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八章.サヨナラ

八章 サヨナラ⑫

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 最後のアドバイスが終わり、足についたオイルを拭き取る。

「あ、最後にパウダーつけていく?」

「そうね! お願いします」

 ユアは今日サンダルで来ていたため、靴下を履いていない。
 素足のままサンダルを履くと、中でオイル感が気になってしまうことが多いので、最後にパウダーを塗って滑りを止めるようにする。
 たまに必要ないという人もいるけど、大概のお客様は喜んでくれるサービスだった。

「さすが、人気のセラピストなだけはあるわね」

「やめてよ」

 ユアの帰る支度が整うと、ふざけながら受付に戻った。
 カウンターには、六十分前と変わらない姿勢のみなみがいる。

「お、お疲れさまでした!」

「元気なお出迎えね、みなみさん」

「す、すいません。いつもこんな感じでして」

「いや、嬉しいのよ。ありがとう」

 会計に入りながらも、みなみは屈託のない笑顔で接していた。

「どうでしたか? スイさんの施術は?」

「さすがの技術だったわ。みなみさんもいい先輩を持ったわね」

「褒めるなよ、照れるだろ」

 優しい時間がサロンを包む中、ユアはおつりを受け取った。
 みなみも一緒に外まで見送ろうとするけど、ユアが優しく断る。
 
「あ、みなみさんはお仕事あるでしょ? わざわざ外までこなくても大丈夫よ。また来るからね」
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