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四章.サロン・ルポゼは定休日

四章 サロン・ルポゼは定休日⑩

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「何楽しそうにしてるんだー? いちゃいちゃするなら他所でやってくれよ」

「違いますよ、今スイさんにハンドリフレクソロジーやってもらってて」

「わかってる、冗談だよ。しかし、いいな気持ち良さそうで。ほら、これ頼まれていたハーブ」

「あ、ありがとうございます!」

「にしても首藤君。おじさんも最近、足腰にガタが来ちゃってさ。やっぱりそういうマッサージとか、受けた方が良いのかな?」

「二階堂さん、農作業で体使いますよね。絶対ケアはした方が良いですよ」

「だよなぁ。行く暇がなくてなぁ」

 その声を聞くと、スイは『あっ』と言って、おもむろにバッグから小さな用紙を取り出した。

「二階堂さんこれ書いてください」

「何だこれは?」

 それは、小さなサイズになったお客様シートだった。
 サロン内にあるお客様シートより二回りは小さく、はがきくらいのサイズに収まっている。

「スイさん、いつもお客様シート持ち歩いてるんですか?」

「いや、本当は今日ボランティアに行く予定だったからさ、それ用に普段から持ち歩いてるんだ」

「それで首藤君、これを書いてどうするんだ?」

「今なら時間ありますよね? ハンドリフレクソロジー、二階堂さんにも施しますよ」

 そう聞くと、二階堂は跳ねるようにボールペンを書き動かし、あっという間に全ての欄を埋めた。
 嬉しそうにシートを返すと、腕まくりをしながらテーブルの上に右手を差し出す。
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