風紋(Sand Ripples)~あの頃だってそうだった~

宗像紫雲

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第二部第十三章スチムソンドクトリン

第十三章第二十八節(自由化)

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                                               二十八

 英米がしきりに気をんだのは第五号希望事項の一部だったが、「二十一箇条問題」の本丸は第二号の満蒙に関する諸問題だ。
 取り分けで最も紛糾したのが同号に掲げた第二条および第三条に関する問題、すなわち満蒙における日本人の居住、往来、営業の自由に関する協議であった。
 計二十五回の協議全体を通して、実に十九回にもわたってこの問題に時間と労力を費やしている。

 こまかい論点は次節へ譲るが、簡単に言えば日本の要求は満州の市場開放と自由化の促進である。
 これに対する北京側の対案は、商埠地しょうふちの増設もしくは制限付きの雑居主義のどちらか一方--というものだ。
 つまり長崎の平戸のような居留地を設けてその中で居留、往来、商業の自由を認めるか、急患的な制約を外す代わりに権利や行動に制約を設けるというもの。
 「それでは我が要求との掛け隔てが大きい」とする日本政府は、妥協案として商埠地増設と制限付き雑居主義の併用を主張したが、先方は「いやいや、どちらか一方だ」で譲らず、議論は平行線をたどった。
 北京側抵抗の理由は、三月十日の協議に際して示された次の言葉に集約される。

 「満州開放(中略)、治外法権下にある外人雑居を許すことはある意味において支那の主権を制限する如き形となり、支那としては到底同意し得べき性質の事柄にあらず」

 まことにご節ごもっともである--。
 ここで筆者は一九八〇年代の「牛肉、オレンジの自由化」を思い出してしまった。「市場の開放」とは常に主権の侵害と背中合わせの関係にある。だから当時の日本政府も精一杯の抵抗を試みた。
 だがひとたび国を開いて自由貿易の世界へ身を投じた以上、主権の制限を受けるか「保護主義」のそしりを受けるかの二択を迫られるのは、避け得ようのない宿痾しゅくあなのである。
 それが嫌ならば、ふたたび国を閉ざして鎖国するしかない。

 他国の主権に干渉を加えることが“侵略”となるならば、満蒙に対する日本の政策を“侵略”と呼ばわるならば、八〇年代の「自由化圧力」だって立派な“侵略”行為と見なされるべきではないか?
 そう言ったからといって、筆者は決して「自由化」に水を差す意図など持ち合わせていない。ただアンバランスな議論に一石を投じておきたいだけである……。
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