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二 お前の心も身体も俺のものだ
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「うぉい!いつまで寝っ転がってんだ!」
…へ?なに?
うっすら目を開けると、この世のものとは思えないほど整った男の顔が目の前に迫っていた
「キャー!??」
思わず飛び起きる
この人は誰?どういうこと?
緑がかった黒髪が耳の辺りまで伸びていて、目は吸い込まれそうな深い藍色をしている
どことなく不思議な雰囲気をまとっていて、肌が粟立った
「寝起きからうるさい女だな」
うんざりしたようにため息をつかれたけれど、今はそんなことを気にしている場合ではない
「あなた、誰」
「俺は光弥だ」
あまりにも真顔で堂々と言うものだから、思わず吹き出しそうになる
おかげで緊張が解けた
「神様と同じ名前を名乗るなんて大胆だね!私は桜です、よろしくね」
自己紹介をしつつ握手を求めると、なぜか不思議そうな顔をして私を見てきた
「あの、ここがどこなのか教えてもらってもいい?」
なぜか難しい顔をしている自称・光弥に聞いてみる
私は確か…生贄として燃やされたはずだ
そこまで思い出したふと気付いた
さてはここは天国なのでは?私はきっと死んでしまったんだ
ものは試しと脈に手をあててみると、意外なことにまだトクトクいっている
新発見、死んでも脈は止まらないらしい!………そんなことありえる?
一人で自問自答を繰り返していると、光弥様がやっと口を開いた
「この場所はお前もよく知っているだろう」
私が知っている場所?
ということは、ここはやっぱり天国ではないらしい
「でも見覚えがないんだけど。私、育った村から出たことがなくて」
村のことは隅々まで知っているが、こんなに立派な部屋がある家はなかったはずだ
「ならば知っているはずだ。ここは俺の神殿だからな」
「あなたの神殿?」
私が知っている神殿は、光弥神社にある閉ざされたものだけだ
「あぁ、俺のだ」
さっきからこの人、まるで自分が光弥様かのようなふざけた発言ばっかりしている
私たち村人にとって、光弥様はそんなふうに軽んじられて良い存在ではない
…ちょっと許せないかも
気がつくと、私は彼に手を上げていた
そのまま頬を打ち付けてやろうと勢いをつける
「おっと」
彼は軽く避けると、私の手首を掴んで薄く笑った
「神に手を出すとは恐ろしいやつだな。来いよ」
手を掴まれたままぐんぐん引っ張られ、窓際に連れていかれる
抵抗しようとする私をよそに、彼は勢いよく障子を開け放した
「うわ、ここ、ホントに光弥神社!?」
さっきまで私がいたところ?
その証拠に近くでは大きな炎が上がっていて、周りで村人たちが踊っている
「ということは…」
この神殿は村長であろうと入ることを許されていなかった
よって、この中にいるのはただ一人
「あなた、本物の光弥様?」
「やっと分かったか」
自分がやってしまった事の大きさに思わず頭を抱える
「い、今までのご無礼をお許しください。助けてくださってありがとうございました!」
焦げ臭さが鼻につき、外をちらりと見る。あんなに燃え盛っていては、あの中にいたら絶対に死んでいただろう
「助けた?俺が?」
あらためてお礼を言おうとしたところで、冷ややかな声が響く
「だって、炎から連れ出してくださったのでしょう?」
「それはお前が俺に捧げられた生贄だからだ。生贄が大やけどでは話にならないからな」
生贄として…でも、生かしてもらったことに間違いはない
「それでも、私は感謝したいです」
なんとか頼み込んで雨を降らせてもらおう
そしてここから逃げて翔に会いにいくんだ
今までずっと信じてきた光弥様を裏切るのは心苦しいけど、私は翔と結ばれたい…生きていれば叶わない願いではない
でも、そのチャンスをくれたのは他ならぬ光弥様だ
とりあえず今は、感謝をしなくてはならない
私は深く頭を下げた
「そうか…なら…」
光弥様が不敵に微笑んだ
雰囲気がガラリと変わって思わず後ずさる
「その気持ち、態度で表してもらおうか?」
一歩ずつ、壁際に追いやられてもう逃げ場がない
「お前の心も体も俺のものだ」
両手首を捕まれ、頭上に持っていかれる
顔がゆっくり近付いてくる
「やること…分かってるよな?」
…へ?なに?
