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一章.サロン・ルポゼでハミングを

一章 サロン・ルポゼでハミングを⑰

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「そんな時、母が倒れてしまったんです。脳に腫瘍が見つかって、緊急手術でした。幸い一命は取り留めたものの、寝たきりの状態が続いたんです」

「寝たきり? 植物状態とか?」

「しばらくして意識は戻りました。ですが体が麻痺してて、思うように動かすことができなくなったんです」

 施術中に思い出した母の姿は、子供の頃に一緒に公園で遊んでくれた元気な母。
 そして、病院のベッドの上で、天井を見つめる華奢な体になった母。

「大変だったわね。そ、それであなたは?」

「そして、リフレクソロジーに出会ったんです。今まで好きにダラダラ生きてきたことを後悔しました。何とかして母の助けになりたい、でも今から医療の勉強なんて自分にはできない……路頭に迷っていた時、このサロンに行き着きました」

「このサロンに、お母様を救う何かがあったのね」

「リフレクソロジーを受けにというより、誰かに母の話を聞いてほしくて、無意識に飛び込んでしまったのかもしれません。その時に、今のオーナーに施術をしてもらいました。暖かい手の温もりと優しい時間が、自分を前向きに変えてくれたんです」

 一瞬、スイが一方的に話し過ぎていないか心配になったけど、芝野宮の目を見てみると、じーっと見つめ返してきてくれているのがわかり、ホッとした。
 少し間が開いたが、それを察知した芝野宮が『続けて』という合図を目で送る。
 スイはそれを感じ取り、また同じ声色で話し出す。
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