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十章.サロン・ルポゼで恋をして

十章 サロン・ルポゼで恋をして⑥

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sheet00 井手 みなみ(いで みなみ)

・性別 女
・年齢 二十三歳
・未婚
・職業 無職
・睡眠時間 五時間
・食生活 朝は食べない 昼は外食 夜はコンビニ弁当
・悩み 気持ちが沈んでいる
・その他 ちょうど今日会社を辞めました


「それでは施術を担当します、首藤水です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「早速ですけど、足が張ってますね」

「あ、仕事終わりに新宿からここまで歩いたので」

「新宿からですか!? 一時間近くかかるんじゃないですか?」

「どうだろう、時間はあんまり気にしなかったから」

 少し触れただけで、スイが足の張りに気づく。
 プロとは、こういう人のことを言うのかと、みなみは小さく驚いた。
 久しぶりに男の人から体を触れられたけど、スイは初対面とは思えないほどの安心感があった。

「あまり睡眠も取れてないみたいですね」

「そうですね、ここのところ忙しくて」

「夜帰るのが遅いとか?」

「いえ、単純に寝れないんです。考え事とかしちゃって」

 ひ弱な声でボソッと伝えると、にこやかだったスイの顔も、次第に陰りを帯びてきた。

「お仕事、今日で辞められたんですね」

 一番下に記入した内容が目に入ると、スイのその心配そうな顔が加速した。
 眠れない原因が、仕事関係だということを察したみたいだ。
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