うっすら目を開けると、この世のものとは思えないほど整った男の顔が目の前に迫っていた
「キャー!??」
思わず飛び起きる
この人は誰?どういうこと?
緑がかった黒髪が耳の辺りまで伸びていて、目は吸い込まれそうな深い藍色をしている
どことなく不思議な雰囲気をまとっていて、肌が粟立った
「寝起きからうるさい女だな」
うんざりしたようにため息をつかれたけれど、今はそんなことを気にしている場合ではない
「あなた、誰」
「俺は光弥だ」
あまりにも真顔で堂々と言うものだから、思わず吹き出しそうになる
おかげで緊張が解けた
「神様と同じ名前を名乗るなんて大胆だね!私は桜です、よろしくね」
自己紹介をしつつ握手を求めると、なぜか不思議そうな顔をして私を見てきた
「あの、ここがどこなのか教えてもらってもいい?」
なぜか難しい顔をしている自称・光弥に聞いてみる
私は確か…生贄として燃やされたはずだ
そこまで思い出したふと気付いた
さてはここは天国なのでは?私はきっと死んでしまったんだ
ものは試しと脈に手をあててみると、意外なことにまだトクトクいっている
新発見、死んでも脈は止まらないらしい!………そんなことありえる?
一人で自問自答を繰り返していると、光弥様がやっと口を開いた
「この場所はお前もよく知っているだろう」
私が知っている場所?
ということは、ここはやっぱり天国ではないらしい
「でも見覚えがないんだけど。私、育った村から出たことがなくて」
村のことは隅々まで知っているが、こんなに立派な部屋がある家はなかったはずだ
「ならば知っているはずだ。ここは俺の神殿だからな」
「あなたの神殿?」
私が知っている神殿は、光弥神社にある閉ざされたものだけだ
「あぁ、俺のだ」
さっきからこの人、まるで自分が光弥様かのようなふざけた発言ばっかりしている
私たち村人にとって、光弥様はそんなふうに軽んじられて良い存在ではない
…ちょっと許せないかも
気がつくと、私は彼に手を上げていた
そのまま頬を打ち付けてやろうと勢いをつける
「おっと」
彼は軽く避けると、私の手首を掴んで薄く笑った
「神に手を出すとは恐ろしいやつだな。来いよ」
手を掴まれたままぐんぐん引っ張られ、窓際に連れていかれる
抵抗しようとする私をよそに、彼は勢いよく障子を開け放した
「うわ、ここ、ホントに光弥神社!?」
さっきまで私がいたところ?
その証拠に近くでは大きな炎が上がっていて、周りで村人たちが踊っている
「ということは…」
この神殿は村長であろうと入ることを許されていなかった
よって、この中にいるのはただ一人
「あなた、本物の光弥様?」
「やっと分かったか」
自分がやってしまった事の大きさに思わず頭を抱える
「い、今までのご無礼をお許しください。助けてくださってありがとうございました!」
焦げ臭さが鼻につき、外をちらりと見る。あんなに燃え盛っていては、あの中にいたら絶対に死んでいただろう
「助けた?俺が?」
あらためてお礼を言おうとしたところで、冷ややかな声が響く
「だって、炎から連れ出してくださったのでしょう?」
「それはお前が俺に捧げられた生贄だからだ。生贄が大やけどでは話にならないからな」
生贄として…でも、生かしてもらったことに間違いはない
「それでも、私は感謝したいです」
なんとか頼み込んで雨を降らせてもらおう
そしてここから逃げて翔に会いにいくんだ
今までずっと信じてきた光弥様を裏切るのは心苦しいけど、私は翔と結ばれたい…生きていれば叶わない願いではない
でも、そのチャンスをくれたのは他ならぬ光弥様だ
とりあえず今は、感謝をしなくてはならない
私は深く頭を下げた
「そうか…なら…」
光弥様が不敵に微笑んだ
雰囲気がガラリと変わって思わず後ずさる
「その気持ち、態度で表してもらおうか?」
一歩ずつ、壁際に追いやられてもう逃げ場がない
「お前の心も体も俺のものだ」
両手首を捕まれ、頭上に持っていかれる
顔がゆっくり近付いてくる
「やること…分かってるよな?」
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