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八章.サヨナラ

八章 サヨナラ⑥

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「なんか久しぶりだね。ユアの足見るの」

 「そうね。前は二人で施術し合っていたのに、お互いに忙しくなっちゃって。サロンのエースを任されるって大変よね」

 いつからだろうか……二人で施術し合うことをやめたのは。
 忙しさと共に、仕事の話をしなくなったのは事実だけど、二人がセラピストとして意識し合っていたのも事実。
 よく考えると、あの時だ……スイは心当たりがあった。
 それは、スイがコンペティションで、優勝した時。
 あの時、ユアからおめでとうと言われたことは覚えているけど、言葉とは裏腹に、顔が笑っていなかったのだ。
 きっとユアは悔しんでいると、スイは内心で感じていた。
 それ以来、施術の話を避けるようになってしまったのだ。

「でも冷え性なところ、相変わらずだね」

「スイも、さすがね。やっぱり手が温かい」

「セラピストは手が温かくなきゃね」

「でた、スイの口癖。久しぶりに聞いた気がする」

 止まっていた時間が動き出したように、また笑い合っている二人。
 リフレクソロジーを囲みながら、こんなに笑い合えるとは、スイも思っていなかった。
 彼女とはいえど、同じ職業ならライバル視してしまうことは大いにあり得ること。
 だけど、どうして自分から歩み寄らなかったのだろう……こんなに暖かい空間を、まだ二人は作れるのに。
 きっとお互いに、気を使っていたのかもしれない。
 スイは頭の中で、ユアとのこれまでの日々を反省した。
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