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六章.サロン・ルポゼの新人ちゃん

六章 サロン・ルポゼの新人ちゃん⑩

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sheet6 秋山 春男(あきやま はるお)

・性別 男
・年齢 五十五歳
・結婚生活三十年
・職業 秘密
・睡眠時間 八時間
・食生活 三食+夜食
・悩み メタボ気味、人間ドックで引っかかった
・その他 最近孫が産まれた


「秋山様ですね。私、サロン・ルポゼの井手みなみと申します。本日はよろしくお願いします」

「ああ、よろしく頼むよ」

 まずは、何から聞けばいいのか……頭の中が真っ白になりかけたけど、冷静にコンサルテーションすることを意識した。
 ファーストインプレッションは悪くないと判断できたため、生活リズムのことから聞いてみることにする。
 職業の欄が『秘密』になっていることに気づいたみなみは、その謎を少しずつ剝がしていくような質問から、投げかけることにした。

「秋山様、普段のお仕事は立ち仕事が多いですか? それとも座り仕事?」

「あ、いや、座り仕事だよ。一日中座ってるかな」

 座りっぱなし……みなみはすぐに、目と腰と肩の反射区に注力するということを、シートに書き入れた。

「あと食生活ですね、やっぱり夜食はやめられないですか?」

「そうなんだよ、小腹が空いちゃってさ。いつも妻に怒られるんだ」

「わかります! 私もついチョコとかケーキとか食べちゃいます」

「我慢できる人が羨ましいよね」

 食べ過ぎで、メタボ気味なのが悩み。
 確かに、一般的な五十五歳より、秋山はふっくらし過ぎだった。
 みなみはさらに、内臓部分の反射区も集中して刺激すると、プラスでメモをしておく。
 その他の気になることも、最後に聞いてみる。

「お孫様が産まれたんですね! おめでとうございます!」

「そうなんだよ、だからさ、これは幸せ太りってやつなのかね」

「そうかもしれませんね! じゃあ、もっと幸せを感じられるように施術させていただきます! よろしくお願いしますね!」
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