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第2章 宿屋
ベーコン披露
しおりを挟む翌朝、昨日のフレンチトーストのことがあったからか、お客さんは食堂に来るなり、テーブルを見るようになった。そんなに気にしなくてもいいのに(泣)
だからというわけではないが、今朝はお客さんがテーブルについてからベーコンを焼いて出すようにした。やっぱり少し驚きがあるようだ。ちょっと色が違うもんなー。手を出すのに躊躇してるのがわかる。
「えっ? スゴく美味しい…」
思わぬところから声がした。
それは昨日声をかけてくれた「エリシオン」のノエルさんだった。
「本当だ。美味しいね、これ」
そのノエルさんの向かい側では、爽やかな笑顔を浮かべたクリスさんが同意している。ちょうどいい機会なので、2人に気になってたことを聞いてみる。
「ノエルさんにクリスさん、ありがとうございます。この肉はオーク肉にひと手間処理を加えたものなんですが、味がしつこくないですか?」
「全然。むしろ塩加減がちょうどいいと思うよ」
「よくこのような料理を思い付きますよね、昨日のもそうなんですが」
クリスさんの答えの後に、さりげなくノエルさんが昨日のことを蒸し返してくる。そんなにフレンチトースト気に入ってくれたのかな? まぁ褒め言葉と受け取っておこう。
「喜んでもらえたようでよかったです。ここでしか味わえないようなものをお出ししたくて思い付いたんです。一応、セレナには味見してもらってから出すようにしてますけどね」
「一応って…」
ヤバいな。セレナに聞こえてたかー。
後で揉める前に何とかしないと…。
「おっ! 今日は肉か!」
って良いのか悪いのか、このタイミングでアイゼンの幻陽さんたちが食堂に入ってきた。
他のお客さんのテーブルを見て、フォルティスさんが今朝の料理に気が付いたようだ。
「シーマ、俺らにも頼む」
「はい。すぐにお持ちします」
何か言われたら面倒なので、3枚いっぺんに焼いて、3人分同時に出した。
「ん? オークにしちゃ、ちょっと色が違くねぇか?」
「シーマのことだもん、また何かあるのよ」
あー、エテルナさんからは変わり者扱いされてるな、これ。まぁ実際変わってるって言えば変わってるしな。そもそもこの世界の人間ではないしね。
「えー、オーク肉にはひと手間加えてますが、問題なく召し上がっていただけると思います。こちらも昨日セレナのお墨付きをもらってますので」
「ほう、セレナちゃんがいいっていうなら間違いないな! 食べるぞ!」
良し! さりげなくセレナを持ち上げられた。さっきの失言?はきっとチャラになったことだろう。なったよね? セレナの顔は怖くて見れないけど…。
「「「…。」」」
あれ?
何か予想と違うなー。
美味いにしろ不味いにしろ、もっと反応があると思ってた。
「これはひと手間なんてもんじゃないな」
うわー、オルテガさんってマジで何者?
何をしたのかまでわかっちゃうのかな?
「私は詳しいことはわからないけど、美味しいのだけははっきりしてるわ」
「なぁシーマ、お前オークの肉に魔法でもかけたのか? それくらい美味いぞ」
フォルティスさん上手いこと言うなーって関心してる場合じゃないよな。ちゃんと対応しないといけないところだ。
「ありがとうございます。喜んでもらえたようで、ひと手間加えた甲斐がありました」
「そりゃあまぁいいんだが、気が付いたらもう食べ終わっちまった。シーマ、すぐじゃなくていいからよ、またこれ作ってくれ」
「わかりました。近いうちにまたお出ししましょう」
ベーコン初披露も何とか無事に終えることが出来たが、緊張が切れたと同時に疲れがドッと押し寄せてくる。
でも、とても心地良い疲れだ。
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