風紋(Sand Ripples)~あの頃だってそうだった~

宗像紫雲

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第十五章リース=ロスの幣制改革

第十五章第三十八節(辞表)

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                三十八
 
 河北方面でたて続けに起こった小勢り合いに妥協的態度を取り続けた汪兆銘おうちょうめい行政委員長ら親日派要人は、政府部内の欧米派から猛烈な突き上げを食らった。こうした亀裂を前にして、肝心の蒋介石しょうかいせきは煮え切らない態度を取り続け、政権内の混迷を深めていった。

 周囲から「売国奴」呼ばわりされながらも「対日協和外交」を主導してきた汪兆銘は、六月末から病気を理由に休暇を取り、七月十五日以降は上海から青島へ移った。この間、宋子文、孔祥熙らの欧米派は須磨弥吉郎総領事を相手に借款話を進める一方で、政権内に陳立夫ちんりつふや弟の陳果夫ちんかふ蒋介石しょうかいせき直系の要人を引き入れ“親日派”の一掃を目論んだ。二人は藍衣社らんいしゃと“双璧”をなす国民党系秘密結社の「CC団(中央倶楽部)」を創設したことで知られる。

 八月七日開かれた中央政治会議では、その陳立夫や李石會りせきかい覃振たんしんといった反汪兆銘派の急先鋒が結束して対日協和外交を論難した。
「外交部の政策は信頼できない。別に外交委員会を設置し、これによって対日外交を指導すべし」--。
 李石會らは公然と中央政府を否認し、少なくとも行政委員長による外交部長兼任を解く案を上程、通過させようとした。青島でこれを聞いた汪兆銘は激怒し、翌八日ただちに辞意を表明した。

 このとき蒋介石は善後処置を監察院長于右任らに丸投げし、またもや玉虫色の態度を取った。これに失望した顧孟餘こもうよ(鉄道)、陳公博ちんこうはく(実業)、王世杰おうせいけつ(教育)、何應欽かおうきん(軍事)ら汪直系の各部長は十三日付で辞表を提出した。
 ここに至ってようやくことの重大さを悟った党中央政治会議は、遅まきながら汪兆銘の慰留に努める。蒋介石も十六日以降、廬山ろざんで相次ぎ要人らと会談するとともに、張群ちょうぐんを青島に派遣して汪兆銘の翻意を説得した。
 
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