却)
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三十三
前節で牛荘が敵義勇軍に占領された件を「トリックだったかもしれない」と疑ったのは、朝鮮から一個旅団の増援が得られると決まった途端、関東軍は独立守備歩兵第三大隊へ命じて牛荘から簡単に兵匪を追い払ってしまったからだ。
何だ、やればできるんじゃないか--という素朴な疑問である。
十二月二十六日に後方の危機を訴えた関東軍は翌二十七日、奉勅命令を受けて朝鮮から増援を得た。次いで二十八日には牛荘で兵匪を蹴散らした独守歩兵第三大隊を第二師団へ追従させるべく、牛荘=磐山道を西進させた。
これと同時に、大連へ上陸し北上中の混成第八旅団第十聯隊から一個大隊と、野砲兵第十聯隊から一個中隊を磐山方面へ直行させ、さらに洮昴線の警備から原駐地へ帰還中の独守歩兵第六大隊も、同方面へと向かわせた。
錦州攻撃へ向けた関東軍の運動はさらに続く。
二十七日に遼河を渡った第二師団は翌二十八日、田庄台の宿営地を出発。二十九日午後二時にはとうとう騎兵隊が当面の目的地である磐山へ到達し、錦州軍敗走させた。十二月十六日の電報で拠点の保持を命じられた榮臻だったが、錦州軍は闘うこともなく陣地を明け渡してしまう。
さらに騎兵隊に追いついた第二師団前衛部隊が磐山へ入り、本隊は近隣の八里子へ宿営。次の一手に備えた。
内地からの増援隊である混成第八旅団は十二月二十八日から三十日にかけて、続々と大連へ上陸し奉天へ到着した。関東軍はこれら部隊を北寧線で南下させるとともに、十一月の繞陽河での教訓もあって鉄道沿線と並行する道路に有力な部隊を並進させることにした。
そのため第三十九旅団に自動車隊主力を配属させ、押収車輛や部品交換などで急ごしらえした車輛計二百八十五台を線路沿いに進ませた。これらも二十九日には新民へ到着。三十日払暁の出動に備えた。
こうした準備が進む中、飛行隊は偵察を怠らなかった。
その報告はこんなものだ。
三十日午前十時半 「敵は何ら抵抗することなく白旗堡を撤退、打虎山陣地には配兵を認めず。目下その西方を退却中なるが如し」
同日午後二時半 「午後二時頃錦州駅前は甚だしく雑踏し、五、六百の部隊と百輌の列車あり。西進の姿勢に在り。ホームに荷物山積す」
同じく山海関の監視隊からも錦州軍を乗せた列車が続々と関内へ退いていく様子が報告された。
平津の情勢がふたたび悪化して、張学良が身の保全を図ったという。
後顧の憂いを抱えていたのは、彼もまた同じだったようだ。
前節で牛荘が敵義勇軍に占領された件を「トリックだったかもしれない」と疑ったのは、朝鮮から一個旅団の増援が得られると決まった途端、関東軍は独立守備歩兵第三大隊へ命じて牛荘から簡単に兵匪を追い払ってしまったからだ。
何だ、やればできるんじゃないか--という素朴な疑問である。
十二月二十六日に後方の危機を訴えた関東軍は翌二十七日、奉勅命令を受けて朝鮮から増援を得た。次いで二十八日には牛荘で兵匪を蹴散らした独守歩兵第三大隊を第二師団へ追従させるべく、牛荘=磐山道を西進させた。
これと同時に、大連へ上陸し北上中の混成第八旅団第十聯隊から一個大隊と、野砲兵第十聯隊から一個中隊を磐山方面へ直行させ、さらに洮昴線の警備から原駐地へ帰還中の独守歩兵第六大隊も、同方面へと向かわせた。
錦州攻撃へ向けた関東軍の運動はさらに続く。
二十七日に遼河を渡った第二師団は翌二十八日、田庄台の宿営地を出発。二十九日午後二時にはとうとう騎兵隊が当面の目的地である磐山へ到達し、錦州軍敗走させた。十二月十六日の電報で拠点の保持を命じられた榮臻だったが、錦州軍は闘うこともなく陣地を明け渡してしまう。
さらに騎兵隊に追いついた第二師団前衛部隊が磐山へ入り、本隊は近隣の八里子へ宿営。次の一手に備えた。
内地からの増援隊である混成第八旅団は十二月二十八日から三十日にかけて、続々と大連へ上陸し奉天へ到着した。関東軍はこれら部隊を北寧線で南下させるとともに、十一月の繞陽河での教訓もあって鉄道沿線と並行する道路に有力な部隊を並進させることにした。
そのため第三十九旅団に自動車隊主力を配属させ、押収車輛や部品交換などで急ごしらえした車輛計二百八十五台を線路沿いに進ませた。これらも二十九日には新民へ到着。三十日払暁の出動に備えた。
こうした準備が進む中、飛行隊は偵察を怠らなかった。
その報告はこんなものだ。
三十日午前十時半 「敵は何ら抵抗することなく白旗堡を撤退、打虎山陣地には配兵を認めず。目下その西方を退却中なるが如し」
同日午後二時半 「午後二時頃錦州駅前は甚だしく雑踏し、五、六百の部隊と百輌の列車あり。西進の姿勢に在り。ホームに荷物山積す」
同じく山海関の監視隊からも錦州軍を乗せた列車が続々と関内へ退いていく様子が報告された。
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後顧の憂いを抱えていたのは、彼もまた同じだったようだ。
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