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二章.サロン・ルポゼのクリスマス

二章 サロン・ルポゼのクリスマス⑦

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”カランコロン”

 二人は話に夢中になっていたが、時計の方に目をやると、すでに十三時を迎えていた。
 十三時ちょうどにドア鈴の音と共に現れたのは、おそらくご予約のお客様だ。
 こげ茶色のセミロングヘアに、黒縁の眼鏡。
 眼鏡の奥の瞳はよく見ると腫れており、それをごまかすための眼鏡だと察することができる。

「ここが……ルポゼですか?」

 カウンター越しに対面しているのにも関わらず、ギリギリ聞こえないくらいのボリュームで声を発した。
 なんとか口の動きで意図を掴んだスイが、笑顔を作り対応する。

「はい、こちらサロン・ルポゼです。ご予約のお客様ですね?」

 スイは一歩でひゅっとカウンターの外に出て、目線を合わせながら接客を始めた。
 その仕事モードに入ったスイをぼんやり見つめながら、みなみは心の中で推測していた。
 『このお客様も、スイさんに救われちゃうんだろうなぁ』と。
 みなみは、スイの施術で救われたお客様の表情を、たくさん見てきた。
 まるで全てを包み込むようなスイの仕事っぷりが、何よりも大好きなのだ。

「ではこちらへ、この先は薄暗いのでお気をつけください」

 新規のお客様へ必ず行う説明を終え、スイがそのままリクライニングチェアへ誘導する。
 薄暗い世界に今日もまた、みなみの大好きな人が消えていった。
 クリスマスの日に、みなみは今日初めて一人っきりの切なさを痛感する。

 六十分後には、この寂しさも吹き飛ぶはず……。
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