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祈と才
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「はあ…」
俺は朝から憂鬱だった
何しろ死神の中で一番偉い人と会うのだから緊張しないわけがなかった
ただ、当の本人はそういう事をあまり気にせずフレンドリーに話しかけてくれるため非常に助かっている
「マスター、俺です ブライトです」
「あらブライト、早いわね 感心するわ」
この人こそ死神界のトップ、マスター・オリアナだ
とても麗しく普段は優しい人なのだが怒ったら手をつけられないという噂がこの業界ではとても恐れられている
「それで今日俺を呼んだのは…」
「ええ、クロ君の様子を聞きたくて」
「やれやれ、本当にマスターはあいつの事を気にかけてるんですね」
「当然よ!私はクロ君のことが好きだもの それに放っておけないしね」
「…そうですね」
クロは新米の死神だが実力は申し分なくみんなに好かれるほど性格も良かった
だが、クロは優しすぎたのだ
到底死神としてやって行けるとは思えなかった
「でもね、クロ君はあれでいいの 私みたいに汚れて欲しくはないから…」
「…」
マスターは昔から優しかった
だが、それはあくまで身内にだけである
敵には容赦など一切せず嬲り殺す姿から軍神と呼ばれたこともあるらしい
そのうち味方からも怯えられ逃げられた彼女は心を閉ざした
でも、そんな彼女を救ったのはクロだった
詳しく事情は知らなかったがその日からマスターは明るくなり死神達からしても万々歳だった
その時からだろうか死神界が纏まり出したのは
「ところでブライト、最近新入りの子が来たみたいね」
「はい、シロの事ですね」
俺はマスターにプロフィールが載った紙を見せた
人間界で言えば履歴書というところだろうか
「へー、結構可愛いじゃない 。嫉妬しちゃいそう」
「ははは、程々にして下さいよ」
「ええ、分かってるわ …ブライト」
「何ですか?」
「引き続きクロ君をよろしくね クロ君が死んだり殺したりしなければそれでいいから…それだけでいいから…」
「…ええ」
もちろん俺はマスターに対して死神としての敬意を払っていた
だが、マスターへの感情はそんな薄っぺらい物じゃ表せないほど濃い物である
俺は今日マスターと話し改めて忠誠を尽くす事を心で誓った
そして、彼女の願いを叶えることも俺の役目である
こうしちゃいられない
そう思い2人の元へ向かった
「クロ、早く始めましょうよ!!」
「ははは、楽しみなのは分かるけど焦っちゃいけないよ」
シロは見るからに興奮していた
これからなにが起こるか考えワクワクしているのだろう
「よう、お前ら待たせたな」
「もう、遅いですよブライトさん」
「すまないなシロちゃん とある人に会ってきたんだ」
「とある人?…」
「なんでもいいから早く始めましょう!」
「はいはい じゃあまずは初歩から…」
それから僕達は数時間かけてシロの修行を行った
終始僕とブライトさんは彼女の驚くべき才能に呆然としているのみだった
「えへへ、どうですか?」
「凄いよシロちゃん!1日もかからずに魔力をここまで増大させるなんて!」
「確かにとてつもなく凄いです ですがブライトさんこれは…」
「…ああ、流石にこれは」
「どうかしたんですか?」
「い、いや何でもないよ これからもシロに頑張って欲しいって話をね 」
「本当ですか?私頑張ります!クロを超えられるくらいに!」
シロは明らかに一日では成し得ないことを成し遂げた
ただの人間だった少女がここまで出来る筈もない
シロの成長が嬉しくも単純に喜ぶ事は出来なかった
シロ、一体君は何者なんだ?
「ふふ、白雪 やはり凄い才能ね。でもね、こんな物じゃないのよ?あなたのチカラは クスクス」
俺は朝から憂鬱だった
何しろ死神の中で一番偉い人と会うのだから緊張しないわけがなかった
ただ、当の本人はそういう事をあまり気にせずフレンドリーに話しかけてくれるため非常に助かっている
「マスター、俺です ブライトです」
「あらブライト、早いわね 感心するわ」
この人こそ死神界のトップ、マスター・オリアナだ
とても麗しく普段は優しい人なのだが怒ったら手をつけられないという噂がこの業界ではとても恐れられている
「それで今日俺を呼んだのは…」
「ええ、クロ君の様子を聞きたくて」
「やれやれ、本当にマスターはあいつの事を気にかけてるんですね」
「当然よ!私はクロ君のことが好きだもの それに放っておけないしね」
「…そうですね」
クロは新米の死神だが実力は申し分なくみんなに好かれるほど性格も良かった
だが、クロは優しすぎたのだ
到底死神としてやって行けるとは思えなかった
「でもね、クロ君はあれでいいの 私みたいに汚れて欲しくはないから…」
「…」
マスターは昔から優しかった
だが、それはあくまで身内にだけである
敵には容赦など一切せず嬲り殺す姿から軍神と呼ばれたこともあるらしい
そのうち味方からも怯えられ逃げられた彼女は心を閉ざした
でも、そんな彼女を救ったのはクロだった
詳しく事情は知らなかったがその日からマスターは明るくなり死神達からしても万々歳だった
その時からだろうか死神界が纏まり出したのは
「ところでブライト、最近新入りの子が来たみたいね」
「はい、シロの事ですね」
俺はマスターにプロフィールが載った紙を見せた
人間界で言えば履歴書というところだろうか
「へー、結構可愛いじゃない 。嫉妬しちゃいそう」
「ははは、程々にして下さいよ」
「ええ、分かってるわ …ブライト」
「何ですか?」
「引き続きクロ君をよろしくね クロ君が死んだり殺したりしなければそれでいいから…それだけでいいから…」
「…ええ」
もちろん俺はマスターに対して死神としての敬意を払っていた
だが、マスターへの感情はそんな薄っぺらい物じゃ表せないほど濃い物である
俺は今日マスターと話し改めて忠誠を尽くす事を心で誓った
そして、彼女の願いを叶えることも俺の役目である
こうしちゃいられない
そう思い2人の元へ向かった
「クロ、早く始めましょうよ!!」
「ははは、楽しみなのは分かるけど焦っちゃいけないよ」
シロは見るからに興奮していた
これからなにが起こるか考えワクワクしているのだろう
「よう、お前ら待たせたな」
「もう、遅いですよブライトさん」
「すまないなシロちゃん とある人に会ってきたんだ」
「とある人?…」
「なんでもいいから早く始めましょう!」
「はいはい じゃあまずは初歩から…」
それから僕達は数時間かけてシロの修行を行った
終始僕とブライトさんは彼女の驚くべき才能に呆然としているのみだった
「えへへ、どうですか?」
「凄いよシロちゃん!1日もかからずに魔力をここまで増大させるなんて!」
「確かにとてつもなく凄いです ですがブライトさんこれは…」
「…ああ、流石にこれは」
「どうかしたんですか?」
「い、いや何でもないよ これからもシロに頑張って欲しいって話をね 」
「本当ですか?私頑張ります!クロを超えられるくらいに!」
シロは明らかに一日では成し得ないことを成し遂げた
ただの人間だった少女がここまで出来る筈もない
シロの成長が嬉しくも単純に喜ぶ事は出来なかった
シロ、一体君は何者なんだ?
「ふふ、白雪 やはり凄い才能ね。でもね、こんな物じゃないのよ?あなたのチカラは クスクス」
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