山田ハウス

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一般的に曾祖母のことをひいおばあちゃんと呼ぶらしい。でも、私の家は違う。白髪で、しわしわで、腰が曲がったご飯をいっぱい食べる小さな曾祖母を大きいおばあちゃんと呼んでいた。
そんな曾祖母は父方で、実家は静岡にあった。お盆とお正月には、富士山と曾祖母と祖父母が迎えてくれた。
幼少期の曾祖母との記憶は朧げなものが多い。しかし、かわいがってもらったということだけ鮮明に覚えている。畑仕事や編み物を一緒にした。兵庫に帰る際は最後握手をして帰る。毎回、握手とともに「晃一朗(父)と兄弟を頼むよ~」と言葉を添えられた。
その手は大きくとても温かかった。
光陰矢の如し。私はすくすく成長するが、曾祖母はだんだんできることが減っていく。
私が高三の時には一日のほとんどをベッドで過ごすようになった。認知症になり私の顔もわからなくなった。
会うたびに自己紹介をする。「ただいま~憲誠だよ~。」この言葉で私だと認識する。祖父の憲二郎、曾祖父の誠で憲誠。名付け親は曾祖母だ。忘れてもらっちゃあ困る。
でも、第一声は「大きくなったねぇ」、握手の時には、「晃一朗(父)と兄弟を頼むよ~」だった。不思議とこれだけは昔から変わらない。
昨年から急に具合が悪くなる。本格的に寝たきりだ。それからというもの二カ月に一回顔を見せるようにした。
歳月は人を待たず。残暑の残る9月の朝、青い富士山の下で安らかに眠った。結局その年も片手で数えるくらいにしか会うことができなかった。その夜、兵庫を発ち、静岡へ向かう。心躍らない帰省は初めてだ。
父の実家には私の作ったご飯を「立派になったねぇ」と食べてくれた曾祖母の元気な姿はなく、ただ静かに、横たわっていた。泣いた、ただただ泣いた。一呼吸置き、大きいおばあちゃんの手に触れた。
その手は小さく冷たかった。
それからは一瞬だった。お化粧をし、きれいになり白く大きな箱に入った曾祖母と翌日お別れした。数時間前までそこにいた曾祖母は小一時間で骨になった。
思い出せば、私への最後の言葉も「晃一朗(父)と兄弟を頼むよ~」だった。
大きいおばあちゃんみんなには迷惑をかけてばかりです。私はお父さんと兄弟を守れているでしょうか。
でも誓うよ、お父さんと兄弟たちは絶対に守るよ。大きいおばあちゃんより何回りも大きくなったこの手で。
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